家事そっちのけで本に夢中になっている女性。彼女が読んでいるのは『絵本太閤記』でした。
1797年から1802年にかけて発刊された有名軍記物

引用元:「教訓親の目鑑・理口者」
ビルバオ美術館La sabelotodo, c. 1802-1803
この版画を所有しているビルバオ美術館では、英語のタイトルを「The Know-It-All」(知ったかぶり)としています。解説によると、
「この版画は、家事をおろそかにして小説に没頭する怠け者の中年既婚女性を描いている」
とあります。(ビルバオ美術館La sabelotodo, c. 1802-1803)
女性が夢中になっているのは、『絵本太閤記』(えほん たいこうき)。
戯作者・武内確斎と、挿絵師・岡田玉山がタッグを組んだベストセラーです。
豊臣秀吉の生涯を描いた講談をもとにしたというこの読本(よみほん)、『絵本太閤記』は、寛政9年(1797年)に初編刊行され、享和2年(1802年)までに7編84冊が刊行されています。

引用元:絵本太閤記(名古屋刀剣ワールド) Kyu3a CC-BY-SA-4.0
当時、読本は教養人向けの娯楽小説でした。
ということは、ここに描かれている美人は、実は高い教養の持ち主であるということ。
読んでいるジャンルは軽いロマンス小説などではなく、硬派な軍記物なのです。
読んでいるは岡田玉山著「絵本太閤記」。一般の人にはなかなか読めない読本を読むから理口者。
花咲一男(監修).『大江戸ものしり図鑑』. 主婦と生活社. pp.334-335.
本来、「利口者」と書かれなくてはならない「りこうもの」が、この絵では「理口者」となっています。
賢すぎて理屈っぽいから?、など、その真意を想像してしまいます。
岩下書店様のサイトによると、彼女が読んでいるのは「七篇巻三」とのことです。

引用元:「教訓親の目鑑・理口者」
江戸の庶民が日常的に書物に親しんでいる図。
高い識字率が、日本の文化、教養を底上げしています。
本編は【HANNAの書庫】で
英語版
