「一瞬行った気になる古代エジプト」。
今回は「今からお出掛けするのでメイク中」の気分をほーんの一瞬味わう企画です。
それでは家の中に入ってみたいと思います。

古代エジプトのお宅拝見

引用元:化粧する貴族女性 _ Keith Schengili-Roberts _CC-BY-SA-3.0-migrated CC-BY-SA-2.5,2.0,1.0
紀元前3000年頃に始まった、古代エジプト。今から5000年程前のことですね。
『お金の流れでわかる世界の歴』(KADOKAWA)によると、古代エジプトは、
…実は徴税システムが非常に優れており、また民衆の生活もかなり豊かだったようなのである。
古代エジプトというと、ピラミッドに象徴されるように、ファラオと呼ばれる国王が絶大な財力を持っていたことが知られている。だが、豊かだったのは、王だけではない。
エジプトの領民たちは、貧しい家の人でもカマドのある家に住んでいたという。また、エジプトでは、ゴミ問題なども発生していたが、これは領民たちが、すでに都市生活を営んでいたという証拠でもある。
王に財力があり、民も豊かな生活をしていたということは、徴税システムが整備されていたということである。
『お金の流れでわかる世界の歴史』 大村大二郎(著) KADOKAWA p.20.
その長い歴史のなかの出来事を細かく挙げていくことはここではできませんが、ざっくり言うと、しっかりした徴税システムのおかげで、王国は3000年間も続き、民衆の生活もそれなりに豊かだったとのことです。
そのエジプトの家の基本設計は「ほとんどみな同じ」のようです。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』(新書館)ではこう述べられています。
富める者の家も貧しい物の家も、住むための家も、死者のための墓も、神殿ですら変わらない。まず誰でも出入りできる中庭があり、そこから、半ばおおやけに解放された広間のような部屋を一つ二つ通って中へ入ると、その先はプライベート・エリアである。どんな家でも、そこへ入れるのは女性と子供と肉親の男性だけにきびしくかぎられていた。この基本設計は、いまのエジプトの田舎でもほとんどの家に受け継がれている。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 ティルディスレイ(著) 細川晶(訳) 新書館 p.105.
来客の際はメインの広間で相手をし、家の裏手にあった「女の間」に客が入室することは好ましくないとされました。
家はこのように判で押したような造りになってはいても、誰にも想像がつくとおり、住まいとしての規模にはたいへんな開きがあった。途方もなく広い王宮や豪奢を誇る田舎の屋敷もあれば、貧しさをきわめる人たちが住む、たった一部屋しかない小さなあばら屋もあって、その差は大きい。家のりっぱさに関わりなく、豊かな人にも貧しい人にも好まれた建築資材は、泥で作る日干し煉瓦だった。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 ティルディスレイ(著) 細川晶(訳) 新書館 p.106.
古代エジトの庶民の家は、日干しレンガで出来た、小さめの2DKだったそうですが、身分の高い人々の家は勿論広くて大きいもの。
木材、石材も使われましたが、レンガに比べて高価で扱いづらい素材でもあったため、他に代わるものが無い場合や、裕福な家の使用(土台等)に限られました。
村や町を築くときは、毎年起こる氾濫より高い場所に作りました。
日干しレンガで出来た家は湿気を嫌うからですが、日干しレンガは耐久性が低く、数十年もすると家には穴が開いたようです。
しかし、泥のレンガには熱を遮る効果があり、夏は涼しく冬は暖かと快適そう。
建て増しや家の中の区分けも難しくないため、改修は自分でも可能でした。
更に、壁と屋根ですが、
家の内部構造からいっても、泥の煉瓦は素材に持って来いだった。家の壁は、かなり重い屋根を支えるために、わりあい厚くしなくてはいけなかったからである。
いっぽう屋根そのものは、壁と壁のあいだに渡す梁の木材が足りないため、やや幅を狭めておく必要があった。家を拡げようと思えば、屋根を支えるために、中の仕切りもそれにあわせて増やさなくてはいけない。始めからそういう柱をつけられる裕福な人だけが、いかめしくもりっぱな大広間を持てたのである。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 p.107.
『図説古代エジプトの女性たち よみがえる沈黙の世界』(原書房)では、「紀元前14世紀半ば」のアマルナの裕福な個人宅について、
壁に囲まれた個人の庭に位置する裕福な住まいは、涼み廊下から、ほかの小さな部屋や寝室に広がる中央の接待の広間へ入るようになっていた。階段が二階と屋上につながっていた。寝室の中のいくつかには石灰岩で内部を覆われ、一角に排水設備がある簡単な浴室付きの部屋だった。その後ろには従業員と倉庫用の場所、それと最も奥に台所とオーブンがある中庭があった。ブドウ棚と長方形のプールがあるちゃんとした庭には多くの場合、独立した家庭用の祠堂があった。これらの裕福な家の部屋でも大きさは現在の人々の住んでいる面積より小さいというのは非常に興味深い。
ザヒ・ハワス(著). 吉村作治・西川厚(共訳). 2007-8-23. 『図説 古代エジプトの女性たち よみがえる沈黙の世界』. 原書房. pp.139-140.
窓ガラスはまだ無く、採光については、
大小に関わらず、これらの家は小さな高窓でしか採光されておらず、割と暗かったであろう。
ザヒ・ハワス(著). 吉村作治・西川厚(共訳). 2007-8-23. 『図説 古代エジプトの女性たち よみがえる沈黙の世界』. 原書房. p.141.
とあり、油を使った陶器のランプが活躍したようです。
仏壇みたいなもの カーサさんの祠堂(しどう)
先程、家庭用の「祠堂」いう言葉が出て来ましたので、イタリアのトリノ・エジプト美術館にある、新王国時代の「カーサの祠堂」をご紹介します。
大きさは33.5㎝×14.5㎝、木材で出来ています。

引用元:カーサの祠堂_ Pava _CC-BY-SA-3.0
カーサという名の人物が持っていたとされる祠堂で、仏教でいう仏壇のようなもの。一般人は簡単に神殿の奥に入れなかったことからつくられた。
『トリノ・エジプト博物館』 朝日新聞出版 p.23.
書記ジェフティネフェルさんの家の中
ジェフティネフェルさんは新王国時代の王宮の書記で、宝物庫の監督も務めていました。
三階建ての彼の家はかなりの広さがあり、テーベでもかなり衛生環境が良いところに建っていたそうです。
いちばん下の階か地下室らしいところはあきらかに召使いたちの居場所である。日々の雑事、パンを焼き、ビールをこしらえ、機を織るのは、家のあるじと家族の目につかないところでおこなわれた。一つ上の階は、天井が高い上品な応接間で、涼をとるためか上まで届く高い窓があった。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 p.112.
いちばん上には個人用の部屋、家族がのんびりする部屋、女性たちだけで使う部屋が用意されていた。平屋根には円錐型のサイロが五つ置かれているが、どうして屋根に穀物を蓄えたのかはよく分からない。ひょっとして屋根だと、あまり虫がつかない効果でもあったのだろうか?この屋根はまた、料理をしたり、食材を加工したりするところとしても使われたようである。町でこのくらい贅沢な家となると、ごく限られた豊かな人だけに許された特権だった。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 p.112.
中王国時代の家
『図説古代エジプトの女性たち よみがえる沈黙の世界』で述べられた「紀元前14世紀半ば」というのは、新王国時代です。
下の二点の画像は、それより前の中王国時代のものです。
大雑把で申し訳ありませんが、「こーんなイメージ」で見ていただければと思います。

引用元:家の模型 CC-Zero

引用元:家の模型 CC-Zero
上下とも、「屋上」に繋がる外階段が付いていますが、『イシスの娘』にこのような記述があります。
ディール・エル・メディナにあった、テーベのネクロポリスで働く人のために建てられた家は、みな申し合わせたように細長く狭い。だいたい15×5メートルくらいの広さしかない。入ると正方形の居間があり、その奥にすこし大きめの部屋と、物置か寝室用の小さな部屋があり、狭い中庭があってそこが台所になった。それに地下の貯蔵庫がついていることもある。屋根には外の階段から登れるようになっていて、夏の暑い夜には家族そろってこの屋根で寝たと思われる。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 p.112.
暑い夏の夜、家族揃って眠ったんでしょうね。川の字?
メケトレさんのお墓の副葬品
メケトレ( Meketre )さんは第12王朝、中王国時代のメンチュヘテプ2世、メンチュヘテプ3世、アメンエムハト1世の治世で、首相と高官を務めていました。
彼の墓からは多くの興味深い模型が出て来ています。

引用元:ポーチ、庭の模型 CC-Zero


こんな彫像もメケトレさんのお墓から出てきました。

この女性像のメトロポリタン美術館の解説(日本語版)はこちら です。
家族のプライヴェート・ルーム
寝室
どの家でも、寝室というのは地味だったとのことです。
背もたれが付いた、ちゃんとした椅子や、場所を取る木製のベッドといったものは、エリート層が持てるステータス・シンボルのようなものでした。
たいてい就寝時には、敷物か、折りたためる亜麻布のシーツを使い、夜が明けたら枕と一緒に片付けていたようです。
下の画像はファラオの豪華枕です。置物としても愛でられそうです。

引用元:ツタンカーメン王の枕 Ovedc CC-BY-SA-4.0
下部に「ネブ・ケぺルウ・ラー」とツタンカーメン王の王名が記されている。トルコ玉色青緑のガラス製。金の帯の部分で1つにつながれている。高さ18.5×28.1×8.7㎝。
『図説ツタンカーメン王』 仁田三夫(著) 河出書房新社 p.61.
このほかに寝室の家具といってもぎりぎり必要なものしかなく、
きっとあったろうと思えるのが低いスツールで、髪を整えたり、顔を直したりするときに使ったはずである。また身分の高い婦人の寝間では、化粧品や宝石箱がたいせつな役割を果たしていた。たぶんエジプトではいい木材が足りなかったからだと思うが、特別あつらえの寝室というのは知られていないし、衣裳棚や食器入れ、整理ダンスなどもめったになかった。かわりに、箱や、留めひも付きの編み籠など、さまざまな種類の整理箱があり、たたんだ衣類や亜麻布、あるいは個人の持ち物はそこにしまっておいたと思われる。
『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 p.118.
衣裳棚や整理ダンスは無かったのですね。
室内は「こーんな感じ(*’▽’)」のでしょうか。

貴族女性が椅子に腰かけてメイク中ですが、低い机の上には化粧道具や宝石箱、アクセサリー?が載っていますね。
衣裳は新王国時代のカラシリス?
宝石箱

引用元:宝石箱 CC-Zero
メイクグッズ

引用元:メリトの化粧箱 _ Jean-Pierre Dalbera CC-BY-2.0
監督官カーさんの奥様、メリトさんの化粧箱です。このような化粧品でメイクをしていたんですね。
それでは、この後古代エジプトの宴会に行くので、これからメイクの仕上げに入ります。
今回もお付き合いいただきまして、有難うございました。
- 『お金の流れでわかる世界の歴史』(大村大二郎(著) KADOKAWA)
- 『イシスの娘 古代エジプトの女たち』 ティルディスレイ(著) 細川晶(訳) 新書館
- 『トリノ・エジプト博物館』 朝日新聞出版
- ザヒ・ハワス(著). 吉村作治・西川厚(共訳). 2007-8-23. 『図説 古代エジプトの女性たち よみがえる沈黙の世界』. 原書房
- 『図説ツタンカーメン王』 仁田三夫(著) 河出書房新社





