「女王陛下のお抱えの海賊」とドレーク・ジュエルとトライフル

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今回は目を楽しませる、通称ドレーク・ジュエルという宝石と、海賊・航海由来のお菓子のお話です。

アルマダ・ポートレート 1588年頃 ウォバーン・アビー
アルマダ・ポートレート 1588年頃 ウォバーン・アビー

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目次

アルマダの海戦 1588年

『アルマダ・ポートレート』( Armada Portrait ) 1588年頃

アルマダ・ポートレート 1588年頃 ウォバーン・アビー
アルマダ・ポートレート 1588年頃 ウォバーン・アビー

引用元:アルマダ・ポートレート

『アルマダ・ポートレート』と呼ばれる、エリザベス1世の肖像画。

1588年夏のアルマダの海戦の様子が背後に描かれています。

「スペイン無敵艦隊」のことを英語では「Spanish Armada」といい、イングランドと、イングランド侵攻を目論むスペインとの間で行われた海戦を「アルマダの海戦」といいます。

この戦いで「女王陛下のお抱えの海賊」フランシス・ドレークが活躍し、イングランドがスペインに勝利しました。

サー・フランシス・ドレーク( Sir Francis Drake, 1543年頃-1596年1月28日)

海賊フランシス・ドレークは、

大西洋上でスペインの財宝を積んだ船を襲って奪うことを繰り返していました。彼は一五七七~八〇年にスペイン植民地から運ばれる金銀財宝をさんざん略奪しましたが、女王は目をつむってくれました。

池上俊一(著).2017.『王様でたどるイギリス史』.岩波ジュニア新書. 岩波書店. p.92.

エリザベス1世はドレークの海賊行為を見て見ぬ振りをししっかり海賊の上前をハネていたのです。

その後ドレークは、イングランド人として初めて世界一周を達成しました。

ドレークの出資者だったエリザベス1世は多額の配当金を受け取り、ドレークはサーの称号を贈られました。

ドレーク・ジュエルを着けたフランシス・ドレークの肖像 1591年 国立海事博物館
ドレーク・ジュエルを着けたフランシス・ドレークの肖像 1591年 国立海事博物館

引用元:ドレイク・ジュエルを着けたフランシス・ドレークの肖像

ドレーク・ジュエル( Drake Juwel )

ドレーク卿が腰に提げているジュエリーをご覧ください。

ドレーク・ジュエル
ドレーク・ジュエル

引用元:ドレーク・ジュエル

下は現在ヴィクトリア&アルバート美術館にある本物の写真です。

ドレーク・ジュエル ヴィクトリア&アルバート美術館蔵
ドレーク・ジュエル ヴィクトリア&アルバート美術館蔵

引用元:ドレーク・ジュエル(写真) Aiwok CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0

気品のある黒人男性と白人女性の横顔を彫刻したサードニクスのカメオをはめ込む。裏蓋を開くと、1588年にヒリアードが描いた女王のミニアチュールが現れる。金の台座には複雑な紐帯ちゅうたいの装飾。紐帯模様にはルビーとダイヤモンドをはめ込み、多色のエナメルで華麗に彩色されている。エリザベス女王がフランシス・ドレイク卿に贈ったもの。贈られたのはスペインの無敵艦隊を打ち破った直後とみられ、1591年に描かれた彼の肖像画で着用している(高さ11.7㎝)。

クレア・フィリップス(著). 山口遼(監修). 旦亜祐子(訳). 2016-11-15. 『V&Aの名品でみるヨーロッパの宝飾芸術』. 東京美術. p.41.
ニコラス・ヒリアードの自画像、ミニアチュール 1577年頃 ヴィクトリア&アルバート美術館蔵
ニコラス・ヒリアードの自画像、ミニアチュール 1577年頃 ヴィクトリア&アルバート美術館蔵

引用元:ニコラス・ヒリアードの自画像、ミニアチュール

ニコラス・ヒリアード(Nicholas Hilliard, 1547年頃-1619年)は、エリザベス女王の細密肖像画(ミニアチュール、またはミニアテュア)などを手掛けました。

トライフル

甘いお菓子の食べすぎか、エリザベス女王の歯は黒かったと言います。

お菓子好き、英国ファンの方なら、トライフルという甘いデザートをよくご存知でしょう。

トライフル
トライフル

引用元:トライフルの例 Dlublink CC-BY-3.0

トライフルは、イギリスの海賊が活躍していた時代にさかのぼる歴史を持つ。ご存知のように、エリザベス1世はそうした海賊たちを大いに利用していた。その時代、すでに海のビスケットと呼ばれるものが存在していた。それは鉛のように重くて固い焼き菓子で、何ヵ月もの長い航海に出る船乗りたちの基本的な食糧だった。一説によると、コック長たちが船乗りの食事を改善しようと、このビスケットを熱いラタフィア酒[甘い果実酒]に浸して柔らかくし、手に入ればカスタードクリームやフレッシュチーズ(雌牛や雌羊を船に乗せていたのである)やジャムでおおったのである。

マグロンヌ・トゥーサン=サマ(著). 吉田春美(訳). 『お菓子の歴史』. 河出書房新社. p.390.

この、「鉛のように重くて」かったい焼き菓子が、1850年以降にはステキな「高級デザート」になっていきます。

『Eyewitness PIRATE 』(Dorling Kindersley) には、上記の「海のビスケット」(Sea biscuit)が載っています。

そこでは「HARD TACK」として写真も紹介されているのですが、

HARD TACK
Long-lasting ship’s biscuits were staple food for most mariners.They were Known as “hard tack” because they were so tough.

要は、長い航海に耐えうる、かったい焼きものでしょうかね。

下の画像は19世紀の再現ものですが、固そうな気配は十分伝わって来ます。戦闘糧食ですね。

19世紀南北戦争頃のもの(再現)
19世紀南北戦争頃のもの(再現)

引用元:ハードタックの例

ビスケット

ドレークらの活躍で、イングランドがスペインに勝利したアルマダの海戦。

16世紀、英国をわが手にと、ドーバー海峡に攻め入った無敵艦隊は、英国軍に惨敗を期します。これは兵糧の差だったかもしれません。イギリスの力になったのはビスケット。といっても甘いビスケットでなく、乾パンのようなものでした。この勝利で英国は勢いを増し、世界の海へと乗り出していきます。その航海中に食べられていたのがプディングでした。いわゆるプリンとはまったく別物で、要は船内のパンくずなどの残り物やあり合わせの材料を混ぜ合わせ、ナプキンで包んで蒸し焼きにしたものです。食べてみたら意外なおいしさに家庭にも広まり、クリスマス・プディングなどに姿を変えていきました。私たちが親しんでいるプディングは、イギリス生まれの食べ物なのです。

『料理通信』.2007年2月. p.28.
クリスマス・プディング
クリスマス・プディング

引用元:クリスマス・プディング

アルマダの海戦はその作戦、活躍した人物、敵将など、興味深い事柄が多いのですが、世界史本を見ても、なかなか「ドレーク・ジュエル」や「トライフル」の話は一緒に出てきません。

ですので、今回は目が楽しい宝石とお菓子に目を向けてみました(・∀・)。

主な参考文献
  • 池上俊一(著).2017.『王様でたどるイギリス史』.岩波ジュニア新書.岩波書店.
  • クレア・フィリップス(著). 山口遼(監修). 旦亜祐子(訳). 2016-11-15. 『V&Aの名品でみるヨーロッパの宝飾芸術』. 東京美術.
  • マグロンヌ・トゥーサン=サマ(著). 吉田春美(訳). 『お菓子の歴史』. 河出書房新社.
  • 『料理通信』.2007年2月.
  • 『Eyewitness PIRATE 』(Dorling Kindersley) 
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コメント

コメント一覧 (2件)

  • ハンナさん、こんにちは。
    コメント失礼いたします。
    ドレイク・ジュエル、黒人男性と白人女性のレリーフ、なんだかオセロウを思わせます。
    ビスケットはよく、冒険物語などで保存食として出てきますよね、このころが起源になるのですね。
    プディングはなるほど、パン・プディングってありますが、そちらの方がプリンよりもオリジナルに近いのでしょうか。
    歴史・文化を宝石やお菓子に着目してひも解かれた記事、とても面白かったです。

    お引越し、完了されたのですね、おめでとうございます。
    更新を楽しみにしています。

    • 真ちゃん様

      読んでいただき、本当に有難うございます。
      ヒカリモノ好き、食いしん坊な私としては、こういう文化史ものにはとても興味があります。
      通常の世界史本だと飛ばされてしまいますが、海賊も、お菓子も、女王様も、皆してリンクする事柄だと思い、大変興味深いのですが。

      真ちゃんさんに読んでいただけるなら、また書きます。

      有難うございました。

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