パン・デ・ローの「ロー」

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ポルトガルの伝統菓子、パン・デ・ロー。諸説あるという「ロー」の由来について。

パン・デ・ロー (Pão-de-ló)
パン・デ・ロー (Pão-de-ló)

引用元:Pão-de-ló Adriao CC-BY-SA-3.0

目次

Pão-de-ló / パン・デ・ロー

ポルトガルの伝統菓子、パン・デ・ロー。

綴りは「Pão de ló」。ポルトガルでは「パォン・デ・ロー」と呼ばれるそうです。

『万国お菓子物語 世界をめぐる101話』では、「ボーロ」のなかでこの語が登場しています。

 現在ポルトガルでは、スポンジケーキをパン・デ・ロ pão de ló と呼んでいるが、隣国スペインから伝わった当初はカスティーリャ・ボーロ castilla bolo と呼んでいたらしい。ボーロとはお菓子、つまり「カスティーリャで生まれたお菓子」の意味である。

 これがそのまま日本に伝えられた。ところがその後、どうしたわけか上と下とが別れて歩き出してしまう。上の方はカステーラの名でスポンジケーキそのままに、下の方、つまりボーロはテンパンの上に少量のタネを流す、いわゆる落とし焼きの手法で小さな形に焼かれていった。

𠮷田菊次郎(著). 『万国お菓子物語 世界をめぐる101話』. 2021-12-7. 講談社学術文庫. p.20.

日本に入って来たときは「カスティーリャ・ボーロ」の名だったんですね。

現代日本においては「カステラ」と「ボーロ」は分かれており、別モノに見えます。

パン・デ・ローについて、福砂屋様(長崎カステラ公式サイト)の「カステラ文化誌」から引用させていただきます。

 パン・デ・ローも、スペインのビスコチョと同様に、昔は主に修道院の尼僧によって作られていたお菓子でした。16世紀から17世紀頃には砂糖や卵が貴重品であったので、貴族や宗教関係者など裕福な人々が口にする贅沢なお菓子で、一般の人々や復活祭やクリスマス、結婚式などのハレの日だけに食べることができたようです。

ビスコチョと同様ハレの日に食べるお菓子(カステラ文化誌)

16世紀、スペインやポルトガルから、宣教師・貿易商人たちが日本にやってきます。

種子島に漂着したポルトガル人によって鉄砲が伝えられ、1549年、イエズス会のフランシスコ・ザビエルが、キリスト教布教のため、鹿児島に上陸。

日本はポルトガルと貿易を開始します。(南蛮貿易)

ポルトガル商人たちは、絹織物、鉄砲、火薬、ガラス、時計などを日本に持ち込み、お菓子のレシピも伝えました。

日本は中国産の生糸を輸入。

銀、硫黄、漆器、刀剣などを輸出しています。

Wikipedia の「Pão-de-ló」では、このように書かれています。

Os primeiros portugueses que chegaram ao Japão no século XVI levaram consigo a receita do pão de ló conhecido por pão de Castela que se tornou num dos doces mais típicos do Japão, o Kasutera.

Wikipedia:Pão de ló

(Google翻訳:16世紀に日本に渡来した最初のポルトガル人は、カスティーリャパンとして知られるスポンジケーキのレシピを持ち込み、それが日本で最も代表的なお菓子の一つであるカステラとなった。)

下の画像は「Café & Meal MUJI」(2012)で販売されていた、パン・デ・ロー。

「Café & Meal MUJI」(2012)の パン・デ・ロー(筆者撮影)
「Café & Meal MUJI」(2012)の パン・デ・ロー(筆者撮影)

通常は、少量の小麦粉と卵と砂糖で作られるため、大量の卵を必要とするのだそうですが、

「Café & Meal MUJIのパンデローはほとんど粉を使わず、卵と砂糖で焼き上げた半生の一歩手前のしっとりとした焼き上がりにこだわりました。絶妙なしっとり感を残すため、普通のスポンジケーキのようにかっちりとした形にはしていません。飾りがなく、見た目はとても地味ですが、一度食べるとやみつきになる美味しさです。」(無印良品 Café & Meal MUJI のHP)

はい。書かれていたとおり、病みつきになるしっとり感、美味しさでした。

17世紀のレンブラントも日本の品をコレクション

Livro de Cozinha da Infanta Dona Maria / 「王女ドナ・マリアの料理書」

パン・デ・ローは、16世紀半ばの料理本「王女ドナ・マリアの料理書」に登場しています。

 パン・デ・ローが最初に登場する本は、16世紀中期に書かれた「王女ドナ・マリアの料理書」、続いて1729年の「サンタクララ修道院の様々なお菓子と料理のレシピ集」やポルトガル王室の宮廷料理人、ルーカス・リゴーの「新料理書」などにも、その製法が紹介されています。

カステラ文化誌
Portrait of Maria of Portugal, Duchess of Parma (1538-1577)., Antonis Mor / Antonio Moro, Museu Nacional de Arte Antiga, マリア・デ・ポルトゥガル (Maria de Portugal, 1538 - 1577)  1565年頃 アントニス・モル 国立古美術館蔵
マリア・デ・ポルトゥガル (Maria de Portugal, 1538 – 1577)  1565年頃 アントニス・モル 国立古美術館蔵

引用元:Portrait of Maria of Portugal, Duchess of Parma (1538-1577)

国立古美術館

ポルトガル王女ドナ・マリアは、スペイン王フェリペ2世の意向で、1565年にアレッサンドロ・ファルネーゼと結婚。

マリアはその輿入れの際、ポルトガル最古の料理本と考えられている写本「料理書」 (Livro de Cozinha) を携えてきたと言われています。

「パオ・デ・ロ」という名称で最初に知られているパオ・デ・ロの記述は、16世紀半ばのポルトガル王女ドン・マリアの写本に見られる。王女はパルマ公爵夫人になった際にこれらのレシピをイタリアに持ち込んだ。1895年、ナポリのヴィットリオ・エマヌエーレ3世国立図書館で原本が発見され、1967年に『王女ドン・マリアの料理本』として出版された。[ 3 ]現在のパオ・デ・ロとは異なり、小麦粉を使わず、挽いたアーモンドだけで作られた濃厚なプディングだった。[ 4 ](Google翻訳)

Wikipedia:Pão de ló

レパントの海戦の名将 アレッサンドロ・ファルネーゼの記事は本館で

パルマ公妃マルゲリータ・ダウストリアの肖像(アントニス・モル作)

フェリペ2世の妃たち エリザベートとアナ

夫妻の次男、枢機卿オドアルド・ファルネーゼはこちらに登場【hannaと美術館】

現れた聖母に驚く聖ルカ『聖ルカと聖カタリナの聖母』(カラッチ作)

「ロー(絽)のパン」説

とても興味深いのが、パン・デ・ローの「ロー」の由来です。

この名前の由来として有力視されているのは「ロー(絽)のパン」という説。ロー(Lo)の語源は、中国の絹織物の一種「絽」のポルトガル綴りで、そのふわふわとした焼き上がりが、絹織物の薄い布地に、似ているところから名付けられたといわれています。

カステラの原型といわれるお菓子 パン・デ・ロー(カステラ文化誌)

パン・デ・ロー(Wikipedia)にも、「「ロー」はポルトガル語にはなくシルクロードでつたえられた絹の「絽」とも考えれ、語源については諸説ある。」とあります。

その諸説については英語版の「語源」にありましたので、記載しておきます。

パオ・デ・ローという名前の由来については、さまざまな説があり、中には議論の余地のあるものもあります。「パオ」は「パン」の一般的な定義ですが、[ 1 ]「ロー」についてはいくつかの説があります。[ 2 ] 1つは、古フランス語のlof [ 3 ]に由来し、「帆が張られている船の風下側」または「チーズクロスのような薄い布」を意味するという説です。[ 4 ]別の説では、羊毛を意味するポルトガル語のlã [ 5 ]に由来するという説もあります。[ 6 ]著者のマリア・デ・ルルド・モデストは、フェルゲイラスのマガリデに住む「ロー」という姓の菓子職人の夫にちなんで名付けられたと示唆しています。[ 7 ]さらに別の説では、彼は「ロット」という姓のドイツ人だったとされています。[ 8 ](Google翻訳)

Wikipedia:Pão de Ló

「絽」説が、諸説あるなかのひとつとしても、大航海時代にシルクロードと、中学校で歴史用語(?)として覚えたものが、こんなかたちで繋がるなんて、わくわくしませんか?

紙の型で焼かれるパン・デ・ロー・デ・オバール (Pão-de-Ló de Ovar)
紙の型で焼かれるパン・デ・ロー・デ・オバール (Pão-de-Ló de Ovar)

引用元:Pão-de-Ló de Ovar No Ponto CC-BY-3.0 “Pão-de-ló, Ovar” (0m 3s)

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主な参考図書
  • 𠮷田菊次郎(著). 『万国お菓子物語 世界をめぐる101話』. 2021-12-7. 講談社学術文庫.
  • 金七紀男(監修). 『一冊でわかる ポルトガル史』. 2025-2-28. 河出書房新社.
  • 八百啓介(編). 九州外来食文化研究会. 『外来食文化と日本人』. 2020-9-30. 弦書房.

こちらはパンの話

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