カラフルなドレスが目を引く、フランスの彫刻家ルイ=エルネスト・バリアスの女性像。
見たことがあるけど、タイトルがわからないという方いませんか。
それは『科学の前にヴェールを脱ぐ自然』というタイトルです。

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『科学の前にヴェールを脱ぐ自然』( La Nature se dévoilant à la Science ) 1899年 ルイ=エルネスト・バリアス オルセー美術館蔵

引用元:『科学の前にヴェールを脱ぐ自然』 Sailko CC-BY-3.0
なんと美しい柄のドレスなのでしょうか。
ドレスには色大理石が使われていますが、Wikipediaによるとガウンはアルジェリアのオニキス、胸のスカラベはマラカイト(孔雀石)でできているのだそうです。
英語のタイトルは『 Nature Unveiling Herself Before Science 』と記されています。
科学の前に、真実の姿、秘密、はだかの姿を現す「自然」のアレゴリー彫刻(寓意像)です。
この彫刻の高さは200 ㎝。
女性の曲線、ヴェールのふんわり感にアール・ヌーヴォーっぽさを感じますね。

引用元:『科学の前にヴェールを脱ぐ自然』 emilee rader CC-BY-SA-2.0
他美術館にバリアスによる別のヴァージョンがあります。
色大理石のドレスの美しさ

引用元:腰まわり emilee rader CC-BY-SA-2.0
腰周り。素材の模様がレースみたい。

引用元:下半身 Ibex73 CC-BY-SA-4.0
柄がモダンです。若干サイケ?

引用元:足元 正面 Ibex73 CC-BY-SA-4.0

引用元:足元 emilee rader CC-BY-SA-2.0

引用元:横から見た図 Ibex73 CC-BY-SA-4.0

引用元:下から見た図 emilee rader CC-BY-SA-2.0
胸のスカラベがよく見えますね。
古代エジプトの神話ではスカラベは、太陽(丸めたフンが太陽のかたちに似ている)、引いては再生を意味する「聖なる甲虫」でした。
同じく古代エジプト神話の女神イシスが「自然」に見立てられ、被っていたヴェール(またはマント)を脱ぐとき。
それは、自然がその秘密をあらわにした、ということなのでしょうか。(参考:Wikipedia Veil of Isis)
『新生オルセー美術館』(新潮社)
現在印象派の巨匠として知られているモネやルノワールが活躍した時代。
保守的だった彫刻の世界には、それほど特筆すべき作品は出てきていなかったようです。
それが、1899年、ようやくちょっと変わった?カラフルな、バリアスの彫刻が登場しました。
バリアスの彫刻は、胸元のスカラベや色のついた石を衣に使って華やかに仕上げています。これは色大理石を使った古代エジプト彫刻の影響や、ギリシャ・ローマの古代彫刻に彩色がされていたと判明したことなどが大きい。
高橋明也(著). 2017. 『新生オルセー美術館』. 新潮社. p.103.
そう、白一色に思われていた古代の彫刻。実は結構カラフルに彩色がされていたのです。
エーゲ海をバックに白い彫刻も良いですが、当時の人びとが当時の最良のセンスで色着けした、その姿を見てみたいですね。
新潮社の『新生オルセー美術館』、薄いながらも結構多くの収蔵品が掲載されています。
残念ながら、バリアスのこの作品については多く説明されてはいません。
しかし、旅行にも持って行けるサイズという点ではいいと思います。
載っていない収蔵品ももちろんありますが、大雑把に網羅するという目的ならこれで足りるかな。
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バリアスの彫刻を観たとき、タイトルがよくわからず、「綺麗な彫刻だなあ」くらいしか思いませんでした。
後になってタイトルを知り、女性がなぜヴェールを脱いでいるのかイミがわかりました(^^;
同じオルセー美術館に、オーギュスト・クレサンジェの『蛇に噛まれた女』もあります。
私にはこちらの方がインパクトありました。
訪問される際にはこちらも観てくださいね。美しいです。
ルイ=エルネスト・バリアス( Louis-Ernest Barrias, 1841年4月13日-1905年2月4日)

引用元:ルイ=エルネスト・バリアス
パリで生まれ、パリで亡くなった、フランスの彫刻家バリアス。
パリのオペラ座、シャンゼリゼにあるオテル・ドゥ・ラ・パイヴァ(パイヴァ候爵夫人の館)の装飾にも携わりました。
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