アーサー・ヒューズが描く狂気の『オフィーリア』。ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』と同じ年のロイヤル・アカデミーに出品されました。

『オフィーリア』( Ophelia ) 1852年 アーサー・ヒューズ

引用元:画像:WIKIART Ophelia(Public domain)
戯曲『ハムレット』のなかで、オフィーリアは花を摘みながら、花の名を口にします。
「これがマンネンロウ、忘れな草。お願い、あなた、忘れないでね。それから三色スミレ、もの思いの花」。
占部敏子(訳).監修・テキスト:クリストファー・ニューアル、河村錠一郎. 『ラファエル前派展』. 2000. p.119.
この後オフィーリアは花冠をしだれ柳の枝にかけようとして小川に落ち、流されて行きます。
『ハムレット』のヒロイン・オフィーリアを描いた絵と言えば、真っ先に挙がるのがジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』ではないでしょうか。

引用元:『オフィーリア』
ミレーが『オフィーリア』をロイヤル・アカデミーに出品したのと同じ年の1852年、アーサー・ヒューズも『オフィーリア』を出品しました。
絵が展示されるまで、ヒューズとミレーはそれぞれ同じ主題を描いていたことを知らなかったようです。
当時の英国はヴィクトリア女王の時代。
ハムレットへの報われない愛の果てに狂気に陥るオフィーリアは、ヴィクトリア朝に活躍した画家たちにとても好まれたテーマでした。
ヒューズは同じ構図でもう一枚、『オフィーリア』を制作しています。

引用元:『オフィーリア』
構図も制作時期もほとんど同じ二枚です。
時々一枚だけで、しかも額無しで紹介されていたりしますので、よく観ないと「どっちだっけ」と思ってしまいます(^^;。
マンチェスター市立美術館の『オフィーリア』の大きさは「68.7×123.8 cm」と、「ラファエル前派展(2000年)」の図録や、WIKIARTに掲載されています。(実際に観た時は「思っていたより大きい」という印象でした。額のせい?)
もう一枚の方ですが、Wikipediaには、ほぼ同じサイズが記載されています。
「ラファエル前派展(2000年)」では、
ヒューズのオフィーリアには2点のヴァージョンがあり、両者は明らかに相前後して制作されたらしく、サイズは異なるが、構図と描かれた内容は同じである。また額縁も同様の造りで、王妃ガートルードがオフィーリアの死を物語る一節が金地に書き込まれ、額縁の周囲を金箔を施した蔦の葉飾りが取り巻いている。
占部敏子(訳). 監修・テキスト:クリストファー・ニューアル、河村錠一郎. 『ラファエル前派展』. 2000. p.119.
サイズが異なる?
そう思ってあちこち探してみましたが、正確なサイズが判りません。
もしご存知の方がいらっしゃいましたら、お教えください。よろしくお願い致します。
アーサー・ヒューズ( Arthur Hughes, 1831年1月27日-1915年12月23日)

引用元:自画像
ロンドン生まれの英国の画家・アーサー・ヒューズ。
油彩だけでなく、イラストも多く残しました。
作品の多くがラファエル前派のような雰囲気なのに、正式メンバーではありません。
『オフィーリア』(Ophelia) 1863年頃 アーサー・ヒューズ アシュモレアン博物館蔵

引用元:『オフィーリア』
ヒューズの『オフィーリア』別ヴァージョンをご紹介します。
枝に花冠をかけようとして、一瞬こちらを見るオフィーリアです。
『ラファエル前派展』(2000年)

チラシだと『オフィーリア』の額縁には何も書かれていませんが、リブロポートの『水の女』では、書かれた文字や蔦の葉の飾りを見ることができます。
個々の作品に対する解説が無いのが残念ですが、この本では様々な『オフィーリア』、『シャロットの乙女』を観ることができますので、手軽な画集としてはいいと思います。
軽いし、大きくないし。場所を取らないことは大事です。
『西洋美術101鑑賞ガイドブック』では、ミレーとヒューズの『オフィーリア』が掲載されています。
- 『ラファエル前派展』(2000年)
ヒューズの作品と同じマンチェスター市立美術館にあります
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