希望 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエールの『エデンの園』他

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雨上がりの公園を歩くふたり。隣の男性を見上げる女性の希望に満ちた表情をご覧ください。

『エデンの園』( Garden of Eden ) 1900年 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール ロンドン市ギルドホール・アート・ギャラリー蔵
『エデンの園』( Garden of Eden ) 1900年 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール ロンドン市ギルドホール・アート・ギャラリー蔵
目次

『エデンの園』( Garden of Eden ) 1900年 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール ロンドン市ギルドホール・アート・ギャラリー蔵

『エデンの園』( Garden of Eden ) 1900年 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール ロンドン市ギルドホール・アート・ギャラリー蔵
『エデンの園』( Garden of Eden ) 1900年 ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール ロンドン市ギルドホール・アート・ギャラリー蔵

引用元:WIKIART Garden of Eden(Public domain)

この絵のタイトルは『エデンの園』です。

「え? エデンて? アダムとイヴは?」と、一瞬絵とタイトルを二度見してしまいそうですが。

寒そうな、冬の公園を歩く男女。

雨は上がったらしく、男性が二本の傘を手にしています。

傍らの女性の手がもう片方の彼の手を包み、彼を見上げるその顔は明るさと希望に満ちています。

画面右はしのベンチには座る人もなく、背景に見える高い柵の向こうには客を待つ御者や馬車のシルエットがにかすんでおぼろに見える。どこを見ても冬枯れの彩りのない世界である。しかし葉を落とした公園の木にもやがて若葉が芽生えてこよう。重苦しくたれこめた雲間からいつか光がさしてこよう。着ているものからして決して裕福とは見えない二人であるが、その前途にあるのは希望に満ちた人生である。陰鬱なロンドンの公園も、人生の新たな旅立ちを前にした二人にとっては幸せの “エデンの園”である。

千足伸行(著).2013-5-15.『隠れ名画の散歩道』.論創社. p.110.

女性が真っすぐに彼に向ける信頼の眼差しに、しっかりと握り合う手に、間もなく明るい未来が彼らに訪れる。

そう思われませんか。

ヒュー・ゴールドウィン・リヴィエール( Hugh Goldwin Rivière, 1869年-1956年)はイギリスの肖像画家です。

父親ブライトン・リヴィエール( Briton Rivière )は風俗画、動物画家として有名。

『つらい歩み(ベツレヘムへの道)』( Ein schwerer Gang (Der Gang nach Bethlehem) )  1890年 フリッツ・フォン・ウーデ ノイエ・ピナコテーク蔵

『つらい歩み(ベツレヘムへの道)』( Ein schwerer Gang (Der Gang nach Bethlehem) )  1890年 フリッツ・フォン・ウーデ ノイエ・ピナコテーク蔵
『つらい歩み(ベツレヘムへの道)』( Ein schwerer Gang (Der Gang nach Bethlehem) )  1890年 フリッツ・フォン・ウーデ ノイエ・ピナコテーク蔵

引用元:『つらい歩み(ベツレヘムへの道)』

「ベツレヘム」とは「キリスト生誕の地」。

サブタイトルに暗示された ❝現代のヨセフとマリア ❞。わびしい寒空の下、ぬかるんだ田舎道の遠近感に、2人の長かった苦難が表現されている。

千足伸行(監修).2008.『すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード』. 東京美術. p.21.

身重の女性はキリストを身ごもる聖母マリアを、妻を労り励まし、気遣いながら歩む傍らの夫はヨセフを暗示しています。

『すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード』によると、道沿いの冬枯れの木は、キリスト誕生の季節(12月)が近いことを暗示しているのだそうです。

彼らの歩んで来た道のりは決して平坦ではありませんでしたが、いま彼らが辿り着こうとしている村の、手前の家屋(宿屋?)からは煙が上がっているのでしょうか。奥の家にはかすかに灯りが見えます。

温もり。安らぎ。

希望はすぐ近くにあります。

ドイツの印象主義の画家、フリッツ・フォン・ウーデ( Fritz von Uhde, 1848年5月22日-1911年2月25日)の作品です。

『窓辺の若い農婦とその子供』( Junge Bäuerin mit drei Kindern im Fenster )  1840年 フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー ノイエ・ピナコテーク蔵

『窓辺の若い農婦とその子供』( Junge Bäuerin mit drei Kindern im Fenster )  1840年 フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー ノイエ・ピナコテーク蔵
『窓辺の若い農婦とその子供』( Junge Bäuerin mit drei Kindern im Fenster )  1840年 フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー ノイエ・ピナコテーク蔵

引用元:『窓辺の若い農婦とその子供』

笑いかけ、指差しているのは「子供たちの父親」なのでしょう。愛が溢れていますね。

「聖家族」とも言えそうな、明るい幸福感に満ちていながら、静謐さをも感じます。

フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー( Ferdinand Georg Waldmüller, 1793年1月15日-1865年8月23日)は、オーストリア帝国のビーダーマイヤー時代の画家です。

彼の絵はしばしば印象派を予告するかのような明るさにみちているが、基本的にはリアリズムで、それはこの絵では特に窓の木枠の描写に顕著である。トロンプ・ルイユ(目だまし絵)的な精密さで描かれたこの枠は、本物と見まがうばかりであり、また同時にこの外側の本物の額縁に代わる描かれた額縁としての役も果たしているのである。

千足伸行(著).2013-5-15.『隠れ名画の散歩道』.論創社. p.100.

『食堂にて』( In the Dining Room ) 1886年 ベルト・モリゾ ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

『食堂にて』( In the Dining Room ) 1886年 ベルト・モリゾ ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『食堂にて』( In the Dining Room ) 1886年 ベルト・モリゾ ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

引用元:『食堂にて』

女性画家ベルト・モリゾ( Berthe Morisot, 1841年1月14日-1895年3月2日)は、印象派の画家エドゥアール・マネの弟と結婚しました。

この『食堂にて』のモデルは、モリゾの娘ジュリーの子守をしていた女性バベットです。

この作品でモリゾは、生活のためにいやいや働かなければならない労働者としてではなく、自らの意思で働くことを選んだ女性としてバベットを表現し、自立した女性の凛とした美しさを見事に描き出している。

高階秀爾(著).2010.『Art 1 誰も知らない「名画」の見方』.小学館101ビジュアル新書.小学館. p.178.

カッコいいですよね。自分の意思で、自分の人生を生きようとする力強さを感じます。

つらいことがあった日でも、あたたかな気持ちになったり、元気が出るようなこれらの絵。

『モナ・リザ』ほどにすっごーく有名な作品ではないかもしれませんが、どれも忘れ難い作品です。

すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード

『隠れ名画の散歩道』と同じ千足伸行氏の本。

西洋絵画の「お約束事」が簡潔にまとめられています。

小さいですが、『エデンの園』は本書にも掲載されています。

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主な参考文献
  • 千足伸行(著).2013-5-15.『隠れ名画の散歩道』.論創社.
  • 千足伸行(監修).2008.『すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード』東京美術.
  • 高階秀爾(著).2010.『Art 1 誰も知らない「名画」の見方』.小学館101ビジュアル新書.小学館.
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