『捨てられたプシュケ』(オーギュスタン・パジュー作)

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    新古典主義の彫刻家 パジューによる『捨てられたプシュケ』像です。

    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵
    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵

    展示室変更、貸し出し・修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。

    目次

    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー

    リシュリュー翼221展示室Psyché abandonnée , MR SUP 62 ; N 15489

    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵
    『捨てられたプシュケ』 高さ 177 cm 1790年 オーギュスタン・パジュー

    引用元:『捨てられたプシュケ』

    クピド(アムール)に愛され、彼の神殿で暮らすプシュケ。

    クピドはプシュケに、決して自分の姿を見てはいけないと約束させていました。

    プシュケの生活を妬んだ姉たちは、夜になると寝所にやってくる夫の正体は怪物で、プシュケを太らせてから食べるつもりだ、夫が寝ている隙に殺すべきだ、とプシュケに吹き込みます。

    夜、プシュケは灯りを手に、眠る夫に近付きました。

    そして、夫の正体が愛の神であったことに気付きます。

    『クピドとプシュケ』 1589年 ヤコボ・ツッキ ボルケーゼ美術館蔵
    『クピドとプシュケ』 1589年 ヤコボ・ツッキ ボルケーゼ美術館蔵

    引用元:『クピドとプシュケ』

    ボルケーゼ美術館AMOR AND PSYCHE

    驚いて目を覚ましたクピドは怒り、約束を破ったプシュケを置き去りにして飛び去ってしまいました。

    愛する夫に去られ、悲嘆にくれるプシュケ。

    夫に再び逢うため、プシュケの旅が始まります。

    パジューは、クピドが飛び去った空を悲痛な表情で見上げるプシュケの姿を制作しました。

    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵
    『捨てられたプシュケ』 オーギュスタン・パジュー

    引用元:『捨てられたプシュケ』

    プシュケの足元には、眠るクピドに近付いたときに持っていた短剣とランプがあり、ランプからは油が垂れています。 ルーヴル美術館のサイトだとよりわかりやすいです。

    プシュケの座る腰掛け?は新古典主義風。

    『捨てられたプシュケ』( Psyché abandonnée ) 1790年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵
    『捨てられたプシュケ』 オーギュスタン・パジュー

    引用元:『捨てられたプシュケ』

    オーギュスタン・パジュー( Augustin Pajou, 1730年9月19日 – 1809年5月8日)

    オーギュスタン・パジュー(1730年9月19日-1809年5月8日)の肖像 1783年 アデライド・ラビーユ=ギアール ルーヴル美術館蔵
    オーギュスタン・パジューの肖像 1783年 アデライド・ラビーユ=ギアール

    引用元:オーギュスタン・パジューの肖像

    グラフィック・アート部門( Département des Arts graphiques )

    Portrait de Pajou, sculpteur , INV 27035, Recto

    オーギュスタン・パジューはフランスの 、新古典派の彫刻家です。

    師は彫刻家 ジャン=バティスト・ルモワーヌ(1704年 – 1778年)

    ナイショのしぐさのキューピッド(ファルコネ作)

    1783年、ブーシャルドンの『ヘラクレスの棍棒で弓を作るクピド』の対幅として王室建築局から依頼され、プシュケ像を制作します。

    石膏模型は1785 年のサロンで展示されましたが、まもなく「猥褻だ」との苦情を受け、作品は撤去されました。

    しかし作品はパジューのスタジオに展示されており、騒ぎの後人々は作品を見に殺到したそうです。

    石膏模型は、人物の裸体と官能性で大喧騒を巻き起こしたので、革命時に大理石に彫刻を施した際は、副次品の古典主義装飾を強調した。

    『ルーヴルガイド』. p.385.

    この大理石の彫像は1791年のサロンで発表され、1829年にルーヴル美術館に収蔵されました。

    腹部、脚のラインなど、リアルで生々しい感じ。 打ちひしがれ、嘆くプシュケがひどく官能的です。

    王室建築局 ダンジヴィエ伯爵

    ダンジヴィエ伯爵(1730年 - 1809年) 1763年 ジャン=バティスト・グルーズ メトロポリタン美術館蔵
    ダンジヴィエ伯爵(1730年 – 1809年) 1763年 ジャン=バティスト・グルーズ メトロポリタン美術館蔵

    引用元:ダンジヴィエ伯爵

    メトロポリタン美術館Charles Claude de Flahaut (1730–1809), Comte d’Angiviller

    王室コレクションの公開に貢献したマリニー侯爵(ポンパドゥール夫人の実弟)の後を継いだ、ダンジヴィエ伯爵。

    ダンジヴィエ伯爵は「≪博物館≫を創立する目的で、ルーヴル宮殿に保管されていた王室蒐集品目録を作り、絵画を購入し修復」しました。(参考:『ルーヴルガイド』)

    美術館委員会のメンバーにはオーギュスタン・パジュー他、画家のユベール・ロベール、ジャン=オノレ・フラゴナールらも名を連ねています。

    こちらにも伯爵やパジューの名が出て来ます

    ダンジヴィエ伯爵はレンブラントの『聖マタイと天使』( Saint Matthieu et l’ange )を所有していました

    グルベンキアン美術館所蔵『パラス・アテナ』

    ヴィジェ=ルブランと娘ジュリーの絵もダンジヴィエ伯爵の依頼

    エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン『自画像』(1786年)他

    ダンジヴィエ伯爵がデュ・バリー夫人から買い取った『狩場のチャールズ1世』

    風景の中に佇む王『狩場のチャールズ1世』(ヴァン・ダイク作)

    王室コレクション公開について

    ポンパドゥール侯爵夫人の全身肖像画(モーリス=カンタン・ド・ラ・トゥール作)

    『ヘラクレスの棍棒で弓を作るクピド』( L’Amour qui se fait avec les armes de mars un arc de la massue d’Hercule ) 1750年 エドメ・ブーシャルドン

    リシュリュー翼221展示室L’Amour qui se fait avec les armes de mars un arc de la massue d’Hercule , MR 1761 ; N 15440

    『ヘラクレスの棍棒で弓を作るクピド』( L'Amour qui se fait avec les armes de mars un arc de la massue d'Hercule ) 1750年 エドメ・ブーシャルドン ルーヴル美術館蔵
    『ヘラクレスの棍棒で弓を作るクピド』 1750年 エドメ・ブーシャルドン

    引用元:『ヘラクレスの棍棒で弓を作るクピド』 Neuceu (2006) CC-BY-SA-3.0-migrated CC-BY-SA-2.5,2.0,1.0

    いたずらっ子の表情で、自分の武器である弓を作るクピド。

    細く引き伸ばされたような肢体と大きく身体を捩ったポーズは、マニエリスムの影響を感じさせるが、正確な筋肉表現など、解剖学研究を物語る。ブーシャルドンは、この主題による習作をすでに1793年のサロンに出品しているが、この大理石像が完成したのは、1750年のことである。それだけに、彼にとってはいわば野心作で、複雑なシルエットを見せるこの像を、最初から最後まで、助手を使わずに作りあげたという。大理石。173センチ。

    高階秀爾(監修・責任編集). 昭和61年3月20日. 『NHK ルーブル美術館 Ⅳ フランス芸術の華 ルイ王朝時代』. p.127. 

    エドメ・ブーシャルドン( Edmé Bouchardon, 1698年5月29日 – 1762年7月27日)の父・兄弟も彫刻家で、本人は王立絵画彫刻アカデミーの教授(1745年就任)。

    『捨てられたプシュケ』( Psyche Abandoned ) 1796年 オーギュスタン・パジュー ロサンゼルス郡美術館蔵

    ロサンゼルス郡美術館もパジューの『捨てられたプシュケ』像(テラコッタ製)を収蔵しています。

    『捨てられたプシュケ』( Psyche Abandoned ) 1796年 オーギュスタン・パジュー ロサンゼルス郡美術館蔵
    『捨てられたプシュケ』 1796年 オーギュスタン・パジュー ロサンゼルス郡美術館蔵

    引用元:『捨てられたプシュケ』

    ロサンゼルス郡美術館Psyche Abandoned

    『テセウスに捨てられたアリアドネ』( Ariane abandonnée par Thésée ) 1796年 オーギュスタン・パジュー

    リシュリュー翼222展示室Ariane abandonnée par Thésée , RF 3022

    『テセウスに捨てられたアリアドネ』( Ariane abandonnée par Thésée ) 1796年 オーギュスタン・パジュー ルーヴル美術館蔵
    『テセウスに捨てられたアリアドネ』 高さ 37.7 cm 1796年 オーギュスタン・パジュー

    引用元:『テセウスに捨てられたアリアドネ』 Shonagon CC-Zero

    プシュケと同じく、見捨てられた女性の小像。 悲しみの度合(?)は大理石版の方が上かな?

    テラコッタ製。

    ルーヴル美術館で見られる、新古典主義のプシュケとクピドの像

    『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( L’Amour et Psyché à demi couchée ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ

    ドゥノン翼403展示室L’Amour et Psyché à demi couchée , MR 1777 ; N 15579

    『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l’Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵
    『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』 1793年 アントニオ・カノーヴァ

    引用元:『アモールとプシュケ』 Jean-Pol GRANDMONT CC-BY-4.0

    プシュケとクピドの物語で、超有名な作品を挙げろと言われたら、やっぱコレでしょと思うカノーヴァの作品。

    あらゆる方向から観ても美しいけれど、この角度が最も綺麗だと思います。

    神話のクライマックス場面『アモールのキスで目覚めるプシュケ』(カノーヴァ作)

    ” L’Amour et Psyché debout “ 1797年頃 アントニオ・カノーヴァ

    現在ルーヴル・ランス美術館にて展示中L’Amour et Psyché debout , MR 1776 ; N 15581

    " L'Amour et Psyché debout " 1797年頃 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵
    ” L’Amour et Psyché debout “ 1797年頃 アントニオ・カノーヴァ

    引用元:” L’Amour et Psyché debout “ sailko CC-BY-SA-3.0-migrated CC-BY-2.5

    カノーヴァ作のプシュケとクピドの立像。

    ジョアシャン・ミュラが購入し、後にナポレオン1世が所有。

    ミュラはこちらに登場

    イタリア統一運動の時代とフランチェスコ・アイエツの『接吻』『瞑想』

    『クピド』( L’Amour ) 1817年 アントワーヌ・ドニ・ショーデ

    リシュリュー翼225展示室L’Amour , LL 56 ; N 15540

    『クピド』( L'Amour ) 1817年 アントワーヌ・ドニ・ショーデ ルーヴル美術館蔵
    『クピド』 1817年 アントワーヌ・ドニ・ショーデ

    引用元:『クピド』 VladoubidoOo CC-BY-SA-4.0

    アントワーヌ・ドニ・ショーデ( Antoine Denis Chaudet, 1763年3月3日 – 1810年4月19日)はフランスの新古典派の彫刻家。

    彼はもの悲しい主題、特にクピドとプシュケという新古典主義芸術家が好んだ題材にも愛着を示した。アントーニオ・カノーヴァの様式が明確な作品では、クピドはプシュケの蝶の羽に依拠することが明白な、魂の象徴である蝶の羽を掴み、バラを捧げている。プリンスの浮彫りは、愛の喜びと苦しみを例証し、作品に道徳的共鳴を与えている。

    『ルーヴルガイド』. p.387.

    プシュケの化身である蝶の羽を、慎重に、優しくつまむクピド。 捧げているのは薔薇の花。 

    繊細な表現が胸に迫りますね。

    『プシュケとアモル』( Psyché et l’Amour ) 1798年 フランソワ・ジェラール

    シュリー翼934展示室Psyché et l’Amour , INV 4739 ; L 3778

    『プシュケとアモル』( Psyché et l'Amour ) 1798年 フランソワ・ジェラール ルーヴル美術館蔵
    『プシュケとアモル』 1798年 フランソワ・ジェラール

    引用元:『プシュケとアモル』

    新古典主義の画家 フランソワ・ジェラールによるプシュケとクピド(アムール)の始まりの場面。 プシュケにはクピドの姿が見えていないようです。

    プシュケの頭上には、プシュケを象徴する蝶が飛んでいます。

    プシューケーとクピドの物語 主な絵画とカノーヴァの彫刻

    知ってるようで知らない神話。入門書にどうぞ

    ルーブル美術館シリーズ。大型本

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