画家ヴァン・ダイクの名が付いたレースとヒゲ(ヴァンダイク・ブラウンの項に追記しました)

家で古代エジプトの王女様気分!シトハトホルユネト妃の「金の王冠」「胸飾り」

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家で楽しむ「読書」に続き、家にいながら「一瞬行った気になる古代エジプト」。古代エジプトの王女様気分に浸って装飾品を愛でてみる企画です。

象嵌入りの胸飾り 紀元前1887年-紀元前1878年頃 メトロポリタン美術館蔵
象嵌入りの胸飾り 紀元前1887年-紀元前1878年頃 メトロポリタン美術館蔵

画像の上でクリックまたはタップすると大きい画像が出ます。また、画像の左下にある「引用元」のリンクをクリックしていただければ、元のファイルをご覧になることができます。「引用元」の表示が無いものは、この記事内に掲載したpublic domain の元ファイルから、解説のために必要な部分を拡大したものです。

目次

シトハトホルユネトの宝物発見

古代エジプト第12王朝第4代ファラオ、センウセレト2世( Senusret II, 在位:紀元前1897年-紀元前1878年)

センウセレト2世 ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館蔵
センウセレト2世 ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館蔵

引用元:センウセレト2世 Guillaume Baviere  CC-BY-SA-2.0

センウセレト2世はファイユーム地方の入口にあたるラフーン(アル=ラフーンとも呼ばれる)に自らのピラミッドを建て、そこに女性の家族のために4基の竪穴墓を設けた。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.96.

この墓は古代に盗掘に遭っていましたが、20世紀初頭、墓の側面のくぼみから、隠されていた宝物が出て来ました。

宝物の持ち主はセンウセレト2世の娘、サトハトホルイウネト(メトロポリタン美術館の表記では、シトハトホルユネト)王女。

Sithathoryunet、名前の意味は「“daughter of Hathor of Dendera”」(wikipedia)、「デンデラのハトホルの娘」。

デンデラ(Dendera)は女神ハトホル(Hathor)信仰の地です。

ハトホル像 紀元前1390年-紀元前1352年 大英博物館蔵
ハトホル像 紀元前1390年-紀元前1352年 大英博物館蔵

引用元:ハトホル像 Rama CC-BY-SA-2.0-FR

ハトホルは、古代エジプト神の「愛と美と豊穣と幸運」を司る女神で、聖獣は牝牛。

古代ギリシアの神話に登場する「愛と美」の女神アフロディテと同一視されます。

また、酒好きの神様でもあり、ハトホルにちなんだ有名なお祭りもあります。

シトハトホルユネト王女の宝物

サトハトホルイウネト王女の金の王冠(復元) エジプト考古学博物館蔵

サトハトホルイウネト王女の金の王冠(復元) エジプト考古学博物館蔵
サトハトホルイウネト王女の金の王冠(復元、1914年ラフーン出土) エジプト考古学博物館蔵

引用元:サトハトホルイウネト王女の金の王冠(復元) Hans Ollermann CC-BY-2.0

復元された金の王冠です。

円花飾り、細長い飾りリボン、2本の羽根飾り、ウラウエスで装飾されている。王冠は鬘をかぶった頭に合うサイズになっている。羽根の長さは215ミリメートルあり、王女が頭を動かすと、かすかに揺れただろう。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.96.

かすかに揺れる…。

優雅な、映画の一場面のようではありませんか。 

ウラエウス(英語:uraeus)は、アスプコブラが鎌首を持ち上げた様子を様式化した「蛇形記章」のことで、ファラオの神性、王権を表します。

下はツタンカーメン王のマスクですが、 エジプト神話に登場する女神ウアジェトを表すコブラと、やはり女神であるネクベトを表す白いハゲワシから成る蛇形記章を額につけています。

ツタンカーメン王の黄金のマスク エジプト考古学博物館蔵
ツタンカーメン王の黄金のマスク エジプト考古学博物館蔵

引用元:ツタンカーメン王の黄金のマスク CC-BY-SA-2.5

象嵌入りの胸飾り メトロポリタン美術館蔵

象嵌入りの胸飾り 紀元前1887年-紀元前1878年頃 メトロポリタン美術館蔵
象嵌入りの胸飾り 紀元前1887年-紀元前1878年頃 メトロポリタン美術館蔵

引用元:象嵌入りの胸飾り CC-Zero

メトロポリタン美術館の日本語解説はこちらです。

象嵌入りの胸飾り 紀元前1887年-紀元前1878年頃 メトロポリタン美術館蔵
象嵌入りの胸飾り

引用元:象嵌入り胸飾り CC-Zero

父のセンウセレト2世のカルトゥーシュがつけられており、ホルス神の象徴であるハヤブサが両わきを固めている。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.96.

センウセレト2世のカルトゥーシュ ( cartouche )はこちら。

センウセレト2世のカルトゥーシュ
センウセレト2世のカルトゥーシュ

引用元:センウセレト2世のカルトゥーシュ

胸飾り(裏)
胸飾り(裏)

引用元:胸飾り(裏) CC-Zero

飾り帯、ブレスレット、アンクレット メトロポリタン美術館蔵

タカラガイの飾り帯、ブレスレット、アメンエムハト3世の名前のあるブレスレット、アンクレット メトロポリタン美術館蔵
タカラガイの飾り帯、ブレスレット、アメンエムハト3世の名前のあるブレスレット、アンクレット メトロポリタン美術館蔵

引用元:タカラガイの飾り帯、ブレスレット、アメンエムハト3世の名前のあるブレスレット、アンクレット CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

上から、ライオンの飾り付きブレスレット、アメンエムハト3世の名前付き幅広ブレスレット、タカラガイの飾り帯、アンクレット。

突然、アメンエムハト3世( Amenemhat III, 在位:紀元前1842年-紀元前1797年または紀元前1860年-紀元前1814年)の名が登場しました。

アメンエムハト3世は、センウセレト3世の子供です。

『古代エジプト女王・王妃歴代誌』によれば、アメンエムハト3世はシトハトホルユネトの息子、または養子とのことです。

先述したように、シトハトホルユネトは、センウセレト2世の娘。

センウセレト2世には他に跡継ぎのセンウセレト3世という男子もいました。

シトハトホルユネトは、このセンウセレト3世の妃のひとりでもあります。

つまり、センウセレト3世とシトハトホルユネトは、きょうだい婚なのですね。

センウセレト3世 大英博物館蔵
センウセレト3世 大英博物館蔵

引用元:センウセレト3世像 User:Captmondo CC-BY-SA-3.0-migrated CC-BY-SA-2.5,2.0,1.0

アメンエムハト3世 ルーヴル美術館蔵
アメンエムハト3世 ルーヴル美術館蔵

引用元:アメンエムハト3世像 CC-BY-SA-3.0-migrated CC-BY-SA-2.0

アメンエムハト3世のカルトゥーシュ
アメンエムハト3世のカルトゥーシュ

引用元:アメンエムハト3世のカルトゥーシュ

アメンエムハト3世の名の入ったブレスレットとアンクレット

ブレスレット
ブレスレット

引用元:ブレスレット CC-Zero

ブレスレットとアンクレット
ブレスレットとアンクレット

引用元:ブレスレットとアンクレット CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

飾り帯

飾り帯
飾り帯

引用元:飾り帯 CC-Zero

メトロポリタン美術館の「飾り帯」の解説はこちらです。

飾り帯(部分)
飾り帯(部分)

引用元:飾り帯(部分) CC-Zero

金のライオンのブレスレット、豹の頭部の飾り帯、アンクレット メトロポリタン美術館蔵

ブレスレット、飾り帯、アンクレット
ブレスレット、飾り帯、アンクレット

引用元:ブレスレットと飾り帯、アンクレット CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

ライオンのブレスレット

ライオンのブレスレット
ライオンのブレスレット

引用元:ライオンのブレスレット CC-Zero

豹の飾り帯

豹の飾り帯
豹の飾り帯

引用元:豹の飾り帯 CC-Zero

豹の頭部 飾り帯
豹の頭部 飾り帯

引用元:豹の頭部 飾り帯 CC-Zero

アンクレット

アンクレット
アンクレット

引用元:アンクレット CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

『古代エジプト女王・王妃歴代誌』ではこの飾り帯とアンクレットを挙げ、

発見後、早い時期に復元が試みられた装身具。ラフーンの宝物の一部。金製のスペーサーはライオンの頭と頭を背あわせにした形で、もとは腰につける飾り帯に使われていたもの(スペーサーとは、首飾りやアンクレットに用いられた一連の板状飾りのことで、きつすぎるのを調節したり、からまるのを防いだりする用途があった)。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.97.

「ライオンの頭」となっていますが、メトロポリタン美術館の解説には、「アメジストのジュエリーのグループ:ライオンのブレスレット、の飾り帯、アンクレット」( Group of amethyst jewelry: lion bracelets 16.1.14a, 16.1.15a; leapard girdle 16.1.6; claw anklets 16.1.7a, 16.1.7b.)と書かれています。

スペーサーは「間におくもの」(spacer)の意でいいのかなと思います。

スカラベの形をした指輪 メトロポリタン美術館蔵

スカラベ型の指輪 メトロポリタン美術館蔵
スカラベ型の指輪 メトロポリタン美術館蔵

引用元:指輪 CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

スカラベ型の指輪 メトロポリタン美術館蔵
スカラベ型の指輪

引用元:指輪(横) CC-Zero

聖なる甲虫、スカラベ。このスカラベは、金、カーネリアン、ラピスラズリ、トルコ石、半貴石などで出来ているようです。

ネックレス メトロポリタン美術館蔵

ネックレス メトロポリタン美術館蔵
ネックレス メトロポリタン美術館蔵

引用元:ネックレス CC-Zero

メトロポリタン美術館の解説はこちらです。

このネックレスは、金、カーネリアン、ラピスラズリ、アメジスト、グリーン・フェルドスパー(長石)などでできています。

センウセレト3世の娘メレレト王女の胸飾り エジプト考古学博物館蔵

センウセレト3世の娘メレレト王女の胸飾り エジプト考古学博物館蔵
センウセレト3世の娘メレレト王女の胸飾り エジプト考古学博物館蔵

引用元:メレレト王女の胸飾り ddenisen (D. Denisenkov) CC-BY-SA-2.0

メレレト王女( Mereret )はアメンエムハト3世の姉妹です。

王女の兄弟であるアメンエムハト3世の名前が細工されている。ダハシュールの宝物の一部で、1894年にジャック・ド・モルガンが発掘した。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.97.

この胸飾りを発掘したのはジャック・ド・モルガン( Jean-Jacques de Morgan(1857年-1924年)モーガンとも表記)というフランスの地質学者、考古学者です。

こちらの胸飾りも、金と、カーネリアン、トルコ石、ラピスラズリなどの半貴石で作られているようです。

ダハシュールで発掘された宝物 ジャック・ド・モルガン エジプト考古学博物館蔵

ダハシュールで発掘された宝物 原典fouilles à Dahchour (1895年) ジャック・ド・モルガン エジプト考古学博物館蔵
ダハシュールで発掘された宝物 原典fouilles à Dahchour (1895年) ジャック・ド・モルガン エジプト考古学博物館蔵

引用元:ダハシュールで発掘された宝物の絵

「金の王冠」「象嵌入りの胸飾り」はラフーンで、「メレレト王女の胸飾り」はダハシュールで発見されていますが、 

装身具が納められていた壁龕は2カ所ともに似た形式で造られており、同じ王家の職人の手になるものと考えて間違いないだろう。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.96.

(「壁龕」は「へきがん」と読みます。)

今日、「ラフーンの宝物」の大部分はニューヨークのメトロポリタン美術館で展示され、残りの宝物と「ダハシュールの宝物」はカイロ・エジプト考古学博物館で見ることができる。

ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社. p.96.

本当は細工の細部に至るまでいろいろな意味があるのでしょうけど、大昔にこんな素敵なデザインが存在していたなんて、とそこに溜め息が出ます。

ああ、タイムスリップして、買い占めに行きたい。

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この書籍に関する別館の記事はこちらです ➡ 古代エジプト旅行に必携『古代エジプト王国 トラベルガイド』

主な参考文献
  • ジョイス・ティルディスレイ(著). 吉村作治(監修). 2008-6-20. 『古代エジプト女王・王妃歴代誌』. 創元社.
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コメント

コメント一覧 (35件)

  • まどろみ (id:madoromi-life)様
    お疲れ様です。疲れてるでしょ?こんなところでコメントしている場合じゃないですよ(嬉しいけど)さ、寝て寝て。
    論文を書かれたくらいですから、私なんかより余程お詳しいじゃないですか。お恥ずかしい(;’∀’)。
    あ、でも、論文のテーマと、何故それを選ばれたのか非常に興味があります。「寝て」と言いながら、ぜひお伺いしたい…。
    フンコロ●シさん、そんなにデカいの作んなくていーよー(ToT)と個人的には思うのですが、欧州人から見れば神秘的なエキゾチック・エジプトですものね。スカラベという響きが何か神々しい、有り難い感じしますし、サクレですものね。
    ああ、でも彼が転がしているのはフ●…。
    今回もお付き合いくださって、有難うございました。

  • hopeandmemory25(id:hopeandmemory25)様
    こんばんは。コメント残して下さって有難うございます。
    そうですね、そう言えば昔やっていたような…。当時あまり見ていませんでしたが(仕事かバイトで、普通の時間帯に家にいなかったと思います)、今やってくれれば是非観たいです。YouTubeにあるかしら(^^♪。
    見て下さって有難うございました。

  • ハンナさん、こんにちは
    何だか今回の記事は懐かしい気持ちで拝見しました。
    というのも昔論文を書いた分野でして・・・(苦笑)
    西洋の美術品にもスカラベをあしらった品は好まれています。
    再生を意味する虫、フンコロガシって言っちゃうと笑えて楽しいですが(^^♪
    ハンナさんもご無理し過ぎぬ様、引き続きお気を付け下さいませ!

  • こんにちは。
    古代エジプトのロマンが感じられて、とても良いですね。
    私も幼いころに古代エジプトに興味を持って、吉村作治さんが解説する番組を欠かさず見ていた事など思い出し、懐かしいです。

  • しゅん (id:motorcycle_station)様
    こんばんはー。
    コメント有難うございます。
    ほんとに高レベルな装飾品の数々、素晴らしいです。数千年前にこんなのを着けていた、てことは、作らせるだけの財力、権威が王様にあったってことですもんね。
    勿論、それに応えた職人さんたちも素晴らしいです。
    着飾ることを楽しみ、快楽を追求できるのも、ある程度平和な時代があったればこそ。
    人間て、やっぱりそれ程大きく変わっていないという気がしてなりません。
    今回も読んでくださって有難うございました。

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