ローマ時代に模刻された、うずくまるヴィーナスの像。
ルーヴル美術館や大英博物館、エルミタージュ美術館など、各地の美術館に収められています。

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『うずくまるヴィーナス』
『うずくまるヴィーナス』 ローマ国立博物館蔵

引用元:『うずくまるヴィーナス』 Miguel Hermoso Cuesta CC-BY-SA-3.0
このなめらかなむっちり感が感動的、魅力的なヴィーナス像。
彫刻家ドイダルサスの作とされていたが事実は不明。身体や顔の向きが異なるさまざまな複製があり、大英博物館やルーブル美術館にも同じタイプのヴィーナス像が所蔵されている。複製にはクピドを伴うものもある。
『pen 2015 No.528 』. p.55.
1914年、ハドリアヌス帝のディヴォリの別荘から出土しました。
ドイダルサス( Doidalsas )とは、紀元前250年頃に活躍したギリシアの彫刻家です。
ローマ時代に同じようなポーズの模刻が多く作られています。
『うずくまるヴィーナス』 ルーヴル美術館蔵

引用元:『うずくまるヴィーナス』 Carole Raddato CC-BY-SA-2.0
こちらはルーヴル美術館に在る『うずくまるヴィーナス』像です。フランスのイゼール県ヴィエンヌ街の、サント・コロンブの浴場で出土しました。
以前あったルーヴル美術館の日本語の解説ページでは『うずくまるアフロディーテ』となっており、「この女神は、時にはアムルに付き添われている。サント・コロンブのヴィーナスは、前3世紀におそらくビテュニアのドイダルセスにより制作された、あるうずくまるアフロディーテを表現した、多くの古代の複製品のうちのひとつである。」とありました。
アムル(またはアムール)は、「エロス」の名でも親しまれる、愛の矢を放ついたずら好きの神様ですよね。
そのアムルに付き添われている、という証拠?がこちらの背面図。

引用元:『うずくまるヴィーナス』(背中) FASTILY CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0
手形、どころか手そのものじゃん!( ゚Д゚)
ルーヴル美術館の解説(日本語版)では、「この女神は、身をかがめ、おそらく項に水をかけるため右手腕を左肩の方に寄せ、左腕は膝に置いた姿で、見繕いをしている瞬間を捉えられている。」とありました。
両手を胸の前にあげ、顔は、後ろで戯れるエロスの方にふり向けていた。両足は後補。ローマ時代の模刻で、オリジナルは紀元前三世紀の中頃に活躍した彫刻家ドイダルサスの作と考えられている。フランスのヴィエンヌ出土。大理石製。高さ97センチ。
日本放送出版協会. 『NHK ルーブル美術館 Ⅱ』. p.67.
有名な彫刻作品が掲載されています
『うずくまるヴィーナス』(腕あり)
『うずくまるヴィーナス(レリーのヴィーナス)』 大英博物館蔵

引用元:『レリーのヴィーナス』(アフロディテ) Marie-Lan Nguyen
イングランドの宮廷画家、ピーター・レリー( Peter Lely, 1618年-1680年)の所有だったことから、『レリーのヴィーナス(またはアフロディーテ)』( Lely’s Venus ( Aphrodite )』とも呼ばれています。
レリーは「リリー」と表記されることもあるため、『リリー・ヴィーナス』(『リリーのヴィーナス』)となっているかもしれません。
『うずくまるヴィーナス』 ルーヴル美術館蔵

引用元:『うずくまるヴィーナス』 Jastrow
腕の有無、所作ひとつで同じお題でも雰囲気が変わりますね。
『アフロディテとエロス』(腕とエロス付き)

引用元:『アフロディーテとエロス』 エルミタージュ美術館蔵 Yair Haklai
少しワル?な微笑みを浮かべ、アフロディーテの背後に立つエロス。(見方によっては「無邪気」に見えるかも)

引用元:『アフロディーテとエロス』(背後に立つエロス) エルミタージュ美術館蔵 Tangopaso
前掲の手形の場所とは少し違いますが、こんな風だったのね、と思います。
『うずくまるヴィーナス』(またはアフロディーテ)のローマ時代の模刻はこれらの美術館以外にもあります。
その多さから、このテーマが非常に好まれたのだなと判りますね。
ルーヴル美術館のヴィーナスが発見された場所も浴場だったといいますから、当時の愛好家たちは入浴しながら、愛と美の女神が驚く様を存分に眺めていたのでしょうね。
- 『pen 2015 No.528 』
- 日本放送出版協会. 『NHK ルーブル美術館 Ⅱ』
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