桃は美味しく、しかも邪気をも遠ざける。

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美味しいだけじゃない!桃
桃
桃って美味しいだけではなく、邪気にも効くようなんです。
『西遊記』では孫悟空が西王母の桃を食べていましたね。(美味しそうでした。)
桃は中華料理で使われるお皿にもよく描かれていますし、桃をかたどったお饅頭やお菓子もありますよね。
桃は、長寿を象徴する果実とされてきた。それは神仙女神の西王母の蟠桃が、三千年に一度実を結び、これを食べると長生が得られるという伝説によっている。
(『シルクロード 華麗なる植物文様の世界』 山川出版社 p.81.)


粉彩八桃文盤 中国 景徳鎮 清・雍正銘 松岡美術館蔵 Daderot CC-Zero
粉彩八桃文盤(裏) 中国 景徳鎮 清・雍正銘 松岡美術館蔵 Daderot CC-Zero
皿の下方に描かれた枝が、まるで裏面(上方)にまで伸びているようですね。 繋がっているみたいです。
『シルクロード 華麗なる植物文様の世界』に、この松岡美術館所蔵の「粉彩八桃文盤 一対 中国 景徳鎮窯 清・雍正銘 松岡美術館蔵 各径20.5」の解説があります。
清時代の雍正官窯でつくられた気品漂う粉彩の皿一対である。高台脇から桃の幹がうつわの表に伸び、たわわに実った桃と花を丁寧な筆使いで写実的に描く。またうつわの表と裏には、合わせて五匹の蝙蝠を描く。桃は長寿の象徴であり、蝙蝠は幸福を寓意する。白磁の肌も美しく、雍正粉彩の精品である。
(『シルクロード 華麗なる植物文様の世界』 山川出版社)
桃柄は飾っても可愛いですね。

邪気を遠ざける
『ものと人間の文化史157 桃』(政大学出版局)の「薬用とされる桃の部位」では、
今からはるか6000年ものむかしの人びとが、中国からはるばるわが国へと海を渡って来たとき桃をもっていた理由は、桃の実の食糧としての価値と、煩わしい病を癒す薬として使えるという大きな二つの利用面を持っていたからだと考えられる。
(『ものと人間の文化史157 桃』 p.197.)
中国の思想では桃は邪気(病気などを起こす悪い気、悪気、もののけ)つまり邪気(たたりをする邪悪な鬼)を払うとされており、人は邪気にとりつかれると病気になると思われていた。桃の長い歴史をもつ中国では、思想上からも呪術として桃が用いられていたが、実際の医療に用いる薬として、漢方薬の薬種としても重要なものとされてきた。なお、古代では呪術もまた医療行為の一つであった。『広辞苑』によれば呪術とは、自然をはるかに超えた存在や神秘的な力にはたらきかけて、いろいろな目的を達成しようとする意図的な行為だとされている。
(『ものと人間の文化史157 桃』 p.197P197)
日本では『桃太郎』が桃から生まれていますよね。邪気を払う、善いもののイメージなのでしょうか。

感動の桃太郎誕生シーン(愛知県の桃太郎神社) Nao Iizuka CC-BY-2.0
一度は行ってみたいです。 元気が出そうですよね( ̄▽ ̄)。
『古事記』での桃
『古事記』でも桃が登場。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、亡くなった妻、伊邪那美(いざなみ)神に逢いに、黄泉(よみの)国に向かいます。
現世に還るため、伊邪那美神は黄泉神(よもつかみ)のところへ相談に行くのですが、その際、伊邪那岐命は「決して伊邪那美神の姿を見てはいけない」と言われます。
それにも関わらず、伊邪那岐命は伊邪那美神の姿を見てしまいました。
腐敗し、蛆にたかられた彼女の姿に恐れをなして逃げる彼を、黄泉醜女(よもつしこめ)が追いかけます。
『古事記』で、伊邪那岐命が黄泉の国から逃げ帰るとき、追いかけてくる黄泉醜女にエビカズラとタケノコを投げ与え、最後に桃の実で黄泉の国の軍勢を追い払ったことも、中国の思想である桃の威力を示す呪術であったといえよう。なにしろ伊邪那岐命は、桃の実で黄泉の国へと拉致されずに、無事にこの世界へと帰還することができたのだから、医療というにはおおげさだが、邪悪なものから桃の持つ呪力によって逃げることのできた一種の救済措置であったことはたしかである。
(『ものと人間の文化史157 桃』)
そして、桃が薬用とされる部分として、その果実を挙げ、
果実も、果肉の部分(桃子という)と種子の中にある仁(桃仁という)の部分が使われる。 花(桃花という)、葉っぱ(桃葉という)、若い枝(桃枝という)、根の皮(桃根という)、樹皮から分泌する樹脂(桃膠という)が薬用となる。 いいかえれば、幹の部分が用いられないだけで、あとは全部薬となる。幹の部分は呪術の桃府として、邪悪な鬼を追い払うことに使われているので、これを含めれば桃のすべてが薬となる。
(『ものと人間の文化史157 桃』)
美味しいだけじゃなく、桃ってすごいんですね。
弥生時代の遺跡から桃の種子が発見されていて、当時の人々も食用にしていたそうですが、桃の実はあまり美味しいものではなかったそうです。
でも、それはそれで、どんなんだか興味あります。

- 『シルクロード 華麗なる植物文様の世界』 山川出版社
- 『ものと人間の文化史157 桃』 有岡利幸(著) 法政大学出版局
コメント
コメント一覧 (10件)
真ちゃん (id:shashinchan)様
コメント有難うございました。返信遅くなってしまい申し訳ありません。
現在、以前にお話ししたブログ引っ越しのため準備中です。
引っ越し前にまたお話しできて良かったです。
外国でも似たような神話があったかと思いますが、古事記では桃を投げている…単純に、「そんなに昔から桃は身近にあったのか」と思いました。梨も柿も良さげですが(笑)。
有難うございました。
引っ越し前にはお伺いします。またよろしくお願い致します。
スイマー (id:jun_111230)様
返信遅くなって申し訳ありません。
絵皿、素敵ですよね。
食べる方がもっと良いですが。
枯れてしまったと仰る桃の木、残念ですね。日当たりってやっぱり大事なのでしょうね。
売っているところしか見たことがないので、ぜひ桃狩りなど行ってみたいと思っています。
年内にブログ引っ越しを予定しており、現在急いで準備中です。
引っ越し前に改めてご挨拶にお伺いします。
有難うございました。
しゅん (id:motorcycle_station)様
美味しい桃、案外偉かったというハナシでした(笑)。
食べても良し、投げても?良し(・∀・)
中華風のお皿を見るとつい桃を探してしまいます。
読んで下さって有難うございました。
森下礼 (id:iirei)様
秋田でしたか?「龍蟠」?
飲みたいかですって?
飲みたいに決まってるでしょー!!!!
happy-ok3様
返信が遅くなって申し訳ありません。
いつも有難うございます。
桃の葉(でしたっけ?)ローション、ありましたよね。子どもの頃使ってました。
なんだか効きそうな気がしますね。
引用元のこと、気に留めてくださって有難うございます。
ずっと前にいくつかの事を探していた時、幾人かの方が記事にしておられるのを見つけたのですが、その方たちがまるでご自分の意見・考えのように書いておられたのが気になりました。
その後何とか自力で書籍を探し当てたのですが、「出典を書いておいてくれたらいいのに」と思ったことと、私は専門家ではないので自分の意見を述べるにしても、それには根拠がないといけないのではないか、それはどの書籍によるものなのか明記しなければいけないのではと思いまして。
気付いてくださって、こちらこそ感謝致します。
ハンナさん、こんばんは。
コメント失礼いたします。
ご無沙汰しております、ご挨拶が遅くなり申しわけありません。
桃のお話、とても面白いですね。
美味しい上に、邪気を払うような、薬のような効果もあると思われてきたのですね。
実際、あの瑞々しさや、質の高い甘みは、他の果物とは一線を画すといってもいいかもしれません(他の果物も大好きですが)
あと、お皿の絵が素晴らしいですね。
蝙蝠に幸福の意味があるとは知りませんでした。
広島県福山市の市章ですよね(笑)
こんにちは!
桃皿素敵ですね!
我が家にも以前母が桃の木植えていましたが、2,3回収穫しただけでかれてしまいました。
家の裏側の陰になるところに植えてあったので、日当たりと虫のせいで枯れたのだと思います。
今は、野菜も果物も旬のとき食べるのが一番栄養的にもよいのでしょうね。
こんばんはー。
桃って、深いんですね。(^^)
私はただ、すごくおいしい果物程度しか認識がありませんでした。(^^;
今年は味わい方が変わりそうです。(^-^)/
id:syukakuda さんは、庭に多種類の果樹を植えて、収穫を楽しんでいらっしゃいますが、「蟠桃」も栽培されていました。「蟠」とは「ひしゃげた」という意味らしく、少々不格好な実らしいですよ。私などは「蟠龍」という言葉を思い浮かべます。「飛躍する準備として、龍がとぐろを巻く」、と言った意味です。また、そのような龍。日本酒の銘柄にもあったようです。ハンナさん、飲みたいでしょ?
ハンナさま、こんにちは。
>「桃仁は「とうにん」とも読み、消炎・通経作用があるそうです。」
桃はいいようですね。
詳しく有難うございます。
桃のローションと言うのが一時流行り?ましたね。
弥生時代も、桃は、食べられていたのですね。
今は、果物も品種改良が続いています。
食べやすくはなっていますが、元々の効用的には、どんな風なのでしょうね。(#^.^#)
いつも、博学から色んな事を詳しく教えて下さって感謝します。
そして、いつも引用元を、尊んで記されていること、素晴らしいです。
ここに書かれている事が、さらに、生き生きして行かれますね。
今日も有難うございます。