ハンス・イワース作『メアリー1世の肖像(ロンドン考古協会所蔵)』、の背景について。

Panel Painting Portrait of Queen Mary I / メアリー1世の肖像 1554年 ハンス・イワース ロンドン考古協会

引用元:メアリー1世
ロンドン考古協会Panel Painting Portrait of Queen Mary I
真珠で飾られた被り物。真珠の首飾り。キャサリン・パーから贈られたブローチ。一目で上等なものと判る衣装に身を包んだイングランド女王メアリー1世(1516年 – 1558年、在位1553年 – 1558年)。
この記事では、女王の衣装ではなく女王の「背景」に注目します。
ロンドン考古協会の解説によると、慎ましいポーズで立つ女王の後ろに描かれているのは「装飾のための赤いベルベット」。
四角い、格子状になっていますよね。
この格子状の表現を単に、「装飾」だと思っていました。
その目的もあるようですが、この起源は、王侯の移動時に一緒に持っていくためベルベットの天蓋を折り畳んで運搬した際にできたシワなのだそうです。
Behind her is a red velvet Cloth of Estate. Such cloths are usually shown paned, as here. It was clearly a decorative feature, showing the sheen of the material to best advantage. However, it owed its origin to necessity. Velvet was the most valuable of all materials, and Cloths of Estate, with their canopies, travelled with their owners. They could turn an empty room into an audience chamber, and are shown functioning thus in numerous pictures and illuminations from the fifteenth century onwards. The distinctive fold marks represent the creases that were inevitable when the cloth was packed in a saddle bag for a journey.
ロンドン考古協会 Panel Painting Portrait of Queen Mary I
(Google翻訳:彼女の後ろには赤いベルベットの天蓋がある。このような天蓋は通常、ここに示されているように格子状に描かれている。これは明らかに装飾的な要素であり、素材の光沢を最大限に引き出すためのものであった。しかし、その起源は必要性に由来する。ベルベットはあらゆる素材の中で最も価値が高く、天蓋付きの天蓋は所有者と共に旅をした。それらは空っぽの部屋を謁見の間に変えることができ、15世紀以降の数多くの絵画や挿絵でそのように使われている様子が描かれている。特徴的な折り目は、布を旅のためにサドルバッグに詰めたときに避けられないしわを表している。)
四角いデザインは、「折り目」。ベルベットのつややかな光沢を表現しています。
寒々しい石造りの殺風景な壁も、豪華な布ひとつで華やかに変わりますね。

引用元:メアリー1世
Queen Mary I / メアリー1世 1554年 ハンス・イワース ナショナル・ポートレート・ギャラリー蔵

引用元:Queen Mary I
ナショナル・ポートレート・ギャラリーQueen Mary I
同じ画家ハンス・イワースによる、メアリー1世の肖像画。
俳優リチャード・バートンが、自身が落札した真珠「ラ・ペレグリーナ」を着けたメアリー1世と信じ、購入しました。
しかし、後の調査で、「ラ・ペレグリーナではない」と判明したため、バートンはこの肖像画をナショナル・ポートレート・ギャラリーに寄贈しています。

引用元:Queen Mary I
ナショナル・ポートレート・ギャラリーによる動画です。細部も見ることができて、「おお」と思いますよ

Mary I / メアリー1世 1555年頃 – 1558年頃の間 ハンス・イワース Dickinson Gallery, London and New York

引用元:メアリー1世
Hans Eworth (or Ewouts) / ハンス・イワース(1520年頃 – 1574年)
ハンス・イワースは、16世紀半ばにイングランドで活躍したフランドルの画家です。
ロンドン考古協会によると、「1540年にカトリック教徒の多いアントワープで初めて記録されたエワースとその兄弟は、1544年に「異端者」としてプロテスタントのアムステルダムへ逃れ、その後1549年までにプロテスタントのロンドンへと移った。しかし、ハンスのその後のイングランドでのキャリアは、最後の2年間を除いて、カトリックのネットワーク、とりわけメアリー女王の肖像画家としての活動に依存していた」とのことです。
テューダー朝のロンドンにおいて、イワースは寓意画や貴族の肖像画を描き、1570年代初頭にエリザベス女王の祝祭局からの装飾の依頼も手掛けているそうです。 (Wikipedia: Hans Eworth)

ニコラス・ヒリアードによる肖像画
Nicholas Hilliard / ニコラス・ヒリアード(1547年頃 – 1619年1月7日)

引用元:ニコラス・ヒリアードの自画像
ヴィクトリア&アルバート美術館Self-portrait, aged 30
ニコラス・ヒリアード(ヒリヤードとも表記) はイングランド出身の金銀細工師、ミニアチュール(細密肖像画)作家です。
メアリー1世のあとを継いでイングランド女王となったエリザベス1世、その次のイングランド王ジェームズ1世の宮廷で活躍しました。
Portrait Miniature of Elizabeth I / エリザベス1世の肖像 1600年頃 ニコラス・ヒリアード ヴィクトリア&アルバート美術館蔵
当時既に60歳を超えていましたが、肖像画のなかでは、いくつになっても若々しい処女王、エリザベス1世(1533年 – 1603年)。
背景は格子状? ベルベットですかね?

引用元:エリザベス1世の肖像

Henry Wriothesley, 3rd Earl of Southampton / 第3代サウサンプトン伯爵ヘンリー・リズリーの肖像 1594年 ニコラス・ヒリアード フィッツウィリアム美術館蔵

引用元:Miniature of Henry Wriothesley, 3rd Earl of Southampton, 1594
第3代サウサンプトン伯爵ヘンリー・リズリー(1573年10月6日 – 1624年11月10日)は、イングランドの貴族で、シェイクスピアのパトロンでした。
「初代サウサンプトン伯爵トーマス・リズリー」の細密肖像画はホルバイン(子)作
ルーヴル美術館リシュリュー翼 | ホルバイン(子)『アンナ・フォン・クレーフェの肖像』『エラスムスの肖像』他
Elizabeth I (1533–1603) / エリザベス1世 1598 – 1599年頃 ニコラス・ヒリアードに帰属 ナショナル・トラスト, ハードウィック・ホール

引用元:Hardwick Hall Portrait of Elizabeth I of England
ナショナル・トラスト( ハードウィック・ホール)Elizabeth I (1533–1603)
背景は格子柄ですが、素材はベルベット?
それにしても素敵なスカートの柄ですね。
エリザベス1世(1533年~1603年)が60代の頃にイギリス人画家によって描かれたこの肖像画は、女王を永遠の美しさを持つ人物として描くという当時の伝統を反映している。華やかなドレスは幻想的で、アンダースカートには花や陸と海の生き物が飾られているが、女王が所有していた同様のドレスを描いたものではないと考える理由はない。エリザベスは史上最も広範で豪華な衣装を所有しており、1599年という晩年にも「この上なく豪華な装い」と評されていた。また、この衣装には数百個の真珠がちりばめられており、純潔の象徴として処女王にふさわしいものとなっている。
エリザベスは、一段高い台座の上に全身像で立ち、右側に玉座が置かれている姿で描かれている。この肖像画の構図は、おそらくミニアチュールを基にしたもので、シュルーズベリー伯爵夫人エリザベス・タルボットの依頼によるものと思われる。1599年に伯爵夫人の邸宅であるハードウィック・ホールに届けられ、設置されると、エリザベス・タルボットと女王の親密な関係を視覚的に物語るものとなっただろう。(Google翻訳)
ナショナル・トラスト( ハードウィック・ホール) Elizabeth I (1533–1603)
The family of Henry VIII: an allegory of the Tudor succession / 『ヘンリー8世の家族』(寓意画) 1572年頃 ルーカス・デ・ヘーレに帰属 ウェールズ国立博物館蔵

引用元:Family of Henry VIII, an Allegory of the Tudor Succession
ウェールズ国立博物館The family of Henry VIII: an allegory of the Tudor succession
本作は、「エリザベス1世女王が築いた調和を称える」絵画、寓意画です。
エリザベス1世は平和の女神の手を取り、豊穣の女神が後に続いています。
エリザベスの父であり、イングランド国教会の創始者であるヘンリー8世は玉座に。
ヘンリー8世は、正義の剣を息子エドワード6世(プロテスタント)に手渡しています。
向かって左側にいるのは、エリザベスの異母姉で、先代の女王メアリー1世(カトリック教徒)と、その夫であるスペイン王フェリペ2世。
一番左側にいるのは、戦いの神マルスです。

引用元:Family of Henry VIII, an Allegory of the Tudor Succession
エリザベス女王からフランシス・ウォルシンガム卿への贈り物であるこの絵は、16世紀の寓意への強い関心、女王自身がチューダー朝の頂点に立つ存在であるという認識、そして自らの統治の正当性に対する女王の懸念を象徴的に表しています。(Google翻訳)
ウェールズ国立博物館 The family of Henry VIII: an allegory of the Tudor succession
Lucas de Heere (Lucas d’Heere) / ルーカス・デ・ヘーレ(1534年 – 1584年8月29日)
ルーカス・デ・ヘーレは、ヘント(Ghent, ゲント)生まれのフランドル人画家。
デ・ヘーレは1560年代後半にロンドンにやって来ました。宗教迫害から逃れてきた多くのフランドル出身のプロテスタントの芸術家や職人の一人だったということです。
今回参考にした書籍というのは特にないのですが、テューダー朝の「前提知識」として






