ドレスの黄色と背景のブラウンが印象的なフラゴナールの『読書する娘』

  • URLをコピーしました!
 ※当ブログのリンクには広告が含まれています。
 ※画像の左下にある「引用元」のリンクをクリックしていただくと元のファイルをご覧になることができます。

黄色のドレスと美しい横顔が印象的な『読書する娘』。下絵の段階では横顔ではなく、こちらに顔を向けていました。

『読書する娘』( The Reader ) 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』( The Reader ) 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
目次

『読書する娘』( The Reader ) 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

『読書する娘』 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』 82㎝×65㎝ 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

引用元:『読書する娘』

ナショナル・ギャラリー・オブ・アート:Young Girl Reading, c. 1769

『読書する娘』 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『読書する娘』

モデルの名は不明ですが、富裕階級の令嬢でしょうか。

ドレスもクッションも、立派なものですね。

クッションはふかふかして実に心地よさそうです。

何より、女性の着ているドレスの色がとても印象に残ります。

クラシカルな美少女満載の『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』ではこのような記述があります。

フラゴナールは少女をモデルにさまざまなポーズをとらせた「 figures de fantasia (想像人物画)」と呼ばれる早描きの肖像画シリーズを得意としており、本作品もその1枚と思われる。

池上英洋・荒井咲紀(著).2017-6-30.『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』.ちくま学芸文庫.筑摩書房. p.168.

早描きの肖像画、とありますが、肘の部分やリボン、本のページ、指先はこんな風に描かれていたのですね。

『読書する娘』 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『読書する娘』

『読書する娘』 1770年-1772年頃 ジャン・オノレ・フラゴナール ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『読書する娘』 ジャン・オノレ・フラゴナール

引用元:『読書する娘』

美少女美術史 人々を惑わせる究極の美

美少女を描いた絵ってこんなにあるんだ、と改めて思いました。『美少女美術史』は、美少女の掲載量も多く、見応えがあります。私は結構好きです(^^)。

目の保養に加えて教養も身につく一冊。

色づかいについて

『色で読み解く名画の歴史』では、エンパイア・イエローを代表する絵画として『読書する娘』を挙げています。

更にその背景色についても言及があり、

またもうひとつの風俗画『読書する少女』(1776年)ではルーベンスを思わせる鮮やかな黄色を素早いタッチで塗っている。さらに、背景のビチューメン・ブラウンがスケッチのような粗い筆遣いで塗りつくされて、少女の鮮やかなエンパイア・イエローと白の衣裳をひときわ引き立たせている。黄色は当時の流行色であり、フラゴナールは好んで黄色い衣裳を着た人物像を数多く描いている。陽の光を照り返す薄紫のクッションが、その影のアンバーとの対比によって、一層、陰影を濃いものにしている。ロココの断片を切り取った見事な風俗画である。

城一夫・橋本実千代(著). 2013-1-22. 『色で読み解く名画の歴史』.PIE. p.70.

ここに書かれているように、女性の衣裳はやわらかい褐色や光を反射する薄紫のクッションに囲まれて、眩しく美しく浮かび上がっています。

フラゴナールの絵では背景に用いられているビチューメン・ブラウン( Bitumen Brown )が重要な役割を果たし、主調色のピンクや黄色を一層、引き立てている。

城一夫・橋本実千代(著). 2013-1-22. 『色で読み解く名画の歴史』.PIE. p.70.

ビチュメンとは

語彙の乏しい私などはビチューメン・ブラウンも大きく「茶色」の一言で括ってしまいますが(^^;、ビチューメン、「ビチュメン( Bitumen )」は瀝青(れきせい)、天然アスファルトのことです。

ミイラのことを英語で「mummy」といいますよね。

その語源はペルシア語でビチュメンを意味する「ムーミヤ」であるとされています。

ビチュメンは、中世のヨーロッパで万能薬のような扱いを受けてきました。

エジプトで発掘された古代のミイラには稀少なビチュメンが塗布されていると誤解され、粉末にされて「薬」にされてしまったり、絵具(「マミー・ブラウン」ともいう茶色、褐色の絵具)として使われたりしました。

香油とミイラ 古代エジプトのミイラの使い道

色で読み解く名画の歴史

『色で読み解く名画の歴史』に載っている色彩の一覧に、この「ビチューメン・ブラウン」の色見本も載っています。時代時代の流行色の解説も勉強になりますが、ステキな名前が付いている色もたくさんあり、名前を見ていくだけでも結構楽しいです。

この書籍に関する記事( hanna and books )『色で読み解く名画の歴史』で色彩の歴史や効果が学べる

下絵の「ポーズ」

下絵段階では女性のポーズが違っていました。

近年のX線による調査で、女性はこちらに顔を向けていたことがわかっています。

X線調査で判った下絵段階のポーズ 1770年
X線調査で判った下絵段階のポーズ 1770年

引用元:X線調査で判った下絵段階のポーズ https://nl.pinterest.com/pin/415105290630780484 CC-PD-Mark

「こっちを向いて微笑む」構図というと、フラゴナールの『ラヴ・レター』を思い出します。

なんとなく似ていませんか?

『ラヴ・レター(『恋文』)』(The Love Letter) 83.2 x 67 cm 1770年代 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵
『ラヴ・レター(『恋文』)』 1770年代 ジャン・オノレ・フラゴナール メトロポリタン美術館蔵

引用元:『ラヴ・レター(『恋文』)』

『ラヴ・レター(『恋文』)』の背景もブラウンです。とても柔らかい感じ。

『読書する娘』の絵は、書物に集中している顔がいいなと思って観ていたので、やっぱり横顔の方がいいかな。

フラゴナールが描く花束と手紙を持つ女性『ラヴ・レター』

出生地グラースのフラゴナール像

ジャン・オノレ・フラゴナール( Jean Honoré Fragonard, 1732年4月5日-1806年8月22日)

A・マイヨール(1864年-1944年)によるフラゴナール像
A・マイヨール(1864年-1944年)によるフラゴナール像

引用元:A・マイヨール(1864年-1944年)によるフラゴナール像 ColdisAmazing CC-BY-SA-3.0

フラゴナール像
フラゴナール像

引用元:像全体 Berthold Werner CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0

ロココっぽい像です。

フラゴナールさん、二枚目ですね(^^)

自画像はこんな感じです。

ジャン・オノレ・フラゴナール 1760年-1770年頃の自画像 Villa musée Fragonard蔵
ジャン・オノレ・フラゴナール 1760年-1770年頃の自画像 Villa musée Fragonard蔵

引用元:ジャン・オノレ・フラゴナール

主な参考文献
  • 池上英洋・荒井咲紀(著).2017-6-30.『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』.ちくま学芸文庫.筑摩書房.
  • 城一夫・橋本実千代(著).2013-1-22. 『色で読み解く名画の歴史』.PIE.
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次