訳がとっても難解な『古代エジプト神話の図象学』に出ていたメナト(円盤部)を掲載しました。
猫頭の女神バステトの「持ち物」シストルム
シストルムにもタイプがある
豊穣の女神バステト様はたいてい、ガラガラのような古代の楽器・シストルム(sistrum)をお持ちです。
引用元:バステト像 Kotofeij K. Bajun CC-BY-3.0
上ののバステト様が右手に持っているものですね。
『エジプト神話の図象学』(河出書房新社)ではこのシストルムを、形によって「アーチ型」と「門型」というように“便宜上”呼び分けています。
引用元:アーチ型シストルム Walters Art Museum CC-BY-SA-3.0
引用元:門型シストルム Rama CC-BY-SA-2.0-FR
シストルムと一緒に使う「メナト」
引用元:メナト Keith Schengili-Roberts CC-BY-SA–3.0-migrated CC-BY-SA-2.5,2.0,1.0
『エジプト神話の図象学』(p.112.)で挙げられている、メナト( menat )の円盤部です。
メナトとは主にハトホル神の持ち物で、儀式の時は輪の中に手を入れて鳴らして使われたようです。
引用元:ハトホル像 Rama CC-BY-SA-2.0-FR
民間の墓では、メナトはしばしば副葬品の一部をなしている。それは青銅あるいは上薬のかかったガラス質でつくられている。神殿の中のものは貴金属製であった。首飾りを構成する部分とみなされるのは、真珠ようのものをつらねたおびただしい糸でできた厚い環状飾りで、それらの糸が実際には、女性の誘惑者の髪をなすのである。
クリスチアヌ・デローシュ=ノブルクール(著). 小宮正弘(訳). 『エジプト神話の図象学』. 河出書房新社 pp.100-103.
上のメナトの画像では、向かって右に立つホルスが左手にメナトを持っています。
輪っかのようなものですね。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』(新書館)ではこのような記述があります。
シストルムを鳴らすときはだいたいいつも、メニトと呼ばれたビーズのネックレスをいっしょにガチャガチャ鳴らした。女性の楽士が、空いたほうの手を使って鳴らしたのである。
ティルディスレイ(著). 細川晶(訳). 『イシスの娘 古代エジプトの女たち』. 新書館. p.154.
向かって左側に座るライオン頭の女神セクメトは、「コブラの姿をしたウアジェト」と「ハゲワシの姿をしたネクベト」の間に位置し、その手には「パピルス型の笏」を持っています。
セクメトはバステトやハトホルといった女神と同一視されることもよくあります。
引用元:セクメトの像 Captmondo CC-BY-SA-3.0
神話では、ラーの命令を受けたセクメトは人類殲滅を実行しようしますが、人間の血だと思って飲んだビールで酩酊してしまい、おかげで人類は全滅をまぬがれた…という武勇伝エピソードを持っています。
このメナトの中のホルスは『エジプト神話の図象学』では「イヒ」となっています。
彼は、右手に持ったシストルムを、ぐいっとセクメトに突き出しています。
彼は日の光のほうに出ていきたいというその熱望を示すために、彼女のほうにシストルムを突き出している。
クリスチアヌ・デローシュ=ノブルクール(著). 小宮正弘(訳). 『エジプト神話の図象学』. 河出書房新社 pp.100-103.
これがその一部をなしている祈願のメナトは、大臣ホル=サ=イシスの名義になっている。このメナトは彼に復活を保証するためにその墓の内に置かれたのだ。
クリスチアヌ・デローシュ=ノブルクール(著). 小宮正弘(訳). 『エジプト神話の図象学』. 河出書房新社 pp.100-103.
…わかったような、今いちわからないような。
図もいっぱいあって面白そうな本なのに、訳がわかりにくかったです…。
私の今いち残念な頭脳では理解できませんでした。
ちょっと悲しいです。
≪偉大なる魔術道具≫(ウレト・ヘカウ)
ルクソールの、王妃ネフェルタリの図の解説に(p.100.)、「彼女は神の再現に不可欠の三つの用具を持っている、メナトと二つのシストルムである。」とあります。
これによるとシストルムは「(王の)再生を励ます」のだそうです。
輝くばかりの女性の手に、典礼画のつくり手は、しばしば、〈遠方の女神〉のもっとも典型的な用具のうちの二つ、シストルム(二個の場合もある)とメナトを描き入れた。なおこれらは主に、女性祭司、女王、あるいはまた平民家族の女主人や娘によって、彼女たちが葬祭にかかわるときに用いられる。彼女たちは礼拝堂の壁面に姿をみせている、しきたりを遂行しつつ。
クリスチアヌ・デローシュ=ノブルクール(著). 小宮正弘(訳). 『エジプト神話の図象学』. 河出書房新社 p.98.
神殿の壁面には、しばしばハトホルが、時としてイシスと、あるいは女王とさえ混同されて、シストルムを奏しているのがみられる。シストルムは女神の行為を呼び起こすものと考えられ、また、ツタンカーメン墓の金箔貼りの小さなナオス[小礼拝堂あるいは厨子]が示しているのと同様、神殿壁面に按配されているシストルムとメナトの一揃いは、《偉大なる魔術道具》(ウレト・ヘカウ)と呼ばれる。
(〈遠方の女神〉はバステトとかセクメトのことだったと思うのですが、書いてあった書籍が思い出せません。
わかりましたらまた追記しますが、ご存知の方がいらしたら、ぜひお教えください。よろしくお願い致します)
とても有益な情報が載っていると思うのに、読むのが難しくて、理解するのが難しい…。 消化不良な気分です。
もしかしたら、原語または英語で方がいっそわかり易いかも?
- 『エジプト神話の図象学』 クリスチアヌ・デローシュ=ノブルクール(著) 小宮正弘(訳) 河出書房新社
- ティルディスレイ(著). 細川晶(訳). 2002-8-5. 『イシスの娘 古代エジプトの女たち』. 新書館
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