ルーヴル美術館が所蔵するジョルジュ・ド・ラ・トゥールの真筆全6作品を網羅した完全ガイド。A complete guide to all 6 authentic masterpieces by Georges de La Tour in the Louvre.
ルーヴル美術館のラ・トゥール作品一覧です。
展示室変更、貸し出し・修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。


Salle 912, Aile Sully / シュリー翼912展示室
光と影の劇的な対比で有名なジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画。
静謐で深い精神性を感じる「夜の情景」と、いかさまなど世俗的な「昼の情景」を描いた作品を、ここシュリー翼912展示室で鑑賞することができます。
Le Tricheur à l’as de carreau /『ダイヤのエースを持ったいかさま師』/ Day Scenes(昼の情景)
Le Tricheur à l’as de carreau, 1636 / 1640, RF 1972 8

中野京子氏の『怖い絵』で超有名。
いかさま師が今まさにイカサマを仕掛けようとしているところです。
画面右側に座る、良い服を着た若い男性が、彼らのカモ。
中央の女の目配せでドラマが始まります。
この頃の「袖」は、ボディスにリボンやピンで留められていました。こちらもぜひご注目ください。

引用元:『いかさま師』
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ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画『いかさま師』の中の「袖」
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Saint Thomas /『聖トマス』
Saint Thomas, 1634 / 1638, RF 1988 15

引用元:『聖トマス』
イエスの使徒のひとり、トマスを描いた絵。
額のしわ、手指の感じがリアルですね。
この作品の右上に Georgius De La Tour fecit の署名があり、これは「ジョルジュ・ド・ラ・トゥールがやった」という意味だそうです。
Saint Joseph charpentier /『大工の聖ヨセフ』/ Night Scenes(夜の情景)
Saint Joseph charpentier, 1642 / 1644, RF 1948 27

引用元:『大工の聖ヨセフ』
大工たちの守護聖人ヨセフ。梁を仕上げる父の手元をろうそくで照らすのは、幼いイエスです。
ろうそくの光が、ヨセフとキリストを浮かびあがらせ、光はキリストの中に宿っているかのよう。この幼いキリストこそが、真実の光です。一方で、養父が作る梁は、やがてキリストが掛かる十字架を暗示しています。
有地京子(監修). 青い小鳥アート研究室(編). 『マンガでわかる ルーヴル美術館の見かた』.誠文堂新光社. p.168.
Saint Sébastien soigné par sainte Irène /『聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス』/ Night Scenes(夜の情景)
Saint Sébastien soigné par sainte Irène, vers 1649, RF 1979 53

1945年にノルマンディーの教会で発見されました。
ベルリン絵画館にも同じ主題の絵があり、そちらがオリジナルだと考えられていましたが、現在ではルーヴル美術館収蔵の本作がオリジナルであると判断されています。
横たわる聖セバスティアヌスの隣に跪く聖イレネ(イレ-ネ)。
右手で松明を持ち、左手で聖セバスティアヌスの手を取っています。
その頬には涙が流れ、隣や背後にいる女性たちも、それぞれ悲しみの表情を浮かべています。
La Madeleine à la veilleuse dite La Madeleine Terff /『灯火の前のマグダラのマリア』/ Night Scenes(夜の情景)
La Madeleine à la veilleuse dite La Madeleine Terff, 1642 / 1644, RF 1949 11

引用元:『灯火の前のマグダラのマリア』
メトロポリタン美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ワシントンのナショナル・ギャラリー、個人蔵と、世界には本作と同じ主題の絵画が五枚あります。
昔々、初めてルーヴル美術館を訪れた際、この絵と『聖ヨセフ』がとても印象に残りました。
なに、この深部を見つめるような感じ。ろうそくを通して自分と対話しているような。
結構長い時間観ていた記憶がありますが、ほぼ予習ナシで行っちゃったからね…画家の名前まで知らなかったしね…主題も後になって調べたんだよね…。今思うと、もったいないことしましたね。
それでも名作と呼ばれる作品には、訴えかけてくる何か強い力があるんだよなあ、と思います。
L’Adoration des bergers /『羊飼いたちの礼拝』/ Night Scenes(夜の情景)
L’Adoration des bergers, vers 1644, RF 2555

引用元:『悔羊飼いたちの礼拝』
最初にルーヴル美術館入りしたラ・トゥール作品。
本作は、1644年にリュネヴィルの町 (Lunéville) が総督ラ・フェルテに贈ったものだそうです。
リュネヴィルは、1652年1月にラ・トゥールが亡くなった土地。
本作は長らくオランダ人画家ヘラルト・ファン・ホントホルストの作品とされていましたが、1926年に、ヘルマン・フォスによってジョルジュ・ド・ラ・トゥールのものであると認定されました。
『砂漠の洗礼者ヨハネ』。現在、Musée départemental Georges de La Tour, Vic-sur-Seille に
その他ラ・トゥール関連
『聖ヒエロニムス』。工房作。現在 Musée Lorrain – Palais des Ducs de Lorraine, Nancy
「ラ・トゥールにちなむ」作品
ラ・トゥールにちなむ『聖母の教育』。解説によると「失われたオリジナル作品の複製」とのこと
「東京の富士美術館にある絵画の模写、または失われたオリジナル作品の模写。」と解説にあります
The Cheat with the Ace of Clubs /『クラブのエースを持ったいかさま師』

キンベル美術館The Cheat with the Ace of Clubs, c. 1630-34
こちらは「クラブのエース」を持った『いかさま師』。
悪事を働く黒幕の女が手にしている札は、『ダイヤのエースを持ったいかさま師』と違って伏せられています。
若者の衣装、給仕女の頭飾りなど、ルーヴル美術館の『ダイヤのエースを持ったいかさま師』と比べてみるのもまた楽しい。
若者が持つ札についてですが、こちらはまだ大逆転のチャンスがあるのだそうです。
そう思って観ると、またちょっと見方が違いますねえ。
Georges de La Tour / ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593年3月 – 1652年1月30日)
ジョルジュ・ラ・トゥールは1593年、ロレーヌ公国のヴィック=シュル=セーユ (Vic-sur-Seille) でパン屋の息子として生まれました。(当時、ロレーヌはまだフランスの一部ではありませんでした)
1617年にロレーヌ公国リュネヴィル出身の貴族女性と結婚し、リュネヴィルに移住。
ロレーヌ公アンリ2世の庇護を受け、当地で活動します。
『ダイヤのエースを持ったいかさま師』が制作されたのが1635年頃。
ラ・トゥールが生活していたリュネヴィルは1633年以降「三十年戦争」(1618年 – 1648年)の舞台となり、ラ・トゥールは家族を連れ、1638年9月頃ナンシーに避難しています。
ロレーヌ公国はフランスの支配下に入り、1639年以降パリに出たラ・トゥールは、フランス国王ルイ13世から「国王付画家」の称号を得ました。
内省的で深い精神性を感じさせるラ・トゥールの作品ですが、実際のラ・トゥールはかなりイヤな人間だったとか。
成金、傲慢、乱暴、世渡り上手…、この巨匠について知れば知るほど作品のイメージとは真逆の人物像が浮かびあがります。恨み疎まれ、裁判まで起こされ……、生きざまもカラヴァッジオのようですが、ラ・トゥールの活躍した時代は戦乱の世。生き抜いて自分の道を貫くには仕方がなかったのかもしれません。
有地京子(監修). 青い小鳥アート研究室(編). 『マンガでわかる ルーヴル美術館の見かた』.誠文堂新光社. p.171.
『マンガでわかる ルーヴル美術館の見かた』にもあるように、強くしたたかでなければ生き残れなかったのかもしれませんね。
しばらくパリで活動したラ・トゥールは、1641年にリュネヴィルに戻りました。
フランスのラ・フェルテ公爵が、1643年にロレーヌ公国の総督に就任。
(ラ・フェルテ総督は、リュネヴィルから『羊飼いたちの礼拝』(1644年頃)を贈られています)
1652年1月、伝染病(ペスト?)のために妻子を失ったラ・トゥールは、同じ月の30日に亡くなりました。
東京で見られるラ・トゥール作品
St. Thomas /『聖トマス』(国立西洋美術館)

引用元:『聖トマス』
上野の国立西洋美術館の『聖トマス』は、フランス北部で「キリストの十二使徒」シリーズの1点として制作され、長年にわたり、アルビ大聖堂 (Cathedral of Albi) に展示されていたことが明らかになっています。
ルーヴル美術館の『聖トマス』は、その「使徒連作」に様式的によく似ていても、この連作には属しておらず、上野の『聖トマス』のヴァリエーション、または関連作、という見方がされています。
作品欄に「聖トマス」を入力・検索していただければ、現在の展示状況がわかります(2026年4月20日現在展示されていません)
こちらからでもわかります(2026年4月20日現在展示されていません / Currently not on display)
Smoker / 『煙草を吸う男』(東京富士美術館)

引用元:煙草を吸う男
ラ・トゥールが影響を受けた画家 カラヴァッジョ (Michelangelo Merisi da Caravaggio)
ラ・トゥールが強く影響を受けたカラヴァッジョも喧嘩に殺人と、破天荒な人間だったそうです。
The Cardsharps /『トランプ詐欺師』

引用元:『トランプ詐欺師』
キンベル美術館The Cardsharps, c. 1596–97
La diseuse de bonne aventure /『女占い師』
Salle 712, Aile Denon / ドゥノン翼712展示室La diseuse de bonne aventure, 1595 / 1598, INV 55 ; MR 105

引用元:『女占い師』
