後ろ手に隠す手紙、ジョン・エヴァレット・ミレーの『私を信じて』

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英国のヴィクトリア女王の時代は男性優位、父親の権力が強い時代でもありました。

『オフィーリア』で知られるジョン・エヴァレット・ミレーが1860年代の初めに描いた、『私を信じて』。

令嬢が隠す手紙や物語の行く末も気になりますが、令嬢のファッションも気になります。

『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵
『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵

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目次

『私を信じて』(Trust Me) 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー

『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵
『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵

引用元:WIKIART Trust Me(Public domain)

19世紀英国の画家ジョン・エヴァレット・ミレーが描く父と娘、『私を信じて(トラスト・ミー)』。

ヴィクトリア時代の父娘の例としてある書籍に掲載されていたのですが、タイトルが掲載されていませんでした。

やっぱり最低限の絵の情報(タイトルや作者、制作年代)は入れて欲しいな。私のために<m(__)m>。

親子に見えますが時々見かける年の差カップルという可能性もあるかなと思い、海外のサイトも拝見しましたが、「父と娘」で良いようです。

厳格そうな父親は、今帰宅したばかりの様子。

娘が後ろ手に隠す手紙を見せるように要求しています。

見方によっては、「私を信じなさい」と言っているようにも見えますが、やはりここは娘の「私を信じて下さい」なのでしょうか。

『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵
『私を信じて』 ジョン・エヴァレット・ミレー
『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵
『私を信じて』 1862年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵

テーブルの上にはお茶の支度がしてあります。

銀器と、(少なくとも)ふたり分のカップが見えますね。

訪問者は帰った直後?

娘に手紙を渡して?

他にもいろいろなストーリーが浮かびます。

お茶を飲んでいたのは女友だちで、訪問の目的は、男性からの彼女に手紙を手渡すためだった、とかね。

ヴィクトリア朝が舞台のお芝居や映画を観ているようで、この後の展開が気になります。

令嬢の髪型とドレス

物語の成り行きも気になりますが、令嬢のヴィクトリアン・ファッションも気になります。

膨らんだ袖が優雅ですね。

令嬢は、1860年頃以降流行したヘアネットまたはスヌード(Snood)を使って髪をまとめています。

スヌードとは「網目の大きなヘアネット、または布地やニットでできた、うなじに垂れ下がる帽子。ヘアネットよりゆるく髪をまとめる」(参考:『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで 上』 p.139.)ものです。

1870年頃になると、髪を結う位置は上へと向かい、頭頂部で巻き付けてセットするなどしますが、1860年代前半の令嬢の場合はまだそこまで高くまとめてはいません。

また、着ているドレスはクリノリン(crinoline)・スタイルですが、1850年代と1860年代とでは、クリノリンのかたちが微妙に異なります。

下の画像はクリノリンの「骨組み」です。

鳥かごのようなクリノリンの中身(?)1858年頃
鳥かごのようなクリノリンの中身(?)1858年頃

引用元:1858年頃のクリノリンのリプロダクション Wilhelm Storm CC-BY-2.0

1865年頃 英国 ロサンゼルス・カウンティ美術館蔵
1865年頃 英国 ロサンゼルス・カウンティ美術館蔵

引用元:1865年頃のクリノリンの骨組み

1860年代のクリノリンの前方は、1850年代のものに比べて引っ込んでいますよね。

令嬢のドレスはどちらかというと、前にもヴォリュームがあった1850年代のかたちに近いように見えます。

『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで 上・下』

ヴィクトリア朝、どんなファッションの流行があったのかとかトイレはどうしていたのかとか、そういう「生活全般」に興味があります(^^;

この書籍は上下巻ですが、気になる箇所だけでもぜひチェックしてみることをおススメ。

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『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで 上』 ルース・グッドマン 小林由果(訳) 原書房 『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで 下』 ルース・グッドマン 小林由果(訳) 原書房

ジョン・エヴァレット・ミレー( Sir John Everett Millais, 1st Baronet, 1829年6月8日-1896年8月13日)

ジョン・エヴァレット・ミレー(1854年)
ジョン・エヴァレット・ミレー(1854年)

引用元:ミレー(1854年)

ミレーは「ミレイ」と表記されることもあります。

ジョン・エヴァレット・ミレーは、19世紀英国のラファエル前派の中心的人物でした。

多くの傑作がありますが、ロンドンのテート・ブリテンにある『オフィーリア』がよく知られています。

入水する『オフィーリア』の姿は他の画家たちに多大な影響を与えました。

ミレーは1896年に英国ロイヤル・アカデミーの会長に選ばれますが、同じ年に亡くなりました。

『オフィーリア』 1851年頃 ジョン・エヴァレット・ミレー テート・ブリテン蔵
『オフィーリア』 1851年頃 ジョン・エヴァレット・ミレー テート・ブリテン蔵

引用元:『オフィーリア』 

『ジャンヌ・ダルク』 1865年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵
『ジャンヌ・ダルク』 1865年 ジョン・エヴァレット・ミレー 個人蔵

引用元:『ジャンヌ・ダルク』

大好きな1枚『ジャンヌ・ダルク』。

無垢な瞳と甲冑の光沢が美しいです。

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