『戯れる人魚たち』『静かな海』アルノルト・ベックリンの人魚たち

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『死の島』などで知られるスイス出身の画家アルノルト・ベックリンが描いた人魚たちの姿です。

『戯れる人魚たち』( Play of the Nereides ) 1886年 アルノルト・ベックリン バーゼル美術館蔵
『戯れる人魚たち』( Play of the Nereides ) 1886年 アルノルト・ベックリン バーゼル美術館蔵
目次

『戯れる人魚たち』( Play of the Nereides ) 1886年 アルノルト・ベックリン バーゼル美術館蔵

『戯れる人魚たち』( Play of the Nereides ) 1886年 アルノルト・ベックリン バーゼル美術館蔵
『戯れる人魚たち』 1886年 アルノルト・ベックリン バーゼル美術館蔵

引用元:『戯れる人魚たち』

『トリトンとネレイド』( Triton und Nereïde ) 1874年 アルノルト・ベックリン シャックギャラリー蔵

『トリトンとネレイド』( Triton und Nereïde ) 1874年 アルノルト・ベックリン シャックギャラリー蔵
『トリトンとネレイド』 1874年 アルノルト・ベックリン シャックギャラリー蔵

引用元:『トリトンとネレイド』

『波間の戯れ』( Playing in the Waves ) 1883年 アルノルト・ベックリン ノイエ・ピナコテーク蔵

『波間の戯れ』( Playing in the Waves ) 1883年 アルノルト・ベックリン ノイエ・ピナコテーク蔵
『波間の戯れ』 1883年 アルノルト・ベックリン ノイエ・ピナコテーク蔵

引用元:『波間の戯れ』

『海にて』( In the Sea ) 1883年 アルノルト・ベックリン シカゴ美術館蔵

『海にて』( In the Sea ) 1883年 アルノルト・ベックリン シカゴ美術館蔵
『海にて』 1883年 アルノルト・ベックリン シカゴ美術館蔵

引用元:『海にて』

『静かな海』( Die Meerestille ) 1886年-1887年 アルノルト・ベックリン ベルン美術館蔵

『静かな海』( Die Meerestille ) 1886年-1887年 アルノルト・ベックリン ベルン美術館蔵
『静かな海』 1886年-1887年 アルノルト・ベックリン ベルン美術館蔵

引用元:『静かな海』

アルノルト・ベックリンの絵画に登場するのは人外が多い。

すぐに思い浮かぶのはケンタウロスとか牧神、そして人魚です。

人魚というと美女(または美少女)を連想するのですが、ベックリンの人魚は猥雑な匂いのする、海の生物、海に棲まう精とでもいいましょうか。

昔々、世紀末芸術とか象徴主義に夢中だった頃はアルノルト・ベックリンの『死の島』が好きでしたが、『戯れる人魚たち』を観て以来、私の中のベスト10の順位が変わりました。

跳ね、声を上げ、笑う。

このワイルドな生々しさ。ブキミさ。

広い広い海の何処かには、こんな人魚たちが本当にいるのかもしれない、と思ってしまいます。

アルノルト・ベックリン( Arnold Böcklin, 1827年10月16日-1901年1月16日)

ヴァイオリンを弾く死神のいる自画像 1872年 旧国立美術館
ヴァイオリンを弾く死神のいる自画像 1872年 旧国立美術館

引用元:ヴァイオリンを弾く死神のいる自画像

美術手帖 march 1987 vol.39 no.576 monthly art magazine bijutsuecho

人体を描くにあたり、ベックリンはモデルを使わなかったそうです(奥様がヤキモチ焼きだったからとの説あり)。

神話のルールにも従わなかったようです。

『美術手帖』では、べックリンをめぐるエピソードについて、

ある神話学者がべックリーンの絵の中のまちがった人物の使い方を注意したとき、画家はこう答えたという。

「私は自分の親しい角のある神さまたちのうじ、素性を、お役所でたしかめたりはしたくないのです」

 またこんな話も伝わっている。あるとき世に知られた外科医がアトリエに訪ねてきて、画架の絵をしげしげと眺めたあげく、こう言った。

「これが芸術というものでしょうか。私にはとんと解せない。あなたがお描きになった人体は、すべて解剖学的にはありえないところです。だからしてこんな人物が生きようはずがない」

 そのときべックリーンはこう答えたという。

「解剖学的にはおっしゃるとおりかもしれません。しかし、どうかご安心ください。私のほうの人物は、あなたの患者さんよりもずっと長生きしますとも」

池内紀. p.86. 新しい時代の大いなる預言者. 美術手帖 march 1987 vol.39 no.576 monthly art magazine bijutsuecho.

長生き。確かに( ̄▽ ̄)

また、池内氏はベックリンの『春』や『ケンタウロスの戦い』、『戯れる人魚たち』を挙げ、

あちこちに古代異教世界の神々が跳梁している。とまれ注意しなくてはならない。べックリーンは自然を描いたが、彼はひたすらアトリエで描いた。また意味ありげなタイトルのいずれもべックリーン自身の命名ではない。彼はつねづね自分では題名をつけなかった。それをしたのは画商とコレクターである。言い換えれば、べックリーンは別に「春」を描いたわけではないのである。「戯れる人魚たち」がとりたてて人魚の戯れである必要がないのと同様に、「死の島」は死の島ではなかったはずだ。それ以上のもの、あるいはまったく別のものであったかもしれないのである。

池内紀. p.90. 新しい時代の大いなる預言者. 美術手帖 march 1987 vol.39 no.576 monthly art magazine bijutsuecho.

自分で絵のタイトルをつけたのではなかったベックリン。

トリトンに群がる人魚たちや、波間ではしゃぐ人魚たちに付けられたタイトルはわかる気がしますが、『静かな海』は…。

どうなんですかね。

確かに静かですけどね。

海の中からこちらを見ている目が不気味です。

横たわる肉感的な人魚様が、私には世紀末芸術で好まれた「男を破滅に導く女」、「運命の女(ファム・ファタル)」に見えます。

とても印象に残る絵画です。

『ヌードの絵画史 「裸の芸術」黄金期に描かれた女性たち』(春燈社)では『静かな海』( Die Meerestille )は「凪」というタイトルになっています。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • ぴーちゃん様

    こんにちは。コメント有難うございました。

    美しい人魚姫を想像するとかなり違いますよね。
    実にリアルな人魚たちです。
    初めて観た時は「コワイ」と思いましたし、ちょっとショックでした。

    海に棲む種族の絵は他にもあるのですが、今回はこの5点を掲載しました。
    次は陸に棲む人外についてやってみたいと思います。

    サンタクロースも仙人も座敷童も、見えないだけで、その辺にいそうですよね。
    とても身近な「お隣さん」といった感じでしょうか。

    今回も見てくださって有難うございました。

  • ハンナさん、こんにちは。
    すみません。
    私も、静かな海のネーミングの意味がわかりません。(苦笑)
    そして、人魚さんが怖い!!
    人魚って、人間が見たことがないだけで、本当はいるのかもしれませんね。
    サンタクロースみたいに…。

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