ブーシェによるタペストリーの下絵『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    • URLをコピーしました!

    『オダリスク』『ポンパドゥール夫人の肖像』などで知られる18世紀の画家ブーシェ。ゴブラン製作所の所長でもあったブーシェはタペストリー(タピスリー)のための下絵も描いています。

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Vertumne et Pomone ) 1763年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポモナ』 1763年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵

    展示室変更、貸し出し・修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。

    目次

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Vertumne et Pomone ) 1763年 フランソワ・ブーシェ

    シュリー翼927展示室Vertumne et Pomone. , INV 2710 bis ; B 424

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Vertumne et Pomone ) 1763年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポモナ』 1.475 × 1.22 m 1763年 フランソワ・ブーシェ

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    この作品はゴブラン織のタペストリーの下絵として描かれました。

    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』( Vertumne et Pomone ) 1763年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』 フランソワ・ブーシェ

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    このゴブラン織のタペストリーはシュリー翼622室にあります。

    シュリー翼622展示室Vertume et Pomone, d’une tenture à alentours d’après Boucher dite “Les Amours des Dieux” tissée pour la chambre rose de la duchesse de Bourbon à l’hôtel de Lassay , OA 5119

    シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー
    シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー

    引用元:シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー Tangopaso

    シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー
    シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー

    引用元:シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー Tangopaso

    解説によると、『ウェルトゥムヌスとポモナ』をテーマとしたタペストリーは、オテル・ド・ラッセのブルボン公爵夫人の「ピンク色の部屋のために作られた」とのことです。

    オテル・ド・ラッセ( Hôtel de Lassay )はパリの7区にある私邸で、建設は18世紀後半。

    1768年、ブルボン公爵夫人の孫であるコンデ公ルイ・ジョセフ・ド・ブルボンに売却されました。( Wikipedia : Hôtel de Lassay

    シュリー翼622室「オテル・ド・シェヴルーズのパレード・ルーム 」( Salle 622 – Chambre de Parade de l’hôtel de Chevreuse )

    シュリー翼622展示室Boiserie de la chambre à coucher du duc de Chevreuse , OA 10198

    オテル・ド・シェヴルーズのパレード・ルーム
    オテル・ド・シェヴルーズのパレード・ルーム

    引用元:オテル・ド・シェヴルーズのパレード・ルーム Tangopaso

    オテル・ド・シェヴルーズ(オテル・ド・ルイネス)は、17世紀後半にパリ市内に私邸として建設。

    19世紀末に取り壊しが決まり、寝室内の羽目板や暖炉などは1962年にルーヴル美術館に遺贈されたそうです。( Wikipedia : Ancien Hôtel de Luynes (Paris) )

    貴婦人の私的空間を華やかに彩るタペストリー。

    リボンや花で飾られた楕円形のフレームの中では、神々の恋愛の情景が繰り広げられています。

     フランスのタピストリーは十八世紀に入っても十七世紀の豪壮さこそうすれたが、王宮や貴族の邸宅の壁面を飾るために制作された。主題はロココ絵画の雅宴画(貴族たちの雅びた田園での遊びを描いたもの)の影響のあるものや、狩猟の情景、愛の物語、オペラの主題などが好まれ、花を中心とした装飾文様の中に窓をつくって絵画的情景を挿入することも流行した。ゴブラン王立工場の芸術監督であった画家ブーシェの甘美で軽快な美が好まれた。シャルル・コワペル下絵の「ドン・キホーテ物語」連作、ブーシェ、ほかの下絵による神々の恋」もすぐれていた。ボーヴェ、オービュッソンでもロココ的タピストリーが制作された。

    佐野敬彦(著). 2013-9-20. 『織りと染めの歴史』. 昭和堂. p75.

    100ページちょっとの厚さの本ですが、非常に充実した内容です。教科書?

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』 1760年 ジャン=バティスト・ルモワーヌ

    リシュリュー翼105展示室Vertumne et Pomone , RF 2716

    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』( Vertumne et Pomone ) 1760年 ジャン=バティスト・ルモワーヌ ルーヴル美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』( Vertumne et Pomone ) 1760年 ジャン=バティスト・ルモワーヌ

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』 Loicwood (2006) CC-BY-SA-2.5

    ブーシェと同じ時代に活躍したフランスの彫刻家 ジャン=バティスト・ルモワーヌによる作品。「ルイ15世とポンパドゥール夫人へのオマージュとして制作された」とありました。( Wikipedia : Vertumne et pomone

    ジャン=バティスト・ルモワーヌ(子)他彫刻家たち

    ナイショのしぐさのキューピッド(ファルコネ作)

    ローマ神話『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    果実のニンフ・ポモナ(ポーモーナ)はその美貌で多くの男性を虜にしていました。

    しかし彼女の関心は専ら庭仕事のみ。

    彼女に恋をした豊穣の神ウェルトゥムヌスは様々な姿に変装してポモナに近づき、ウェルトゥムヌス神の功績を称えます。

    それでもポモナは無関心。

    豊穣神は老婆に化けて彼女の元を訪れます。

    そして結婚の美徳を説き、その真の姿を現しました。

    愛に目覚めたポモナはウェルトゥムヌスと結ばれます。

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』(Earth: Vertumnus and Pomona ) 1749年 フランソワ・ブーシェ コロンバス美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Earth: Vertumnus and Pomona ) 1749年 フランソワ・ブーシェ コロンバス美術館蔵

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Vertumnus and Pomona ) 1757年 フランソワ・ブーシェ
    『ウェルトゥムヌスとポモナ』( Vertumnus and Pomona ) 1757年 フランソワ・ブーシェ

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    フランソワ・ブーシェ画、1726年 – 1735年頃。元はロスチャイルド家の所有

    グラフィック・アーツ部門Pomone , 18204 LR/ Recto

    コロンバス美術館のブーシェの作品と、ポモナの物語も掲載

    画家 フランソワ・ブーシェ( François Boucher, 1703年9月29日 – 1770年5月30日)

    グラフィック・アーツ部門Portrait de François Boucher (1703-1770). , INV 30868, Recto

    フランソワ・ブーシェ(1703年9月29日-1770年5月30日)の肖像 1741年 グスタフ・ルンドベリ ルーヴル美術館蔵
    フランソワ・ブーシェの肖像 1741年 グスタフ・ルンドベリ

    引用元:フランソワ・ブーシェの肖像

    ブーシェは、タペストリーだけでなく、ポンパドゥール侯爵夫人が携わったセーヴル磁器の下絵を描くなど、装飾の面でも豊かな才能を発揮。当時のオペラ座の舞台装置も手掛けています。

    ヴェルサイユ宮殿、フォンテーヌブロー宮殿、その他多くの宮殿や邸館の装飾に活躍し、またボーヴェやゴブランのタピスリー制作のための下絵を描いた。現在ルーヴル美術館にある大作《ウルカヌスの鍛冶場かじば》(一七五七年)は、ゴブラン製作所のためのタピスリー下絵「神々の恋愛」シリーズの一点である。

     きわめて社交的性格でもあったブーシェは、シュヴルーズ公や、スウェーデン大使テッサンや、銀行家のエベールなど、当時の著名な美術愛好家と親しく交わり、多くの注文を受けたが、特に、ルイ十五世の寵妃であり、その趣味の指南番でもあったポンパドゥール夫人の知遇を得たことは大きい。晩年には、カルル・ヴァン・ローの後を承けて、首席王室付画家になっている。

    高階秀爾(著). 2019-9-9. 『フランス絵画史 ルネサンスから世紀末まで』. 講談社学術文庫. p.148.

    スウェーデン大使カール・グスタフ・テッシン伯爵( Carl Gustaf Tessin )が注文した絵画

    ブーシェに『ヴィーナスの勝利』を注文したスウェーデンの伯爵

    シュリー翼にあるブーシェの油彩

    シュリー翼で楽しむフランソワ・ブーシェの世界

    1758年制作のセーヴル磁器の花瓶。ブーシェの下絵

    シュリー翼619展示室Vase” hollandais” décoré de quatre paysages , OA 9995

    『アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス』 1757年

    シュリー翼927展示室Les forges de Vulcain ou Vulcain présentant à Vénus des armes pour Énée. , INV 2707 bis

    『アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス』 1757年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス』( Les forges de Vulcain ou Vulcain présentant à Vénus des armes pour Énée ) 1757年 フランソワ・ブーシェ

    引用元:『アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス』

    先に挙げた引用文にあった《ウルカヌスの鍛冶場かじば》。縦 3.2 m × 横 3.2 m という大作です。

    この作品も「神々の愛」のシリーズのひとつで、タペストリーの図案になることを想定していました。

    信頼のおける高階秀爾先生の著書。一冊持っていると流れがわかります

    オテル・ド・ラッセのタペストリー『アムールとプシュケ』

    シュリー翼622展示室L’Amour et Psyché, d’une Tenture à alentours d’après Boucher dite “Les Amours des Dieux” tissée pour la chambre rose de la duchesse de Bourbon à l’hôtel de Lassay , OA 5118 ; GMTT 216

    『アムールとプシュケ』(タペストリー部分を拡大)
    『アムールとプシュケ』(タペストリー部分を拡大)

    引用元:シュヴルーズ公のベッド両脇のタペストリー Tangopaso

    タペストリー、下絵など

    『ケファルスとオーロラ』 1764年

    シュリー翼927展示室Céphale et l’Aurore. , INV 2710 ; B 428

    『ケファルスとオーロラ』( Céphale et l'Aurore ) 1.42 m × 1.175 m 1764年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『ケファルスとオーロラ』( Céphale et l’Aurore ) 1.42 × 1.175 m 1764年 フランソワ・ブーシェ

    引用元:『ケファルスとオーロラ』 Sailko CC-BY-3.0

    王立ゴブラン製作所のタペストリーの図案になることを想定した絵。

    『愛の標的』 1758年

    シュリー翼927展示室La Cible d’Amour. , INV 2715 ; MR 1219

    ※2025年4月現在展示されていません

    『愛の的』( La Cible d'Amour ) 2.68 m × 1.67 m 1758年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『愛の的』( La Cible d’Amour ) 2.68 × 1.67 m 1758年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵

    引用元:『愛の標的』

    2023年のルーヴル美術館展で来日。 図録に、「ゴブラン製作所で織られたタペストリーの連作「神々の愛」のモデルとして用いられた原画の一つである。」とあります。

    『ネプチューンとアミューモーネー』 1747年 – 1748年

    グラフィック・アーツ部門Neptune et Amymone , INV 24752, Recto

    『ネプチューンとアミューモーネー』( Neptune et Amymone ) 1747年 - 1748年 フランソワ・ブーシェ ルーヴル美術館蔵
    『ネプチューンとアミューモーネー』( Neptune et Amymone ) 1747年 – 1748年 フランソワ・ブーシェ

    引用元:Neptune et Amymone

    王立ゴブラン製作所のタペストリー「神々の愛」の下絵。

    『水上のウェヌス』(1775年頃)。フランソワ・ブーシェによるオテル・ド・ラセのブルボン公爵夫人の寝室のためのタペストリー。四つの織物のセットのひとつ

    Vénus sur les eaux, d’un ensemble de quatre pièces des tentures de François Boucher, tissées pour la chambre de la duchesse de Bourbon à l’hôtel de Lassay , OA 5120

    『ネプチューンとアミューモーネー』(1774年)。下絵はブーシェ。ゴブラン製作所のためのもの

    Neptune et Amymone , INV 2718 ; MR 1217

    ボーヴェのタペストリー製作所( Manufacture de Beauvais )の「神々の愛」シリーズのためのスケッチ『ウルカヌスの鍛冶場』(1725年 – 1750年)

    シュリー翼921展示室Les Forges de Vulcain , MI1025

    ボーヴェのタペストリー製作所( Manufacture de Beauvais )。ブーシェによる下絵「神々の愛」シリーズのタペストリー『ネプチューンとアミューモーネー』(1749年以降)

    Neptune et Amymone, de la tenture des Amours des dieux , OAR 455

    ブーシェの下絵『イタリアの休日:音楽』(1765年頃)ボーヴェのタペストリー製作所( Manufacture de Beauvais )

    Feuille d’écran de la tenture des Fêtes italiennes : la Musique , OA 7311 BIS

    オービュッソンのタペストリー( Tapisserie d’Aubusson )、ブーシェによる下絵『中国のタペストリー:お茶』(1750年 – 1800年)

    Le thé, de la Tenture Chinoise , OAR 19

    オービュッソンのタペストリー( Tapisserie d’Aubusson )、ブーシェによる下絵『中国のタペストリー:鳥小屋』

    La Volière, de la Tenture Chinoise , OAR 33 A

    メトロポリタン美術館の収蔵品

    『アミューモーネーを救う水またはネプチューン』( Allegory of Water (Neptune Rescuing Amymone) )  ウール、絹 1700年代後半 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵
    『アミューモーネーを救う水またはネプチューン』( Allegory of Water (Neptune Rescuing Amymone) )  ウール、絹 1700年代後半 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵

    引用元:『アミューモーネーを救う水またはネプチューン』

    メトロポリタン美術館蔵Allegory of Water (Neptune Rescuing Amymone)

    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』( Vertumnus and Pomona from a set of Scenes from Operas ) 1758年-1576年 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵
    『ウェルトゥムヌスとポーモーナ』( Vertumnus and Pomona from a set of Scenes from Operas ) 1758年-1576年 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵

    引用元:『ウェルトゥムヌスとポモナ』

    メトロポリタン美術館蔵Vertumnus and Pomona from a set of Scenes from Operas

    『「神々の愛」から、「アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス」』( Vulcan Presenting Arms for Aeneas to Venus from the set The Loves of the Gods ) ウール、絹 1749年頃-1771年頃 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵
    『「神々の愛」から、「アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス」』( Vulcan Presenting Arms for Aeneas to Venus from the set The Loves of the Gods ) ウール、絹 1749年頃-1771年頃 フランソワ・ブーシェ メトロポリタン美術館蔵

    引用元:『「神々の愛」から、「アイネイアスのために造った武器をウェヌスへ贈るウルカヌス」』

    メトロポリタン美術館Vulcan Presenting Arms for Aeneas to Venus from the set The Loves of the Gods

    油彩以外にもデッサンなど、ルーヴル美術館にはブーシェの作品がたくさん収められています。

    その多くが明るくて甘やかな世界、何の憂いもない、幸福感に満ちた世界です。

    ブーシェは一日に10時間働くなど精力的に活動し、その生涯に一万点も描いたそうです。すごいですね。

    タペストリー、一枚でいいから欲しいんですが…私の部屋じゃ確実に合わないな…。

    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!
    目次