すらりとした肢体に、タイトなロング・ドレス。手首や足首にはアクセサリーをしているこの美女の像は、古代エジプトの高官のお墓の副葬品でした。この女性の正体は単なる召使いではなく、「半ば女神のような存在として作られた」と考えられています。
女性像 古代エジプト中王国時代
紀元前1981年-前1975年頃に作られた、メトロポリタン美術館の所蔵品である女性像。
木製で、像の高さは 112 ㎝ あります。
この像は、テーベにある、宮殿の管財長をしていたメケトレ( Meketre )氏のお墓のために作られたものです。(メトロポリタン美術館サイトの解説では、「メケトラー」となっています)
女性は頭に食物の入ったカゴを載せ、片手に鳥を持っています。
このことから、この女性は「召使い」と思ってしまいそう。
しかし、ただの召使いにしては、とてもファッショナブルな衣装、そしてアクセサリーですよね。
メトロポリタン美術館による解説には、「宝飾品と羽付きの衣装から、この女性は単なる召使いではなく、死者を守る女神イシスとネフティスに通じる役目を担った、半ば女神のような存在として作られたと考えられます。」とあります。
普通の召使いではないと考えれば、その衣装の素敵さに納得ですね。
引用元:メケトレの墓の出土品 メトロポリタン美術館蔵 CC-Zero
メトロポリタン美術館:Model of a procession of offering bearers
こちらも同じメケトレさんのお墓の副葬品です。
お酒の瓶、香炉、リネン、パンや鳥(ガチョウまたはアヒル)などの供物を運んでいます。
服装、アクセサリーなどの装飾を見ても、女性の衣装と違ってかなりシンプルですよね。
下はパンを焼いたり、ビールを造っているところの模型です。衣装はやっぱりシンプル。
引用元:メケトレの墓の出土品 CC-Zero
メトロポリタン美術館:Bakers and Brewers from Meketre’s Model Bakery and Brewery
この書籍は、とても重たい大型本です。
しかし、実際にメトロポリタン美術館を訪れる前には一読されることを強くおすすめします。
行きたくても今は行けないなと思っていらっしゃる方、この本はとても見応えがあります。
一瞬ほんとに現地に行った気になれますよ。
人類ってスゴイな、と思う収蔵品の数々が、あなたを遠い過去の世界に連れて行ってくれます。
カイロのエジプト考古学博物館の女性像
エジプト考古学博物館には、この女性像と対になる彫像があります。
引用元:女性像(エジプト考古学博物館) CC-BY-SA-3.0-migrated
こちらの像の説明はWikipediaでは「第11王朝」となっていますが、同じメケトレ氏のお墓の副葬品でありますし、ここはメトロポリタン美術館の像の解説にある「アメンエムハト1世治世初期「第12王朝」」を採りたいと思います。
『ファッションの歴史 上』(PARCO出版)では、この女性像が「花瓶を運ぶ召使いの木像」という名で紹介されています。画像に「エジプト第十一王朝 漆喰 カイロ美術館蔵」と説明がありますが、カイロ美術館は「エジプト考古学博物館」です。
結構前に出版された書籍なので、現在もこの像が「召使い」と考えられているかはよくわかりませんが、ファッションについては、
タイトなシース・ドレスは幅広のストラップで肩に吊り、胸にギャザーを寄せている。白いドレスの上に、多分カラフルな皮をカットして作った網をかぶせているのであろう。
J・アンダーソン・ブラック(著). 山内沙織(訳). 1993-2-1. 『ファッションの歴史 上』. PARCO出版. p.60.
と解説されています。現代で着ても充分イケてるドレスです。
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