宮廷金工家 J・C・デュプレシス デザインのポプリ・ポット

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18世紀ロココの時代、巨費を投じて作られた豪華な帆船型のポプリ容器、ポプリ・ア・ヴァイソー。

ポプリ・ポット ポプリ・ア・ヴァイソー( pot-pourri à vaisseau )  38.9 cm 1764年 ウォルターズ美術館蔵
ポプリ・ア・ヴァイソー( pot-pourri à vaisseau ) 1764年 ウォルターズ美術館蔵
目次

船の形をしたポプリ容器・ポプリ・ア・ヴァイソー( pot-pourri à vaisseau )

1764年 ウォルターズ美術館蔵品

ポプリ・ポット  38.9 cm 1764年 ウォルターズ美術館蔵
ポプリ・ポット 45.2 × 35 × 17.3 cm 1764年 ウォルターズ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

ウォルターズ美術館Potpourri Vase (Vase potpourri à vaisseau)

不思議な形の装飾品ですよね。

これは軟質磁器のポプリ壺(ポット)、ポプリを入れる容器です。豪華ですね。そして重そう。

この豪華な帆船型のポプリ・ポットは、セーヴル窯で巨費を投じて製作されました。

1757年から1764年までの間に12個作られ、現存するのは10個。

1764年以降ロココ調のデザインは流行遅れになってしまったようです。

下の画像は反対側から見た、台座無しの状態です。

ポプリ・ポット 1764年 ウォルターズ美術館蔵
ポプリ・ポット ウォルターズ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

金色の木製の土台の上に置かれたこの特別な花瓶は、艤装、左舷穴、長いペナントまたは旗を備えた様式化された船の形をしています。両側には、葦をかぶり、口に桁をくわえたライオンのような獣の仮面があります。この形は、セーヴルのチーフデザイナーであり、彫刻的なデザインで有名なジャン・クロード・デュプレシスの創作である可能性が高い。デュプレシスは、帆船が目立つパリ市の紋章に触発されてこの形を作成したのかもしれません。(Google翻訳)

ウォルターズ美術館Potpourri Vase (Vase potpourri à vaisseau)

ジャン=クロード・シャンベラン・デュプレシス( Jean-Claude Chambellan Duplessis, 1699年 – 1774年)

このポプリ・ポットのデザインを考案したのは金銀細工職人、鋳物・彫金師、装飾家デュプレシスです。

ジャン=クロード・シャンベラン・デュプレシスは、1699年にトリノで生まれました( 本名 Giovanni Claudio Ciambellano )。

日本の書籍だとただ「デュプレシス」となっていることがほとんどではないかと思うのですが(もし見落としていたらすみません)、息子のジャン=クロード・トーマス・シャンベラン・デュプレシス( Jean-Claude-Thomas Chambellan Duplessis, 1730年 – 1783年頃)と区別するために「デュプレシス・ペール(デュプレシス(父)、Duplessis père)」と呼ばれるそうです。

ちなみに、デュプレシス(息子)の作品は 英国のヴィクトリア&アルバート美術館に収蔵されています。

デュプレシス(父)は 1748年から1774年に亡くなるまでセーヴルでヴァンセンヌ磁器製造所に勤め、1758年からは宮廷金工家を務めました。

このポットの磁器絵付けは ジャン=ルイ・ モラン(またはモリンと表記 Jean-Louis Morin, 1732年 – 1787年)。

ウォルターズ美術館の解説には、「この時期のセーヴル工場の第一人者であり、そのような海洋シーンを専門に手がけたジャン・ルイ・モランの作品です。(Google翻訳)」とありました。

ポプリ・ポット  38.9 cm 1764年 ウォルターズ美術館蔵
ポプリ・ポット  ウォルターズ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

ポプリ・ポット  38.9 cm 1764年 ウォルターズ美術館蔵
ポプリ・ポット  ウォルターズ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

1757年 – 1758年頃 メトロポリタン美術館蔵

メトロポリタン美術館によれば、この作品は、1758年に製造された最初のモデルのひとつだそうです。

ポプリ・ポット( Potpourri vase ) 1757年-1758年頃 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ・ポット 44.8 × 37.5 × 19.4 cm 1757年 – 1758年頃 メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

メトロポリタン美術館Potpourri vase (pot-pourri à vaisseau)

ご覧になる機器の色の出方で印象が違うかもしれませんが、華やか・鮮やかなピンクではなく、ちょっとくすんだような、抑えたピンクです。

その名も「ポンパドゥール・ピンク」。

中央にはロココ期の画家フランソワ・ブーシェ風の絵。

この上の部分は取り外し可能です。

ポプリ・ポット( Potpourri vase ) 1757年-1758年頃 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ・ポット メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

こちらはポットの反対側。

ポプリ・ポット( Potpourri vase ) 1757年-1758年頃 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ・ポット メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

ポプリ・ポット( Potpourri vase ) 1757年-1758年頃 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ・ポット メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

ペナント(白いリボン部分)には王室の紋章に使われた意匠、フルール・ド・リスが。

フルール・ド・リス
フルール・ド・リス

引用元:フルール・ド・リス  Sodacan CC-BY-1.0 CC-BY-SA-3.0-migrated

ポプリ・ポット( Potpourri vase ) 1757年-1758年頃 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ・ポット メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

舟形ポプリ・ポットは、グループを形成する「付属品」を伴います。

1779年の目録は、船の形をしたポプリの花瓶と2つの象の頭の花瓶(58.75.90a、b、.91a、bを参照)が、1758年12月にルイ・ジョゼフ・ド・ブルボン、ド・コンデ(1736–1818)によって購入された花瓶の装飾グループの一部であったことを示しています。ガーニチュールを完成させた他の2つの花瓶は、現在パリのルーブル美術館に所蔵されています。ド・コンデ王子は、パリの邸宅であるブルボン宮にグループを保管しました。5つの花瓶の装飾品は、18世紀の典型的な専門労働者の年収を上回る4,320リーブルという驚異的な金額を王子に費やしました。(Google翻訳)

メトロポリタン美術館Potpourri vase (pot-pourri à vaisseau)

引用文中にある「2つの象の頭の花瓶(58.75.90a、b)」が、下の画像。(※58.75.91a、b

象の頭の花瓶(一対のうちひとつ) 1758年 デュプレシスによるデザイン メトロポリタン美術館蔵
象の頭の花瓶(一対のうちひとつ) 1758年 デュプレシスによるデザイン メトロポリタン美術館蔵

引用元:象の頭の花瓶

メトロポリタン美術館Vase (vase à tête d’éléphant) (one of a pair)

こちらはデュプレシスによるデザインの象頭の花瓶セット、のひとつ。

メトロポリタン美術館の説明文では、上の船形のポプリ・ポットとこの花瓶一対は「ひとつのセット」とのことです。

象の頭の花瓶(一対のうちひとつ) 1758年 デュプレシスによるデザイン メトロポリタン美術館蔵
象の頭の花瓶(一対のうちひとつ) メトロポリタン美術館蔵

引用元:象の頭の花瓶

セーヴル磁器では、象の頭が付いた花瓶は比較的少数しか生産されませんでした。 造りの複雑さ、それに伴う製造コストが原因だったようです。

象の頭の花瓶 1758年頃 デュプレシスによるデザイン メトロポリタン美術館蔵
象の頭の花瓶 1758年頃 デュプレシスによるデザイン メトロポリタン美術館蔵

引用元:象の頭の花瓶

メトロポリタン美術館Pair of elephant-head vases (vases à tête d’éléphant)

可愛らしい天使の絵が描かれた花瓶(オブジェクト番号: 1983.185.10, .11 )の解説欄に、「現存したことが知られている21の例のうち、この博物館は幸運にも6つを所蔵しています1976.155.61、58.75.90a、b、58.75.91a、b、および1983.185.9も参照)。」とありました。

1760年頃 ルーヴル美術館蔵

ポプリ・ポット( Pot-pourri "à vaisseau" ) 1760年頃 ルーヴル美術館蔵
ポプリ・ポット 37 × 33.5 × 17 cm 1760年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Faqscl  CC-BY-SA-4.0

ルーヴル美術館Pot-pourri “à vaisseau”

美術館のサイトでは、上部(フタ?)を取った状態や、他の角度からも見るころができます。

解説に、本作は「この「器」ポプリはもともと、1760年5月30日にパリのオテル・ドヴルーにあるポンパドゥール夫人の部屋のために届けられた、ピンクを背景にした重要な5ピースの装飾の目玉でした。(Google翻訳)」との記述があります。

ポプリ・ポット( Pot-pourri "à vaisseau" ) 1760年頃 ルーヴル美術館蔵
ポプリ・ポット ルーヴル美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Faqscl  CC-BY-SA-4.0

図柄はシノワズリ、東洋趣味。

このポプリ・ポットには緑が効果的に使われています。

絵付けはヴェルサイユ生まれの磁器画家 シャルル=二コラ・ドダン(チャールズ・ニコラス・ドーディンとも表記 Charles-Nicolas Dodin, 1734年 – 1803年)。

フランソワ・ブーシェの作品の複製を専門とし、風景やシノワズリの絵を描いていました。

18世紀のセーヴル磁器製作所最高の職人のひとり

18世紀セーヴル磁器絵の職人シャルル=二コラ・ドダン

1760年頃 J・ポール・ゲティ美術館蔵

ポプリ・ポット 1760年頃 J・ポール・ゲティ美術館蔵
ポプリ・ポット 37.5 × 34.8 × 17.3 cm 1760年頃 J・ポール・ゲティ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

J・ポール・ゲティ美術館Lidded Pot-pourri Vase (vase or pot-pourri vaisseau à mât, deuxième grandeur)

ポプリ・ポット 1760年頃 J・ポール・ゲティ美術館蔵
ポプリ・ポット J・ポール・ゲティ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット

窓絵の絵画はルーヴル美術館のものと同じくシャルル=二コラ・ドダン(チャールズ・ニコラス・ドーディン)。

17世紀のフランドルの画家ダフィット・テニールス (子)にちなむ絵を描いています。

説明文にはこの他、美術品収集家のピエール・クロザと交流のあった彫刻家ジャック=フィリップ・ル・バ( Jacques-Philippe Le Bas, または Lebas (1707年 – 1783年)の名も挙げられていますが、どの部分が「ジャック=フィリップ・ル・バにちなむエングレーヴィング」なのか私にはよく判りませんでした。判りましたら追記します)

ちなみに、ピエール・クロザは 画家ロザルバ・カッリエーラ、アントワーヌ・ヴァトーなどとも関係が深い美術収集家です。

ピエール・クロザ(1661年-1740年)の肖像 18世紀 ロザルバ・カッリエーラ
ピエール・クロザ(1661年-1740年)の肖像 18世紀 ロザルバ・カッリエーラ画

引用元:ピエール・クロザの肖像

ロザルバ・カッリエーラがパステルで描いた肖像画

ダフィット・テニールス (子)( David Teniers de Jonge, 1610年 – 1690年)は フランドル出身の画家で、様々なジャンルの絵を描いています。

テニールスの絵に農民たちが酔っぱらって寝ているひとを起こすような場面があるので、本作のポプリ・ポットの絵の着想はここからなのかな?と思います。

後で引用させていただいている前田正明氏の『ヨーロッパ陶磁名品図鑑 華麗なるアンティークの世界へ』や氏の他の書籍で「トゥニエール」という画家の名が挙がっていますが、これは Teniers のフランス語読みかと思われます。

この形は、通常貴金属で中世から使用されていた船の形をしたテーブル装飾であるネフに由来しています。この花瓶には、部屋の香りを醸し出すために使用されたポプリが入っていたでしょう。ポプリの容器は、1700 年代にフランスで初めて登場し、貴金属、磁器、漆、または硬石で作られています。甘い香りのする内容物のレシピはすぐに普及しました。ヴァイソー・ア・マット(マスト付き船)として知られる花瓶は、さまざまな形の他の花瓶と一緒に販売して装飾品として作られました。シャルル・ニコラ・ドディンは、フランドルの芸術家デヴィッド・テニエ・ザ・ヤンガーの絵画にちなんで彫刻をコピーし、表面に素朴な風景を描きました。(Google翻訳)

J・ポール・ゲティ美術館Lidded Pot-pourri Vase (vase or pot-pourri vaisseau à mât, deuxième grandeur)

1760年代 ワデスデン・マナー蔵

現存する10個のうち3つは、英国のワデスデン・マナーが所有しています。

 ポプリ・ポット 1761年頃 ワデスデン・マナー蔵
ポプリ・ポット 1761年頃 ワデスデン・マナー蔵

引用元:ポプリ・ポット National Trust, Waddesdon Manor / John Bigelow Taylor CC-BY-SA-4.0

ワデスデン・マナーPot-pourri vase

ワデスデン・マナーのサイトには、画像の左にある青いポットの解説(44.5 × 37 × 19 cm)が載っています。

描かれているのは戦闘場面、背面はジャン=ルイ・ モランによる花の絵。「1762年」の日付とマーク入り。

花瓶の前面のシーンは、白衣と青衣の2つの軍隊の間で行われている戦いを示しています。この種の珍しい装飾が施された花瓶は他に7つしか知られておらず、セーヴルでより一般的に見られる一般的な軍事キャンプのシーンとは異なり(acc.no.3013を参照)、繊細な香りを放つ美しいオブジェクトであることを意図したものにはやや驚くべき残忍さがあります。作品は 1761 年から 1763 年の間に製造され、ワデスドンの花瓶が最も初期のものです。日付は、フランスがイギリスとプロイセンに対してオーストリアとスペインと同盟を結んだ七年戦争(1756-63)の最後の3年間に対応しています。この時点では標準化された軍服は普遍的ではありませんでしたが、フランスとその同盟国はほとんどオフホワイトを着ていましたが、プロイセンは青を着ていました。したがって、描かれている戦いはおそらく芸術家の発明であるにもかかわらず、シーンはこの戦争に言及している可能性があります。(Google翻訳)

ワデスデン・マナーPot-pourri vase

本体に開けられた穴、ペナントのねじれの表現、脚部分の反りなど、細部まで非常に凝った装飾ですね。

窯で軟膏磁器をうまく焼成することは難しいことを考えると、カバーは並外れた技術的成果の偉業です。花瓶は、工場の生産に特徴的な非常に細かい彫刻のディテールも示しています。艤装のロープのねじれまで見ることができます。両端には、ヒドウグサが上に流れる髪のマスクがあります。これらは水との関連を示しており、したがって、マスクはライオンに似ているにもかかわらず、海洋生物のものであることを示しています。その生物の口から飛び出しているのは、ギリシャとローマの戦艦で見られる破城槌のようなリブのあるスパーです。花瓶の楕円形の洗面器の形は、ルイ14世のネフ、王が公共の場で食事をするときにテーブルに置かれたナプキン、カトラリー、スパイスの儀式用の容器に関連しています。この形は、紋章に船を組み込んだパリの街も指しています。(Google翻訳)

ワデスデン・マナーPot-pourri vase

画像の中央にあるポットの色は、「1760年頃に短期間だけ生産された “petit vert” (プチ・ヴェール)」とあります。

足の部分も他のポットとは異なり、金メッキの台座に取り付けられているようです。

港の風景の絵はおそらくジャン=ルイ・ モランとのこと。背面の絵は花。

 ポプリ・ポット 1761年頃 ワデスデン・マナー蔵
ポプリ・ポット ワデスデン・マナー蔵

引用元:ポプリ・ポット National Trust, Waddesdon Manor / John Bigelow Taylor CC-BY-SA-4.0

画像右、紺色のポットの絵は、おそらくアンドレ=ヴァンサン・ヴィエイヤール( André-Vincent Vielliard, 1717年 – 1790年)によるもの。着想はダフィット・テニールス (子)の、農村風景の絵画から取られたようです。

ヴィエイヤールは1750年代に数多くの花瓶の絵を手がけ、その後1760年代になるまでにはティー・セットや実用品に取り組んだようです。(参考:André-Vincent Vielliard

ポプリ・ポット 1761年頃 ワデスデン・マナー蔵
ポプリ・ポット ワデスデン・マナー蔵

引用元:ポプリ・ポット CC-Zero

1761年頃 ウォレス・コレクション蔵

ポプリ・ポット 1761年頃 ウォレス・コレクション蔵
ポプリ・ポット 44.1 × 36.9 cm 1761年頃 ウォレス・コレクション蔵

引用元:ポプリ・ポット

ウォレス・コレクションPotpourri Vase (vase ‘pot pourri à vaisseau’ or ‘pot pourri en navire’, of the first size)

胴体部分の窓絵にはロココ風の人物が描かれることが多いセーヴル磁器ですが、ここに描かれているのは鳥の絵です。

胴部に金の縁どりで窓絵風に描かれた絵は、ブーシェやトゥニエールによるロココ様式の田園に遊ぶ男女を描いたものが多いが、ここに描かれている極楽鳥は珍しく、エヴァンの手になるものとされている。胴部から台座にかけての濃い青地、すなわち「王者の青ブルー・ド・ロワ」に鎖状の金彩模様が見られるが、これは特に「虫食い装飾」と呼ばれて好まれた装飾文様である。 

前田正明(監修・執筆). 1989-12-1. 『ヨーロッパ陶磁名品図鑑 華麗なるアンティークの世界へ』. 講談社. p.68.
ポプリ・ポット 1761年頃 ウォレス・コレクション蔵
ポプリ・ポット ウォレス・コレクション蔵

引用元:ポプリ・ポット

ウォレス・コレクションの解説から、一部引用します。

波模様の足に乗せられ、肩に「舷窓」、側面に眉のスプリットが付いた船首像、表紙の帆、ロープ、ペノンは、船のテーマを遊び心たっぷりにアレンジしています。カバーの複雑なピアスは装飾的であるだけでなく、非常に機能的でもあります:香りのよい花、ハーブ、スパイスで満たされるポプリの花瓶として意図されており、開口部は香水が浸透することを可能にしました。釉下ブルーと釉上グリーンの地色と豊富な金メッキで装飾された花瓶は、両面に描かれた風景の鳥を示しています。ワデスドン邸にある同様に装飾された「花瓶アオレイユ」のセットは、もともとこの作品で装飾品を形成した可能性があります。(Google翻訳)

ウォレス・コレクションPotpourri Vase (vase ‘pot pourri à vaisseau’ or ‘pot pourri en navire’, of the first size)

1758年 – 1759年 ロイヤル・コレクションの収蔵品

使用できる画像が無かったため、リンクを貼っています。

RCIN 2360 – Pot-pourri vase and cover (pot-pourri à vaisseau or pot-pourri en navire)

ラピス・ブルーと緑の地色で、大きさは 55.1 × 37.8 × 19.3 cm。

描かれた絵は風俗画、農村風景です。こちらもダフィット・テニールス(子)の絵から着想を得ているようです。

このポットは1759年の年末に行われたヴェルサイユでの販売会で、ポンパドゥール夫人により 960リーヴルで購入され、その後 英国王ジョージ4世(1762年 – 1830年)のコレクションに加わりました。

1759年頃 フリック・コレクションの収蔵品

使用できる画像が無かったため、リンクを貼っています。

説明文によると、本作は1759年に作られ、大きさは 44.5 × 37.8 × 19.1 cm、3つの花瓶セットのうちのひとつ、とあります。

色は青と緑。

前面と背面の窓絵に描かれた鳥は、「鳥や風景の絵画を専門とする著名な芸術家」、Louis-Denis Armand l’aîné(ルイ=ドゥニ・アルマン・ライネと表記? 1745年 – 1788年)によるものだそうです。

このポプリ・ア・ヴァソー(船の形をしたポプリ)の非常に独創的なデザインは、1757年にセーヴル工場の芸術監督ジャン・クロード・デュプレシスによって作成されたと思われます。この作品は、セーヴルがこのサイズのポプリ船を生産し始めた1759年頃のものにさかのぼることができます(当初は小さかった)。その装飾を担当した画家と金箔職人は、アップルグリーンとダークブルーの地面を並べ、後者はカイルテ(小石のような)パターンで金を豊富に含みました。前面と背面の保護区にあるカラフルなイメージとエキゾチックな鳥は、鳥や風景の描きを専門とする著名な芸術家、ルイ・ドニ・アルマン・レネ(1745-88年)によるものです。アルマンはまた、ここに示されている2つの花瓶に鳥を描きました。セーヴルの工場限定で使用されたゴールドは、その大胆な形状を強調するために、作品の輪郭に沿って惜しみなく適用されています。(Google翻訳)

フリック・コレクションPot-pourri à Vaisseau

画家アルマンは、作品に三日月のマークを署名していることから ” crescent painter “「三日月の画家」と呼ばれているとのことです。(参考:ゲティ美術館 Louis-Denis Armand l’aîné

※ ワデスデン・マナーのサイトで、Louis-Denis Armand (1723-1796) の鳥の絵に関する動画が掲載されていました。(2025年9月)

Flights of Fancy: Birds at Waddesdon

ポプリとその容器

部屋に芳香を漂わせるため、薔薇の花などにシナモンなどの香料を加えて熟成させた室内香、ポプリ。

『ポプリ』( Potpourri ) 1899年 エドウィン・オースティン・アビー画

『ポプリ』 1899年 エドウィン・オースティン・アビー画
『ポプリ』 1899年 エドウィン・オースティン・アビー画

引用元:『ポプリ』

アメリカ出身の画家エドウィン・オースティン・アビー( Edwin Austin Abbey, 1852年4月1日-1911年8月1日)の『ポプリ』です。

時代も国も異なりますが、美しいポプリ作りのイメージということで掲載( ̄▽ ̄)。

作業中のテーブルの奥には陶磁器、ポプリ・ポットでしょうか。

18世紀後半のロココの宮廷では、贅沢なポプリ・ポットが貴婦人たちに好まれました。

ワデスデン・マナーのポプリ・ポット、花瓶
ワデスデン・マナーのポプリ・ポット、花瓶

引用元:ワデスデン・マナーのポプリ・ポット、花瓶 Daderot CC-Zero

デュプレシス・デザインのポプリ・ポット。窓絵の中国風の絵はドダン 1761年頃 ウォルターズ美術館蔵
デュプレシス・デザインのポプリ・ポット。窓絵の中国風の絵はドダン 1761年頃 ウォルターズ美術館蔵

引用元:ポプリ・ポット Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

ウォルターズ美術館Pair of Potpourri Vases (Vases pot pourri feuilles de mirte)

船の形をしている理由

船の形をした装飾品といえば、中世でよく使われた、船形の超豪華な塩容れ(塩入れ)「ネフ」が浮かびます。

聖ウルスラの身廊、トー宮殿(フランス) 1500年代
ネフ(聖ウルスラの身廊)、トー宮殿(フランス) 1500年代

引用元:ネフ(聖ウルスラの身廊) Dguendel CC-BY-4.0

ベリー公ジャンの塩入れ

「ネフ」ベリー公ジャンのいとも豪華なる塩入れ「ネフ」

まばゆい塩容れ

ベンヴェヌート・チェリーニの黄金の塩容れ「サリエラ」

「ポプリ・ア・ヴァイソー」の形は「ネフ」から来ているとの記述もありますがLidded Pot-pourri Vase (vase or pot-pourri vaisseau à mât, deuxième grandeur、これらポプリ・ポットのひとつを所有するウォレスコレクションの説明文の中に、船の形をしているのは、七年戦争(1756年 – 1763年)におけるフランス海軍の勝利を指している場合がある、との記述がありました。

The boat shape has long been associated with the arms of the city of Paris, in the context of contemporary political events it might however refer to the recent French naval victories in the Seven Years’ War (1756-1763).

ウォレス・コレクションPotpourri Vase (vase ‘pot pourri à vaisseau’ or ‘pot pourri en navire’, of the first size)

(Google翻訳:ボートの形は長い間、パリの街の腕と関連付けられてきました。しかし、現代の政治的出来事の文脈では、七年戦争(1756-63)における最近のフランス海軍の勝利を指す可能性があります。)

七年戦争と製作時期が被っていることから、この可能性はかなり高いのかなと思いました。

もし情報をお持ちの方がいらしたら是非お教えください。よろしくお願い致します。

「ポンパドゥール・ピンク」の名の由来

1752年、不振が続いていたヴァンセンヌ窯は巨額の資金を投入され、「王立磁器製作所」として生まれ変わります。

1756年、フランス国王ルイ15世の愛妾ポンパドゥール侯爵夫人は、セーヴルにある、当時使用されていなかった王家の別荘を製陶工場にあてるよう国王に提案します。

『ポンパドゥール夫人』 フランソワ・ブーシェ 1756年 アルテ・ピナコテーク蔵
『ポンパドゥール夫人』 1756年 フランソワ・ブーシェ アルテ・ピナコテーク蔵

引用元:『ポンパドゥール夫人』

ポンパドゥール侯爵夫人は国王の賛同を得て、自身の館のあったベルヴューに近いセーヴルに製作所を移転。

1757年に「フランス王立セーヴル磁器製作所」として開窯しました。

フランソワ・ブーシェが描く 1756年の『ポンパドゥール夫人』とその衣装

ブーシェの『ヴィーナスの化粧』『ヴィーナスの水浴』

ナイショの仕草のキューピッド(ファルコネ作)

ポンパドゥール侯爵夫人は国王とともに、国の威信をかけて製造したセーヴル磁器の展示即売会を催します。

どんだけ高額な即売会だったんでしょう。

 王立セーヴル窯で製作された優美なポプリ壺や花瓶、蠟燭ろうそく立てなどはヴェルサイユやトリアノン、ベルヴュー、ムードン、フォンテンブローなどの王宮や邸館の飾り物として、あるいは諸王家や王妃、愛娘まなむすめ、愛妾、廷臣、外交官らへの贈り物として製作されたものだが、一方では国王やポンパドゥール夫人みずから主催者となり、各国の王侯貴族や自国の高官、大商人らを招いて、ヴェルサイユ宮殿やポンパドゥール夫人のベルヴュー邸館でこれらの磁器の展示即売会を催した。このとき王への忠誠を誓って貴族や政府高官、これに招かれた各国大使、高官らは、外交辞令も手伝って先を争ってこれらの作品を買い求めたと伝えられている。

前田正明・櫻庭美咲(著). H18-1-31. 『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』. 角川選書. p.161.

貴族、政府高官の皆様、お買い上げ(・∀・)。(毎度ありー)

ポンパドゥール侯爵夫人自らも少なくとも3個ほどお買い上げ。(すげー)

ポンパドゥール侯爵夫人の栄誉をたたえ、科学者ジャン・エローは特別な鮮やかな薔薇色の地色を発明します。

しかし1764年のポンパドゥール侯爵夫人の死、または1766年のエローの死で製法が永遠に失われたことによってなのか、「ポンパドゥール・ピンク」の生産は終了しました。

デュプレシスによるデザイン

ゴンドラ型ポプリ・ポット

ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ、pot-pourri gondole ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリゴンドラ

メトロポリタン美術館Potpourri vase (pot-pourri gondole)

すっごく凝った装飾ですよね。

デザインは デュプレシス、磁器絵付けは シャルル=二コラ・ドダンです。

このポプリ・ポットの最初の所有者はポンパドゥール侯爵夫人でした。

花瓶本体の上部には四つの穴が開けられていますが、これは、「おそらく球根を支えることを目的としている」そうです。

ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリゴンドラ

ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリゴンドラ

ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵
ポプリ花瓶(ポプリゴンドラ) 1757年 メトロポリタン美術館蔵

引用元:ポプリゴンドラ

ロイヤル・コレクションにはピンクのポプリゴンドラが収められています。

こちらのサイトにもいろいろな角度からの画像が載っていて、球根をセットする穴もよく見えます。

Pot-pourri gondole 1757-58

花瓶

デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶一対 1762年 ウォルターズ美術館蔵
デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶一対 1762年 ウォルターズ美術館蔵

引用元:花瓶一対 Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

ウォルターズ美術館Pair of Vases (Vases à oreilles)

デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶 1760年-1769年の間 ウォルターズ美術館蔵
デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶 1760年 – 1769年の間 ウォルターズ美術館蔵

引用元:花瓶  Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0

ウォルターズ美術館Potpourri Vase (Vase à ruban)

デュプレシス・デザインの花瓶、ろうそく立て。窓絵の絵はヴィエイヤール 1759年 シカゴ美術館蔵
デュプレシス・デザインの花瓶、ろうそく立て。窓絵の絵はヴィエイヤール 1759年 シカゴ美術館蔵

引用元:花瓶 Daderot CC-Zero

シカゴ美術館Pair of Vases (Pots Pourris à Bobèches)

デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶 1760年 メトロポリタン美術館蔵
デュプレシスによるデザイン、モランの絵付けの花瓶 1760年 メトロポリタン美術館蔵

引用元:花瓶

メトロポリタン美術館Flower vase (cuvette à tombeau)

デュプレシス・デザインの花瓶。窓絵の絵はドダン 1760年頃 シカゴ美術館蔵
デュプレシス・デザインの花瓶。窓絵の絵はドダン 1760年頃 シカゴ美術館蔵

引用元:花瓶 Daderot CC-Zero

シカゴ美術館Vase (Cuvette Mahon)

いやー、豪華、豪奢、ゴージャス、立派、贅沢なポットや花瓶ですよねえ。

初めてポプリ・ア・ヴァイソーの実物を見た時、「ナニコレ。ナニスルヤツ??ナンカ穴アイテルケド」というような感想でした。

後でアレは非常に貴重なものだと知り、もっとよく見ておけば良かったと思ったものです。

このロココ期のセーヴル磁器は優雅でとても素敵。

王侯貴族が贈答用に、または忠誠心を示すために購入した器ですが、当時の庶民が見たらどう思ったのでしょうか。

主な参考文献
  • 前田正明・櫻庭美咲(著). H18-1-31. 『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』. 角川選書.
  • マーガレット・クロスランド(著). 廣田明子(訳). 2001-12-1. 『侯爵夫人ポンパドゥール ヴェルサイユの無冠の女王』. 原書房.
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