優雅な屋外の食事風景『狩の食事』(ド・トロワ作)

    • URLをコピーしました!

    優雅な衣装を身に着けた貴族男女の絵で知られるジャン=フランソワ・ド・トロワ。フォンテーヌブロー宮の、ルイ15世の食堂を飾った『狩の食事』をどうぞ。

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵

    展示室変更、貸し出し・修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。

    目次

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    シュリー翼919展示室Un Déjeuner de chasse , RF 1990 18

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 240 × 170 cm 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』

    画面の中にはいろんなひとがいますね。

    美しいドレス、美しい刺繍の施された上着に身を包んだ貴族たち。

    食事をする人、談笑する人、給仕人、奥には馬車や馬…。

    貴族の楽しみである狩りの間のひとコマです。

    赤い上着の男性が料理を切り分け、中央では皿が手渡されています。

    右手前の男女はグラスを手に、何やら会話していますね。

    ちょっと拡大してみましょう。

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』

    くだけた雰囲気ですね。何を食べているか気になります。

    犬がテーブルの下から「ぬっ」と姿を現します。

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』 Sailko CC-BY-3.0

    こちらは貴婦人の足元でガジガジ。

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』 Sailko CC-BY-3.0

    給仕人たち、と給仕される貴族男性。

    『狩の食事』( Un Déjeuner de chasse ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『狩の食事』 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『狩の食事』

    貴族男性は金糸の刺繍がある上着にヴェスト、大きく折り返されて刺繍を見せている袖、後ろで束ねた髪を袋に入れるというヘアスタイルです。

    下に例として、メトロポリタン美術館所蔵の「バッグウィッグ」を掲載しました。

    フランス製男性用かつら 1780年-1800年 メトロポリタン美術館蔵
    バッグウィッグの例(フランス製男性用かつら) 1780年 – 1800年 メトロポリタン美術館蔵

    引用元:バッグウィッグ

    メトロポリタン美術館Wig

    18世紀ロココ期の男性ファッションに関する記事

    ウィリアム・ホガース 18世紀の『当世風の結婚』(ファッションで見る『第一場』、室内装飾で見る『第二場』)

    関連記事

    ド・トロワの『愛の告白』で見るロココの男性服「アビ・ア・ラ・フランセーズ」

    『狩の食事』が掲載されています。このシリーズ、レイアウトがあまり好みではありません。掲載されている各作品についての解説も多くはありませんが、ほとんどの作品はカラーで掲載されています。また、こういったジャンルの書籍は大抵ぶ厚く大きいものですが、本書は気軽に手に取りやすい厚さです。食の歴史、美食の歴史をざっくり知るには良いのではないかと。

    ルイ15世の食堂を飾るために制作された『狩の食事』

    ド・トロワの『狩の食事』は、フォンテーヌブロー宮の、国王ルイ15世の居室の食堂を飾るために制作されました。

    対となる ” Le Cerf aux abois “(湾にいる鹿 / 追い詰められた鹿)という作品がありましたが、”Le Cerf aux abois” は失われたようです。(参考:Wikipedia

    『狩の食事』作は1748年に新しい食堂に設置し直された後、1785年にその場所から移動。

    しばらく所在が不明だったようですが、クリスティーズなどを経て、1990年ロートシルト家の相続税支払いのためにルーヴル美術館に寄贈されました。

    英国のウォレス・コレクションには、『狩の食事』ほか『死んだ鹿』( Les abois d’un cerf (The Death of a Stag) )の準備スケッチが収蔵されています。

    『狩の食事』の準備スケッチ(ウォレス・コレクション)

    『狩の食事』( Déjeuner près d'une ferme (A Hunt Breakfast)) 54.7 × 44.8 cm 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ウォレス・コレクション蔵
    『狩の食事』( Déjeuner près d’une ferme (A Hunt Breakfast)) 54.7 × 44.8 cm 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ウォレス・コレクション蔵

    引用元:A Hunt Breakfast Daderot CC-Zero

    ウォレス・コレクションDéjeuner près d’une ferme (A Hunt Breakfast)

    『狩の食事』にはまだ犬たちが描かれていませんね。

    『死んだ鹿』( Les abois d'un cerf (The Death of a Stag)) 54.5 × 45 cm 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ウォレス・コレクション蔵
    『死んだ鹿』( Les abois d’un cerf (The Death of a Stag)) 54.5 × 45 cm 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ウォレス・コレクション蔵

    引用元:The Death of a Stag Daderot CC-Zero

    ウォレス・コレクションLes abois d’un cerf (The Death of a Stag)

    ルイ15世の肖像

    グラフィックアーツ部門Portrait de Louis XV (1710-1774); roi de France. , INV 27615, Recto

    ルイ15世(1710年2月15日-1774年5月10日)の肖像 モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール 1748年 ルーヴル美術館蔵
    ルイ15世(1710年2月15日 – 1774年5月10日)の肖像 1748年 モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール

    引用元:ルイ15世の肖像

    美男で知られた「最愛王」ルイ15世。

    この肖像画は、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールによってパステルで描かれました。

    甲冑の光沢が素晴らしい!

    『狩猟の合間の昼食』 1737年 シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー

    シュリー翼919展示室Halte de chasse , INV 6279 ; LP 6742

    『狩猟の合間の昼食』( Halte de chasse ) 220 × 250 cm 1737年 シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー ルーヴル美術館蔵
    『狩猟の合間の昼食』 220 × 250 cm 1737年 シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー

    引用元:『狩猟の合間の昼食』

    同じ主題で、やはりフォンテーヌブロー宮の食堂のために描かれた『狩猟の合間の昼食』。

    ド・トロワの作品は、宮廷内からそのまま運ばれたような食卓や椅子、食器、テーブルクロスの宴席風景ですが、ヴァン・ローの絵では地面に布を敷いたピクニック風景ですね。

    料理が豪華です。(すぐ食べものに目が行きます)

    これらの絵画は「雅宴画」と呼ばれます。みやびですよね。

    当時の貴族の姿をありのまま表したというより、「こうありたい」という理想の風景を描いたものです。

    多くの場合、場所も人物も特定のものではありません。

    フォンテーヌブロー宮のために描かれた二作品は、今またルーヴル美術館の同じ展示室に展示されています。(2025年現在)

    ルイ15世の寵姫ポンパドゥール侯爵夫人の肖像

    ルーヴル美術館にある『ポンパドゥール侯爵夫人』の肖像(ブーシェ作)

    ルイ15世の寵姫だったデュ・バリー夫人による注文

    デュ・バリー夫人による注文『壊れた甕』(グルーズ作)

    ジャン=フランソワ・ド・トロワ( Jean François de Troy, 1679年1月27日 – 1752年1月26日)

    ジャン=フランソワ・ド・トロワ( Jean François de Troy, 1679年1月27日 - 1752年1月26日)自画像 1734年または1745年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ヴェルサイユ宮殿
    ジャン=フランソワ・ド・トロワ自画像 1734年または1745年 ヴェルサイユ宮殿

    引用元:自画像

    フランス、パリ生まれ。ヴェルサイユ宮殿やフォンテーヌブロー宮殿の装飾を手がけました。

    イタリア、ローマに滞在し、現地のフランス・アカデミーの校長を務めています。

    『警告(忠実な家政婦)』 1723年 ヴィクトリア&アルバート美術館蔵

    『警告(忠実な家政婦)』( The Alarm, or the Gouvernante Fidèle ) 1723年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ヴィクトリア&アルバート美術館蔵
    『警告(忠実な家政婦)』( The Alarm, or the Gouvernante Fidèle ) 1723年 ヴィクトリア&アルバート美術館蔵

    引用元:『警告(忠実な家政婦)』

    ヴィクトリア&アルバート美術館The Alarm

    この先の展開が気になる『警告(忠実な家政婦)』。

    男性の衣装がまた優雅で美しいんですよねえ。

    『愛の告白』 1731年 シャルロッテンブルク宮殿、ベルリン

    『愛の告白』( Die Liebeserklärung ) 1731年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ シャルロッテンブルク宮殿、ベルリン
    『愛の告白』( Die Liebeserklärung ) 1731年 シャルロッテンブルク宮殿、ベルリン

    引用元:『愛の告白』

    愛を乞う男性の上着の刺繍が素敵

    ド・トロワの『愛の告白』で見るロココの男性服「アビ・ア・ラ・フランセーズ」

    『牡蠣の昼食』 1735年 コンデ美術館蔵

    『牡蠣の昼食』( Le Déjeuner d’huîtres ) 1735年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ コンデ美術館蔵
    『牡蠣の昼食』( Le Déjeuner d’huîtres ) 1735年 コンデ美術館蔵

    引用元:『牡蠣の昼食』

    この作品もルイ15世の注文を受けて描かれました。

    かつてはヴェルサイユ宮殿の、小アパルトマンの食堂に飾られていました。現在はコンデ美術館に在ります。

    牡蠣を食べながら談笑する貴族たち。

    そのうち数人の視線が空中の一点に集中しています。

    そこには飛ばされたコルク栓が…。

    関連記事

    ルイ15世の食堂を飾った、ジャン=フランソワ・ド・トロワの『牡蠣の昼食』

    ルーヴル美術館シュリー翼には『牡蠣の昼食』のスケッチがあります

    シュリー翼921展示室Le Déjeuner d’huîtres. Esquisse. , RF 2011 55

    シュリー翼921展示室にはブーシェとシャルダンの有名絵画が

    『マリニー侯爵の肖像』 1737年 ヴェルサイユ宮殿

    ヴェルサイユ宮殿Portrait de M. Abel-François Poisson de Vandières, marquis de Marigny, directeur Général des Bâtiments du Roi (1727-1781) , MNR 52

    『マリニー侯爵の肖像』(Portrait de M. Abel-François Poisson de Vandières, marquis de Marigny, directeur Général des Bâtiments du Roi (1727-1781)) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ヴェルサイユ宮殿
    『マリニー侯爵の肖像』 1737年 ヴェルサイユ宮殿

    引用元:『マリニー侯爵の肖像』

    ポンパドゥール夫人の弟、アベル=フランソワ・ポワソン・ド・ヴァンディエール( Abel-François Poisson de Vandières, marquis de Marigny, 1727年 – 1781年)の肖像画。

    王室造営物総監を務め、国王ルイ15世からも信頼されていました。

    マリニー侯爵( marquis de Marigny )、後にメナール侯爵( marquis de Menars )と呼ばれます。

    シュリー翼660展示室『エステルの失神』ほか

    ルーヴル美術館には、『エステル記』を題材にしたド・トロワの絵画が収蔵されています。

    2025年4月現在展示されていません

    『エステルの戴冠式』(1738年)

    Le Couronnement d’Esther , INV 8213 ; MR 1513

    シュリー翼660展示室

    『モルデカイのハマンに対する軽蔑』(1740年)

    Le Dédain de Mardochée envers Aman , INV 8214; MR1518

    2025年4月現在展示されていません

    『エステルの化粧』(1738年)

    La Toilette d’Esther , INV 8215 ; MR 1512

    『エステルの失神』 1737年

    シュリー翼660展示室L’Evanouissement d’Esther , INV 8216 ; MR 1514

    『エステルの失神』( L'Evanouissement d'Esther ) 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『エステルの失神』 1737年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ

    引用元:『エステルの失神』

    ゴブラン工房のタペストリーとして制作することを意図した絵画で、「1737年のサロンに出展され、1798年にゴブラン工場のために保管された」そうです。

    ルイ15世のコレクション。

    『エステルとアハシュエロスの宴』 1739年

    Le repas d’Esther et d’Assuérus , INV 8217 ; MR 1516

    2025年4月現在展示されていません

    『エステルとアハシュエロスの宴』( Le repas d'Esther et d'Assuérus ) 1739年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵
    『エステルとアハシュエロスの宴』( Le repas d’Esther et d’Assuérus ) 1739年 ジャン=フランソワ・ド・トロワ ルーヴル美術館蔵

    引用元:『エステルとアハシュエロスの宴』 Image d’art CC-BY-SA-4.0

    2025年4月展示されていません

    『ハマンの非難』(1740年)

    La Condamnation d’Aman , INV 8218; MR1517

    シュリー翼660展示室

    『モルデカイの勝利』(1738年 – 1739年)

    Le Triomphe de Mardochée , INV 8219 ; MR 1515

    『エステルの失神』を描いたスケッチ

    グラフィックアーツ部門

    タペストリー『エステルの化粧』( La Toilette d’Esther ) 18世紀後半 ジャン=フランソワ・ド・トロワ原画 ユダヤ人歴史センター、ニューヨーク

    『エステルの化粧』( La Toilette d'Esther )タペストリー 18世紀後半 ジャン=フランソワ・ド・トロワ原画 ユダヤ人歴史センター、ニューヨーク
    タペストリー『エステルの化粧』( La Toilette d’Esther ) 18世紀後半 ジャン=フランソワ・ド・トロワ原画 ユダヤ人歴史センター、ニューヨーク

    引用元:『エステルの化粧』タペストリー(ゴブラン) https://www.flickr.com/photos/center_for_jewish_history/3809297382/

    主な参考文献
    • 宮下規久朗(著).2007.『食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む』.光文社新書.
    • アントニー・ローリー(著). 池上俊一(監修). 2007-6-10. 『美食の歴史』. 創元社.
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!
    目次