レンブラントの弟子による『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』(ドロスト作)

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    闇に浮かぶ美しい裸婦像。レンブラントの弟子のひとりで、若くして亡くなったウィレム・ドロストの『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』です。

    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』( Bethsabée recevant la lettre de David ) 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵
    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』( Bethsabée recevant la lettre de David ) 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵

    展示室変更、貸し出し・修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。

    目次

    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』( Bethsabée recevant la lettre de David ) 1654年 ウィレム・ドロスト

    リシュリュー翼843展示室Bethsabée recevant la lettre de David , RF1349

    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』( Bethsabée recevant la lettre de David ) 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵
    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』 103 × 87 cm 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵

    引用元:『ダビデ王の手紙を持つバテシバ』

    憂いに満ちた女性の表情と、闇の中に浮かぶ白く美しい乳房に視線が行きますね。

    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』 103 × 87 cm 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵
    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』 ウィレム・ドロスト

    引用元:『ダビデ王の手紙を持つバテシバ』

    女性の名はバテシバ(英語表記では Bathsheba )。『旧約聖書』の「サムエル記」に登場する女性です。

    右手に持つのは、ダヴィデ王からの手紙。

    ダヴィデ王とは、巨人ゴリアテを倒した英雄です。

    バテシバは、ダヴィデ王の部下、ヒッタイト人ウリヤの妻でした。

    水浴しているところをダヴィデ王に見初められ、呼び出されます。

    ドロストのパテシバは、ダヴィデが邪念を抱くのも納得できるような美しさ、色香ですね。

    ムック本です。人体の持つ美しさ、儚さを堪能できます。

    ドロストの師 レンブラントによる『パテシバ』

    『ダヴィデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』( Bethsabée au bain tenant la lettre du roi David ) 1654年 レンブラント・ファン・レイン

    リシュリュー翼844展示室Bethsabée au bain tenant la lettre du roi David , MI 957

    『ダヴィデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』 1654年 レンブラント・ファン・レイン ルーヴル美術館蔵
    『ダヴィデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』 1654年 レンブラント・ファン・レイン

    引用元:『ダヴィデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』

    ドロストは、師匠であるレンブラントと同じ年に同じ主題『パテシバ』を描いています。

    レンブラントの後に制作した可能性が高いようです。

    聖書には特に手紙への言及がありませんが、レンブラントは、ダヴィデ王からであろう手紙を手にもの思いに耽るパテシバの姿を描きました。

    恋文を受け取って困惑する表情。その懊悩が見えるようです。

    そしてたっぷりとした、量感のある肉体。リアルな生身の女を感じます。

    パテシバの耳飾り

    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』 103 × 87 cm 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵
    『ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ』 ウィレム・ドロスト

    引用元:『ダビデ王の手紙を持つバテシバ』

    レンブラントの絵では私たち鑑賞者もダヴィデ王と同様、パテシバの水浴を覗き見しているようです。

    レンブラントのパテシバからは深い困惑、懊悩といった思いを強く感じますが、同時にそれが何とも言えない生々しい色気まで醸し出しています。

    ではドロストのパテシバはどうでしょうか。

    ドロストのパテシバの左耳の耳飾りですが、右耳のものと同じ方向に垂れてはいませんね。

    それまで面を伏せていたパテシバが、懊悩・逡巡からふと顔を上げたとき、揺れたせいなのかもしれません。

    夫への愛と、王の誘いを拒否したらどうなるかという思いの間で揺れている心そのものなのかも。

    あるいは、わずかに傾けた首の角度に沿ったものでしょうか。

    本作では耳飾りの傾きが示すように、顔をかしげて王の伝言に思いを巡らす内省的な姿が描き出されているのです。

    平松洋(著). 2019-1-15. 『誘う絵』. ビジュアルだいわ文庫. 大和書房. p.209.

    師レンブラントほど内面から滲み出るものではなくとも、顔をかしげたまま自分の内で幾度も逡巡する姿を、この耳飾りが示しているようです。

    ウィレム・ドロスト( Willem Drost, 1633年4月19日に洗礼 – 1659年2月25日に埋葬)

    自画像 1653年年頃 ウィレム・ドロスト
    自画像 1653年年頃 ウィレム・ドロスト

    引用元:自画像

    ウィレム・ドロストは、アムステルダムで生まれたとされています。

    1650年頃にはレンブラントの弟子となり、1659年にヴェネツィアで亡くなりました。

    25歳という若さで亡くなったため作品数は多くありませんが、レンブラントの『ポーランドの騎手』(フリック・コレクション)はドロストの作品の可能性があるといわれています。

    ルーヴル美術館で観られる、ドロストの生きた17世紀の有名絵画

    風景の中に佇む王『狩場のチャールズ1世』(ヴァン・ダイク作)

    ダイヤのエースを持つ『いかさま師』(ラ・トゥール作)

    ルーヴル美術館にあるドロストの絵

    『本をめくる男の肖像』 1654年

    Portrait d’un jeune savant ou Clerc feuilletant un livre , RF 1751

    ※2025年8月現在展示されていません

    『本をめくる男の肖像』( Portrait d’homme feuilletant un livre ) 1654年 ウィレム・ドロスト ルーヴル美術館蔵
    『本をめくる男の肖像』 1654年 ウィレム・ドロスト

    引用元:『本をめくる男の肖像』 Erik Drost CC-BY-2.0

    (2024年4月?くらいまで、タイトルは「Portrait d’homme feuilletant un livre」となっていました)

    主な参考文献
    • 平松洋(著). 2019-1-15. 『誘う絵』. ビジュアルだいわ文庫. 大和書房.
    • 池上英洋(著). 2014-11-10. 『官能美術史 ヌードが語る名画の謎』. 筑摩書房.
    • 海野弘・平松洋(監修). 2014-5-23. 『性愛の西洋美術史 愛欲と官能のエロティック・アートの世界』. 洋泉社.
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