フラゴナールが描く花束と手紙を持つ女性『ラヴ・レター』

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軽やかで官能的なロココ絵画の最後を飾る画家フラゴナール。代表作である『ぶらんこ』がよく知られていますが、今回は、柔らかな光に満ちた室内で微笑む、メトロポリタン美術館のカワイイ女性の絵をご紹介します。

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard, early 1770s, The Metropolitan Museum of Art) 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』( The Love Letter ) 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
目次

『ラヴ・レター(『恋文』)』 ジャン・オノレ・フラゴナール / The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard

『ラヴ・レター(『恋文』)』 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard, early 1770s, The Metropolitan Museum of Art) 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵

引用元:『ラヴ・レター(『恋文』)』 CC-Zero

メトロポリタン美術館(日本語版解説)恋文

花束と手紙を手に、こちらを見ながら微笑む女性。

モデルが特定されていないので、この絵画は肖像画というより「風俗画」に分類されることが多いようです。

柔らかな光のなかに浮かぶドレスやヘアキャップが、ロココ時代の甘やかな雰囲気を伝えてくれますよね。

女性の頬の色が「恋の予感」「意中のひとからの恋文」に上気して染まる頬であったら更にロマンティックなのですが、このロココ期のお化粧の特徴のひとつに、「濃い目の頬紅」があります。

口紅もつけているようですから、やっぱりお化粧の方でしょうね。

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard, early 1770s, The Metropolitan Museum of Art) 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『ラヴ・レター(『恋文』)』

フラゴナールの作品は、テーマによって雰囲気がずいぶん異なります。

ぱっと見ると、同じ画家のものだと思えないほどです。

この作品では柔らかい光と、暗部の「茶色」が非常に印象に残ります。

見方によっては、褐色がシブいツヤ消しの金色にも見えてきませんか?

メトロポリタン美術館の解説によると、

全体を褐色に塗ったキャンバスに、暗褐色で構図を決め、筆先や異なる太さの筆遣いで線描や立体感を表しています。褐色以外の色と白の使用は、化粧をした若い女性の顔、ドレスと帽子、机、腰掛、花、犬など、作品の中心の明るい光が当たっている部分に限られています。

メトロポリタン美術館『恋文』の解説 一部抜粋

とあります。

影の部分が暗くないせいで、全体が軽やかで華やかな雰囲気なのでしょう。

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard, early 1770s, The Metropolitan Museum of Art) 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『ラヴ・レター(『恋文』)』

ちなみに、女性が手にしているカードの文字は判読できないそうです。

それも鑑賞者の想像をかき立てますよね。

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter by Jean-Honoré Fragonard, early 1770s, The Metropolitan Museum of Art) 83.2 × 67 cm 1770年代初頭 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『ラヴ・レター(『恋文』)』

女性が持つ手紙とモデルについて、現在のメトロポリタン美術館のウェブ解説(2026年3月現在)には無いのですが、書籍『メトロポリタン美術館ガイド』にこのような記述がありましたので、参考までに載せておきます。

彼女が手にする手紙に記されている文字は、二通りの解釈ができる。もし「cavalier」だとすると、単純に、彼女の「騎士」という意味だが、「Cuvilere」(キュヴィレル)だとすると、モデルはフランソワ・ブーシェの娘マリー・エミリー(1740-1784)ということになる。彼女は、1769年に未亡人となったが、1773年に父親の友人である建築家のシャルル・エティエンヌ・ガブリエル・キュヴィレルと再婚した。

メトロポリタン美術館編. 1993-6-15. 『メトロポリタン美術館ガイド』. 同朋舎出版. p.221.

モデルはフランソワ・ブーシェの次女?

『ラヴ・レター(『恋文』)』のモデルが、「師匠ブーシェの次女」説。 これ、今でも可能性有りなんですかね?

ブーシェによるマリー・エミリーの肖像画はこちらです。

『ボードワン夫人の肖像』( Portrait présumé de Marie-Emilie Baudouin, fille du peintre vers 1758 - 1760) 1758 - 1760年頃 フランソワ・ブーシェ コニャック=ジェイ美術館蔵, Boucher, François (Paris, 29–09–1703 - Paris, 30–05–1770), peintre, Musée Cognacq-Jay, le goût du XVIIIe
『ボードワン夫人の肖像』 1758 – 1760年頃 フランソワ・ブーシェ コニャック=ジェイ美術館蔵

引用元:『ボードワン夫人の肖像』 CC-Zero

マリー・エミリー・ブーシェ( Marie-Émilie Boucher )は、1758年4月、ピエール=アントワーヌ・ボードワン( Pierre-Antoine Baudouin, 1723 – 1769)と結婚しました。

ボードワンもフラゴナール同様、ブーシェの弟子です。

ボードワンは、フラゴナールにとって、自由奔放な図像表現における師であったことは疑いようもない。1765年から、二人はルーヴル美術館で故ジャン=バティスト・デエ・ド・コルヴィルのアトリエを共有した。ボードワンは彼と姻戚関係にあった。1767年、二人はリュクサンブール宮殿でルーベンスの絵画を一緒に模写する許可を求めた。1769年にボードワンが夭折した当時、彼のアトリエにはフラゴナールの素描や絵画が数多く所蔵されていた[ 1 ]。(Google翻訳)

Wikipedia : Pierre-Antoine Baudouin

引用文の中に出てきた「ジャン=バティスト・デエ・ド・コルヴィル( Jean-Baptiste Henri Deshays de Colleville, 1729 – 1765)」もブーシェの弟子。1758年に ブーシェの長女(マリー・エミリーの姉)と結婚しています。

『ラヴ・レター(『恋文』)』のモデルとなった女性は、マリー・エミリー・ブーシェなんでしょうかね?

『メトロポリタン美術館ガイド』「日本語版」。こちらにもほぼ同様の記述がありますが、同朋舎出版の方が加筆されている分わかりやすいです。

メトロポリタン美術館「英語版」の解説

先に本作の日本語版解説をご紹介しましたが、「英語版」も掲載します。

Eighteenth-century artists and collectors valued oil sketches, believing that they attested to painters’ first ideas and their physical presence in each work of art. This finished painting engages with that new aesthetic. Fragonard’s sketch has energetic brushstrokes of varying thickness that capture sunlight as it lands at the center of the canvas along the woman’s cap, powdered face, flowers, dress, and bedraggled dog. This is not a portrait, but a genre scene that implies a narrative that continues outside the frame through a letter accompanied by a bouquet. The simple conceit of love letters had been popular in the previous century with Johannes Vermeer and his contemporaries.

メトロポリタン美術館The Love Letter

Google翻訳:18世紀の画家や収集家は油彩スケッチを高く評価し、それが画家の最初の構想と、作品における画家の存在感を証明するものだと信じていた。この完成された絵画は、そうした新しい美意識を反映している。フラゴナールのスケッチは、太さの異なる力強い筆致で、キャンバス中央に差し込む陽光が女性の帽子、粉を塗った顔、花、ドレス、そしてみすぼらしい犬に降り注ぐ様子を捉えている。これは肖像画ではなく、花束に添えられた手紙を通して、画面の外へと続く物語を暗示する風俗画である。恋文というシンプルな趣向は、前世紀にはヨハネス・フェルメールとその同時代の画家たちの間で人気を博していた。)

フェルメールの絵にも手紙を読み耽る女性が登場します。

憎からず思う相手からもらった恋文ならば、たちまちココロウキウキ。胸がときめいてしまいます。

ロココ期の貴族たちの最大の愉しみは「恋愛」でした。駆け引き、蠱惑(こわく)術、チラ見せ…。

現代に残るブーシェやフラゴナールの作品からは、その時代の官能の香りを強く感じます。

話は変わりますが、この絵画は歴史的背景に完璧に合致しています。ロココ時代は、フランスの富裕層の奔放な道徳観と享楽的な生き方が、当時の芸術作品の遊び心あふれる軽薄さに反映された時代でした。花束と手紙が夫からのものなのか、それとも秘密の恋人からのものなのかはともかく、この場面の愛に満ちた雰囲気と、忠誠の象徴である愛犬の存在は、ロココ時代のロマンチックな理想を反映しています。(Google翻訳)

メトロポリタン美術館A Love Letter to The Love Letter

本作『ラブレター(恋文)』も、書かれた内容とともに、差出人も気になりますよね。

ジャン・オノレ・フラゴナール( Jean Honoré Fragonard, 1732年4月5日 – 1806年8月22日)

ジャン・オノレ・フラゴナール( Jean Honoré Fragonard, 1732年4月5日 - 1806年8月22日) 1760年 - 1770年頃の自画像 Villa musée Fragonard蔵
ジャン・オノレ・フラゴナール 1760年 – 1770年頃の自画像 Villa musée Fragonard蔵

引用元:ジャン・オノレ・フラゴナール

フランスのロココ美術を代表する画家です。

ブーシェやシャルダンに学び、ロココ文化の時代の最後を飾りました。

『ぶらんこ』( The Swing ) 1767 – 1768年頃

『ぶらんこ』(The Swing by Jean-Honoré Fragonard, about 1767 - 1768, The Wallace Collection) 81 × 64.2 cm 1767 - 1768年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ウォレス・コレクション蔵
『ぶらんこ』 1767 – 1768年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ウォレス・コレクション蔵

引用元:『ぶらんこ』

ウォレス・コレクションThe Swing

ロココの絵画って言ったらやっぱコレだねと思う、『ぶらんこ』です。

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ロココ貴婦人のミュールとジャン・オノレ・フラゴナールの『ぶらんこ』

『ベッドで犬と遊ぶ少女』( Young Woman Playing with a Dog ) 1765 – 1772年頃

『ベッドで犬と遊ぶ少女』(Young Woman Playing with a Dog by Jean-Honoré Fragonard, about 1765 - 1772, Fondation Cailleux, Paris) 70 × 87 cm 1765 - 1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール Fondation Cailleux, Paris
『ベッドで犬と遊ぶ少女』 1765 – 1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール Fondation Cailleux, Paris

引用元:『ベッドで犬と遊ぶ少女(ラ・ジャンブレット)』

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フラゴナール 『ベッドで犬と遊ぶ少女(ラ・ジャンブレット)』『かんぬき』

『読書する娘』( Young Girl Reading ) 1769年頃

『読書する娘』(Young Girl Reading by Jean-Honoré Fragonard, c. 1769, National Gallery of Art) 81.1 × 64.8 cm 1769年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』 1769年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

引用元:『読書する娘』

ナショナル・ギャラリー・オブ・アートYoung Girl Reading, c. 1769

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バスティーユ牢獄内部( Intérieur de la Bastille ) 1785年

バスティーユ牢獄内部(Bastille courtyard / Intérieur de la Bastille, dessin, Jean Honoré Fragonard) 1785年 ジャン・オノレ・フラゴナール ガリカデジタル図書館
バスティーユ牢獄内部 1785年 ジャン・オノレ・フラゴナール ガリカデジタル図書館

引用元:フラゴナール画

ガリカデジタル図書館

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バスティーユ牢獄でお食事を

『かんぬき』( Le Verrou ) 1777 – 1778年

『かんぬき』(Le Verrou, 1777 / 1778, Jean Honoré Fragonard, Louvre) 74 × 94 cm 1777 - 1778年 ジャン・オノレ・フラゴナール ルーヴル美術館蔵
『かんぬき』 1777 – 1778年 ジャン・オノレ・フラゴナール ルーヴル美術館蔵

引用元:『かんぬき』

ルーヴル美術館Le Verrou

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背徳の情景『かんぬき』(フラゴナール作)

『メトロポリタン美術館ガイド 日本語版』(ミュージアム図書)は分厚いガイドブックですが、おススメの一冊です。ただ、持って見るのは結構重いかな。

官能美術特集ムック本。こちらにも『ラブレター』掲載

主な参考文献
  • メトロポリタン美術館ガイド 日本語版 エリクセン・トランスレーションズ・インク (監修) ミュージアム図書
  • 『禁断の西洋官能美術史』 別冊宝島
  • メトロポリタン美術館編. 1993-6-15. 『メトロポリタン美術館ガイド』. 同朋舎出版.
  • メトロポリタン美術館ガイド(第2版 1994)
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