19世紀英国の画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの『A Young Saint』(聖女ジョウン)です。
天を仰ぐ瞳が綺麗ですね。

『聖女ジョウン』( A Young Saint ) ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 個人蔵

引用元:A Young Saint
英国の画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの『A Young Saint』です。
制作年代ははっきりしないようです。
この絵のタイトルは『A Young Saint』(若い聖人)ですが、『St. Joan』となっているものもあります。
『St. Joan』(聖女ジョウン)、それは「ジャンヌ・ダルク」のこと。
15世紀の百年戦争で活躍した後火刑に処されたジャンヌは、長らく「魔女」「異端」とされていましたが、20世紀になって列聖されました。
アイルランドの作家であり批評家のバーナード・ショウは『聖女ジョウン』を発表。
人間ジャンヌ・ダルクを描き、1925年にノーベル文学賞を受賞しています。
ジャンヌ・ダルクが見直されるようになったのは、18世紀後半に起きたフランス革命を経て、フランスが近代国家になる19世紀に入ってからでした。
19世紀末にはその人気が高まります。
研究書が出版され、多くの画家が様々な姿のジャンヌを描きました。
フランスの画家だけでなく、ジャンヌ・ダルクにとって敵国だったイングランドの画家(ウォーターハウスやミレー、ロセッティなど)も好んで描いているのが、私には少し不思議な感じがします。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス( John William Waterhouse, 1849年4月6日-1917年2月10日)

引用元:ウォーターハウス
ウォーターハウスはイタリアのローマで生まれ、英国で活躍しました。
ニンフやオフィーリア、シャロットの乙女など、美しい女性像で有名です。
ウォーターハウスの世界に浸れる書籍です。衣裳、ドラマ性、主題、好きな人は好きだと思います。もしお持ちでなければ是非。
ジョン・エヴァレット・ミレーの『ジャンヌ・ダルク』(1865年)

引用元:『ジャンヌ・ダルク』
天を仰ぎ見る『聖女ジョウン』の瞳は、ラファエル前派の中心的人物でもあったジョン・エヴァレット・ミレー( Sir John Everett Millais, 1st Baronet, 1829年6月8日-1896年8月13日)の絵画を思い起こさせます。
ミレーの描く、戦いに赴く前のジャンヌ。
ウォーターハウスの『聖女ジョウン』と同じようにひたむきな瞳と、甲冑の光沢が美しいですね。
ミレーはテート・ブリテンの超有名絵画『オフィーリア』の作者です。
その悲しくも美しい死の場面は、後に続く画家たちに大きな影響を与えました。

引用元:『オフィーリア』
ウォーターハウスも『オフィーリア』を数点制作しています。

引用元:『オフィーリア』

引用元:『シャロットの乙女』
ミレーの『オフィーリア』を観た約30年後、ウォーターハウスが描いた『シャロットの乙女』。
ここにもミレーの『オフィーリア』との、「乙女」「水(川)」「死」といった共通点が見て取れます。
別記事「19世紀の画家が描くジャンヌ・ダルクの甲冑と1429年時の武具の値段」では、甲冑姿のジャンヌ・ダルクを載せました。
そちらの記事では取り上げませんでしたが、本作のウォーターハウスのジャンヌの瞳がとても印象的で、忘れられない絵画のひとつです。
ミレー他、ジャンヌ・ダルクの絵画が掲載されている書籍『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』。どの画家もジャンヌを美しく凛凛しい少女に描いています。
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