その小さなサイズのせいで4度も盗み出されたレンブラントの絵画『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』。
同じ年に描かれた、もうひとつの肖像画『マウリッツ・ホイヘンスの肖像』についてもご紹介します。
『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』( Jacob III de Gheyn ) 1632年 レンブラント・ファン・レイン ダリッジ美術館蔵
この絵のモデルは、美術家だったヤコブ・デ・ヘイデン3世(1596年-1641年)です。
ヤコブ・デ・ヘイデン3世は、当時の教養人・知識人と名高いコンスタンティン・ホイヘンスの弟の友人でした。
「持ち帰り(テイクアウェイ)・レンブラント」
この『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』は、29.9×24.9 センチというサイズが原因で、4回も盗難にあっています。
おかげで「持ち帰りレンブラント」などと呼ばれていますが、でもそのたび戻って来たのです。それもすごいですね。
盗まれた手口も犯人も見つかった場所も異なりますが、「世界でもっとも盗難に遭った美術品」としてギネス世界記録にも登録されています。
1966年12月31日、犯人(当時32歳。男性)は展示スペースの横にあった小さな穴から侵入し、絵を盗み出します。
しかし絵は無事に戻ってきました。
1973年。「自宅へ持ち帰ってスケッチしたかった」という理由で、美術館を訪れた青年がお持ち帰りしてしまいます。
でも絵は無事に戻ってきます。
1981年1月、3度目の盗難被害に、美術館側は大金をかけて新しい警報装置を設置。
それにもかかわらず、1983年5月28日、4度目の盗難に遭ってしまいます。
美術館側は新聞記事を掲載し、犯人にメッセージを送ります。
「極端に暑かったり寒いところに絵を保存しない。持ち運ぶのも避けること」
犯人は捕まりませんでしたが、絵は事件から3年後ドイツの駅で発見され、美術館に戻ってきました。
現在『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』は、ダリッジ美術館の強固なセキュリティシステムによって厳重に守られているとのことです。
1632年に描かれた肖像画『マウリッツ・ホイヘンスの肖像』
オラニエ公フレデリック・ヘンドリック総督の秘書官だったコンスタンティン・ホイヘンス( Sir Constantijn Huygens, Lord of Zuilichem, 1596年9月4日-1687年3月28日)は、若きレンブラントとヤン・リーフェンスの工房を訪れます。
1631年に自叙伝を出版したホイヘンスは、そのなかで当時はまだ無名だったふたりの若い画家について書いています。
ホイヘンスは自分の肖像画をリーフェンスに依頼し、自分の弟・マウリッツ(1595年-1642年)の肖像画をレンブラントに依頼しました。
引用元:『マウリッツ・ホイヘンスの肖像』
ヤコブとマウリッツ。レンブラントが描いた友人同士の、向き合うような2枚の肖像画。
精巧な造りだけれど仰々しくない、マウリッツの衿も素敵です。
気になるマウリッツ・ホイヘンスの肖像画の大きさですが、こちらは高さ31.1 cm、横24.5 cm。
『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』とあまり変わりませんね。
この記事は一度、2016年に備忘録ブログに書いています。今回参考にしたのはこの2冊ですが、『迷宮美術館 アートエンターテインメント』は1ページまるまるこの『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』に割いています。他にもいろんな絵にまつわる話が載っていて面白いですよ。
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン( Rembrandt Harmenszoon van Rijn, 1606年7月15日-1669年10月4日)
『レンブラント像』 1629年 ヤン・リーフェンス
引用元:『レンブラント像』
レンブラントは自画像をたくさん描いていますが、こちらは友人ヤン・リーフェンスが描いたレンブラントの姿です。
バロック絵画を代表する画家、レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン。
通称レンブラントは、現在のオランダ、ネーデルラント連邦共和国出身の画家です。
光と影を操る画家として多くの傑作を生みました。
生前から名声が高かったものの、晩年は妻や子に先立たれ、困窮のなか亡くなりました。
引用元:自画像
『レンブラント 光と影を操る者』は、レンブラントの作品がカラーで、しかもこのサイズで読むことができます。読み易い構成ですし、リーフェンスの絵画なども掲載されています。持っていて損はしない一冊です。
『盗まれたフェルメール』も興味深いです。
タイトルを見て「ん?フェルメール?レンブラントじゃないじゃん」と思われるでしょうが、レンブラントはフェルメールの同郷の先輩。
『ヤコブ・デ・ヘイデン3世の肖像』についてすごく詳細というわけではなくても、「その周辺」を見て行くとある日突然新しい発見があるかもしれません。
私はよく発見します(^^)。
直接関係ないかなというような本に、知りたいことがさらっと書いてあったとき、本当にお宝発見!の気分になります。
これだって、「盗まれたフェルメール」について読んでいたら「持ち帰りレンブラント」が載っているんですよ。
オトクじゃございませんか。
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