ポンパドゥール侯爵夫人の肖像といえば、アルテ・ピナコテークにあるブーシェの肖像画やルーヴルにあるラ・トゥールの肖像画を思い起こしますよね。今回はそれらよりもう少し若い頃の肖像画をご紹介します。
『ポンパドゥール侯爵夫人』( Madame de Pompadour ) 1750年頃 フランソワ・ブーシェ
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
シュリー翼611展示室 , RF 2142 La Marquise de Pompadour (1721-1764).
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
首にはひだ飾り、胸を魅力的に見せているドレスは造花や真珠で飾られています。
たっぷりとしたドレスの光沢や婦人自身の美しさに視線が釘付けですが、この女性の周囲には、ロココ期の優雅な曲線を描く猫足の家具、彼女の教養の高さを示す本や楽器などが配されています。
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
この肖像画は2008年に来日しています。
この作品では、ポンパドゥール侯爵夫人は豪華な刺繍も飾りの袖口もないクリーム色の室内着をまとい、胴着を「スペイン風」に締めつけている。簡素で色彩も地味な衣装のせいで、夫人の若々しい美しさや魅力がいっそう輝いてみえる。同時に画家はモデルの幅広い芸術への関心や教養を暗示することも忘れてはいない。夫人は左手を楽譜が置かれたクラヴサンの上に置いてあり、魅惑的な歌手として知られた彼女はあるいは歌の稽古の最中かもしれない。床には夫人の紋章である塔が飾る書物や地球儀、巻物が並び、背景の書棚はぎっしりと書籍で埋まっている。さらに2本の枝付き燭台や置時計など、家具調度の装飾は夫人のもとでおおいに進展したロカイユ装飾の特徴を見せている。これらはいずれも、芸術庇護者で文芸の愛好家である夫人への賛辞にほかならない。
『ルーヴル美術館展 フランス宮廷の美』. 2008. 朝日新聞社. p.96.
ポンパドゥール侯爵夫人ジャンヌ=アントワネット・ポワソン( Jeanne-Antoinette Poisson, marquise de Pompadour, 1721年12月29日-1764年4月15日)
ポンパドゥール侯爵夫人ジャンヌ=アントワネット・ポワソンはフランス国王ルイ15世の公式寵姫です。
42歳で病没するまで、国王に代わりフランスの政治や外交を取り仕切りました。
ジャンヌ=アントワネット・ポワソンは1741年に徴税請負人の男性と結婚し、娘をもうけています。
フランス国王ルイ15世に見初められ、1745年に公式寵姫の地位を与えられました。
引用元:ルイ15世の肖像
, INV 27615, Recto(※グラフィック・アーツ相談室で予約して閲覧可) Portrait de Louis XV (1710-1774); roi de France.
ド・トロワなど、ルイ15世の食堂にかけられていた絵
ルイ15世は、断絶していたポンパドゥールの侯爵位を復活させ、その領土をジャンヌに与えて宮廷に迎えました。
「公式の愛人?夫がいるのに?」と思ってしまいそうですが、公式寵姫になるには貴族の既婚女性であることが必須条件でした。
よくポンパドゥール「侯爵夫人」という表記になっていますが、実際には、夫だった人物が侯爵なのではなくジャンヌ自身が侯爵ですので、marquise de Pompadour、ポンパドゥール(女)侯爵です。
ポンパドゥール侯爵夫人は文化・芸術の庇護者でもあり、ブーシェやカルル・ヴァン・ローらを保護しました。 ディドロの百科全書、セーブル磁器などにも深く関わっています。
引用元:ポプリ・ポット Faqscl CC-BY-SA-4.0
リシュリュー翼619展示室 , OA 10965 Pot-pourri “à vaisseau”
ポンパドゥール夫人が携わったセーヴル磁器
フランソワ・ブーシェによるポンパドゥール侯爵夫人の肖像
フランソワ・ブーシェの肖像( Portrait de François Boucher ) 1741年 グスタフ・ルンドベリ ルーヴル美術館蔵
引用元:フランソワ・ブーシェの肖像
, INV 30868, Recto(グラフィック・アーツ相談室で予約して閲覧可) Portrait de François Boucher (1703-1770).
ロココ期を代表する画家の一人フランソワ・ブーシェ(1703年9月29日 – 1770年5月30日)。
後にポンパドゥール侯爵夫人となるジャンヌ=アントワネット・ポワソンとは、1741年頃顔を合わせているようです。
ブーシェはジャンヌに絵を教え、彼女の相談役として美術コレクションへの助言もしています。
ルーヴル美術館には他にもブーシェの油彩や素描が収蔵されています。
『褐色のオダリスク』( L’Odalisque Brune ) 1745年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
引用元:『褐色のオダリスク』
シュリー翼921展示室 , RF 2140 L’Odalisque
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『ディアナの水浴』( Diane sortant du bain ) 1742年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
引用元:『ディアナの水浴』
シュリー翼919展示室 , INV 2712 ; MN 66 Diane sortant du bain.
印象派の巨匠ルノワールお気に入りの絵
『昼食(朝食)』( Le Dejeuner ) 1739年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
引用元:『昼食(朝食)』
シュリー翼921展示室 , RF 926 Le déjeuner.
描かれているのはブーシェの家族?
家族の食事風景・フランソワ・ブーシェの『昼食(朝食)』( Le Dejeuner )
シェリー翼921展示室のブーシェの絵画
シェリー翼を訪れるなら
『ポンパドゥール侯爵夫人』( Porträt der Madame Pompadour ) 1756年 フランソワ・ブーシェ アルテ・ピナコテーク蔵
引用元:『ポンパドゥール夫人』
Madame de Pompadour, 1756 アルテ・ピナコテーク
貴族の女性が本など読まない時代に、書物を友としたポンパドゥール侯爵夫人の知性と教養、魅力を描き出した傑作。
室内には本棚があり、机にはペンなど書き物のセットがあります。
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フランソワ・ブーシェが描く 1756年の『ポンパドゥール夫人』とその衣装
『ポンパドゥール侯爵夫人』( Portrait of Jeanne-Antoinette Poisson, Marquise de Pompadour ) 1758年 フランソワ・ブーシェ ヴィクトリア&アルバート美術館蔵
こちらの肖像画でも本を手にし、足元にはやはり薔薇が置かれています。
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
Portrait of Madame de Pompadour ヴィクトリア&アルバート美術館
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フランソワ・ブーシェが描く 1756年の『ポンパドゥール夫人』とその衣装
『ポンパドゥール侯爵夫人』( Portrait of Marquise de Pompadour ) 1759年 フランソワ・ブーシェ ウォレス・コレクション蔵
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
Madame de Pompadour ウォレス・コレクション
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フランソワ・ブーシェが描く 1756年の『ポンパドゥール夫人』とその衣装
『ヴィーナスの化粧』( The Toilet of Venus ) 1751年 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵
引用元:『ヴィーナスの化粧』
『ヴィーナスの化粧』はポンパドゥール侯爵夫人によって注文されました。
ヴィーナスのモデル(顔)はポンパドゥール侯爵夫人といわれています。(ブーシェのヨイショを感じますね)
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ポンパドゥール侯爵夫人はブーシェが描く肖像画を気に入っていたと言われています。ナットクです(^^)。
成熟した1750年代後半のポンパドゥール侯爵夫人の肖像画からは「国王に代わって国政に携わっている」という自負、自信さえ感じられますが、1750年頃描かれたという『ポンパドゥール侯爵夫人の肖像』には瑞々しく溌剌とした美しさが溢れているように見えます。
アルテ・ピナコテークが所有する肖像画やモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールによる肖像画があまりにも有名で、この若い頃のポンパドゥール侯爵夫人が紹介される機会はあまり多くないように思えます(気のせい?)。
『ポンパドゥール侯爵夫人全身像』( Portrait en pied de la marquise de Pompadour ) 1752年 – 1755年の間 モーリス=カンタン・ド・ラ・トゥール ルーヴル美術館蔵
引用元:ポンパドゥール夫人
, INV 27614, Recto(※グラフィック・アーツ相談室で予約して閲覧可) Portrait en pied de la marquise de Pompadour
こちらはパステル画の名手と呼ばれた画家モーリス=カンタン・ド・ラトゥールによる肖像画です。
ここでもポンパドゥール侯爵夫人の側には書物や地球儀、楽器、絵の道具(カルトン)などが見られますね。
42歳という若さで亡くなってしまった女性ですが、贅沢な生活を送るなどの「負」の側面より、フランスに大きな芸術の華を咲かせた功績の方が印象に残ります。
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ポンパドゥール侯爵夫人の全身肖像画(モーリス=カンタン・ド・ラ・トゥール作)
バロック芸術からロココ芸術の流れ、ブーシェやフラゴナールについても解説されています。『ヴィーナスの化粧』『ポンパドゥール侯爵夫人』(1756年)や他の絵画もカラーで掲載されていますし、気軽に読めて教養が身につくお得な一冊ではないかと思います。
呆れるくらい華やかなロココ文化
絵画やポスターも出てます
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