ヴァトー唯一の弟子・パテル『水浴する貴婦人たち』(スコットランド国立美術館)

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哀愁漂う雅宴画で知られるアントワーヌ・ヴァトーの弟子だったジャン=バティスト・パテル。パテルによる「浴女たち」の絵画です。

『水浴する貴婦人たち』 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵
『水浴する貴婦人たち』 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵

画像の上でクリックまたはタップすると大きい画像が出ます。また、画像の左下にある「引用元」のリンクをクリックしていただければ、元のファイルをご覧になることができます。「引用元」の表示が無いものは、この記事内に掲載したpublic domain の元ファイルから、解説のために必要な部分を拡大したものです。

目次

ジャン=バティスト・パテル( Jean-Baptiste Pater, 1695年12月29日-1736年7月25日)

ジャン=バティスト・パテル自画像 18世紀前半 ヴァランシエンヌ美術館蔵

ジャン=バティスト・パテル自画像 18世紀前半 ヴァランシエンヌ美術館蔵
ジャン=バティスト・パテル自画像 18世紀前半 ヴァランシエンヌ美術館蔵

引用元:ジャン=バティスト・パテル

ジャン=バティスト・パテルはロココ時代のフランスの画家。

1695年、現在のフランス、ヴァランシエンヌで生まれます。父親は彫刻家でした。

パリに出たパテルは同郷出身のアントワーヌ・ヴァトーに弟子入り。

後に不仲となりヴァトーの元を離れますが、数年後ヴァトーの死の直前に戻りました。

死期が迫っていたヴァトーは、彼の唯一の弟子に有益な助言を与えたと言われます。

アントワーヌ・ヴァトー(1684年10月10日-1721年7月18日)

アントワーヌ・ヴァトー(1684年10月10日-1721年7月18日)の肖像 パステル画 1721年 ロザルバ・カッリエーラ Luigi Bailo Museum蔵
アントワーヌ・ヴァトーの肖像 パステル画 1721年 ロザルバ・カッリエーラ Luigi Bailo Museum蔵

引用元:アントワーヌ・ヴァトーの肖像

37歳という若さで病死したヴァトー。

美しいパステル画で人気があり、ヴァトーとも交流があった女性画家カッリエーラが描いた肖像画です。

内向的で、難しい性格だったというヴァトーの、儚げな雰囲気が見て取れますね。

自画像 1710年頃 ロザルバ・カッリエーラ ウフィツィ美術館蔵
自画像 1710年頃 ロザルバ・カッリエーラ ウフィツィ美術館蔵

引用元:自画像

ヴァトーは男女の恋愛の情景を描いた「雅宴画」で知られます。

絵画に登場する女性の後ろ姿、ドレスの背に流れるようなプリーツは、彼の名を取り「ヴァトーの襞(ひだ)」「ヴァトー・プリーツ」と呼ばれます。

『2人の従姉妹』 1717年-1718年 アントワーヌ・ヴァトー ルーヴル美術館蔵
『2人の従姉妹』 1717年-1718年 アントワーヌ・ヴァトー ルーヴル美術館蔵

引用元:『2人の従姉妹』

『ツバメの巣泥棒』 1712年頃 アントワーヌ・ヴァトー スコットランド国立美術館蔵
『ツバメの巣泥棒』 1712年頃 アントワーヌ・ヴァトー スコットランド国立美術館蔵

引用元:『ツバメの巣泥棒』

スコットランド国立美術館に収められている、ヴァトーの『ツバメの巣泥棒』。

森の中、男性が掌の鳥の巣を女性に見せています。女性は男性に身を預けており、親密そうな様子が伝わってきますね。

『水浴する貴婦人たち』( Ladies Bathing ) 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵

『水浴する貴婦人たち』 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵
『水浴する貴婦人たち』 58.6 cm × 71 cm 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵

引用元:『水浴する貴婦人たち』

なんだかヴァトーの絵画のような。

パテルは師ヴァトーが生み出した雅宴画の趣味を踏襲しましたが、さらに「主題の範囲を広げ、空想の軍隊や村の市場といった題材も加え」ました。(参考:「スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」(2022)

パテルの円熟期に描かれたという本作。他にも同じ主題の絵が2点存在しますが、このスコットランド国立美術館が所有するこの作品が最も大きいそうです。

想像上の牧歌的な庭園にある小さな池の周りの情景が描かれており、建造物が演劇性を高めている。14人の人物は、様々な状態で裸を晒し、各人が誰かと結びつく部分をもちながら描かれる。官能的で、上流社会にはないであろう自由を見せつけるこの種の絵画は、パテルのもたらした革新であるように思われる。こうした絵画は彼の世界を喚起させながらも、従来の神話画の場面を振り返り参照しているようだ。

「スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」(2022). p.100.
『水浴する貴婦人たち』 1721年頃 ジャン=バティスト・パテル スコットランド国立美術館蔵
『水浴する貴婦人たち』 ジャン=バティスト・パテル

背景の建造物や彫刻の存在もそうですが、中央の浴女のポーズはヴァトーの神話画『ディアナの水浴』を思い出します。

『ディアナの水浴』 80cm×101cm 1715年頃 アントワーヌ・ヴァトー ルーヴル美術館蔵
『ディアナの水浴』 1715年頃 アントワーヌ・ヴァトー ルーヴル美術館蔵

引用元:『ディアナの水浴』

『シャンゼリゼ(エリュシオンの園)』 1717年-1718年頃 アントワーヌ・ヴァトー ウォレス・コレクション蔵
『シャンゼリゼ(エリュシオンの園)』 1717年-1718年頃 アントワーヌ・ヴァトー ウォレス・コレクション蔵

引用元:『シャンゼリゼ(エリュシオンの園)』

こちらの絵画では右の男性が頭上の彫像を眺めていますが、パテルの絵画でも右に男性が立っていて、その衣装に目が行きます。

パテルの「浴女たち」

雅宴画、といえばヴァトー、ロココ絵画といえばフランソワ・ブーシェ、ジャン・オノレ・フラゴナールの名が浮かびますが、パテルの名は残念ながらすぐには出てきません。

絵を見れば「あ、見たことある」と思うのですが、名前が出てくる書籍も少ない気がします。

ヴァトーみたいな絵画なんだけど、どこか明るい感じ。

ヴァトー唯一の弟子・パテルの描く “明るい” 雅宴画、女神やニンフのように水浴する男女の姿をどうぞ。

『公園の水浴者たち』( Badande sällskap i en park ) 18世紀 ジャン=バティスト・パテル スウェーデン国立美術館蔵

『公園の水浴者たち』( Badande sällskap i en park ) 49.5 cm × 59 cm 18世紀 ジャン=バティスト・パテル スウェーデン国立美術館蔵
『公園の水浴者たち』( Badande sällskap i en park ) 49.5 cm × 59 cm 18世紀 ジャン=バティスト・パテル スウェーデン国立美術館蔵

引用元:『公園の水浴者たち』

スウェーデン国立美術館の解説はこちらです。

解説ページに「 La collection Tessin 」とあったので、18世紀半ばにフランス宮廷に滞在し、多くのロココ絵画を収集したスウェーデンのテッシン伯爵のコレクション?かな?と。

同じ主題の絵はもう一箇所、フランスのアンジェ美術館にあるようです。『グレート・アーティスト別冊 ロココの魅力』にはこちらが掲載されています。

その解説によると、パテルは師のヴァトーと異なり、

深い詩情はもたなかったが、師が秘めやかに描いた官能性をあらわにし、時代の趣味に合致して雅宴画を持続させた。繊細な色彩、羽毛のような筆触、雅趣に満ちた背景、15人もの男女の生気あふれた風俗の表現などは、ヴァトー作品には稀なこの裸婦群像を魅力あるものとしている。パテルは同主題の作品を多数残している。

『グレート・アーティスト別冊 ロココの魅力』. 同朋舎.. p. 14.

とあります。

ちなみに絵のサイズは 49 cm × 62 cm との記載がありました。

『噴水の近くの浴女たち』( Female Bathers near a Fountain ( Nymphs Bathing in a Pool ) ) 1730年-1733年頃 ジャン=バティスト・パテル ダラス美術館蔵

『噴水の近くの浴女たち』( Female Bathers near a Fountain (Nymphs Bathing in a Pool) ) 1730年-1733年頃 ジャン=バティスト・パテル ダラス美術館蔵
『噴水の近くの浴女たち』 1730年-1733年頃 ジャン=バティスト・パテル ダラス美術館蔵

引用元:『噴水の近くの浴女たち』 Daderot CC-Zero

ダラス美術館の解説はこちらです。

貴族の男女性が屋外の泉で戯れるという情景。

彫像のある建造物に天蓋のような赤い布が華やかな印象です。

『浴女たち』( Bathers ) 18世紀 ジャン=バティスト・パテル 東京、アーティゾン美術館蔵

『浴女たち』( Bathers ) 1730年-1733年頃 ジャン=バティスト・パテル 東京、アーティゾン美術館蔵
『浴女たち』 1730年-1733年頃 ジャン=バティスト・パテル 東京、アーティゾン美術館蔵

引用元:『浴女たち』

『浴女たち』( Bathers ) 18世紀 ジャン=バティスト・パテル インディアナポリス美術館蔵

『浴女たち』( Bathers ) 18世紀 ジャン=バティスト・パテル インディアナポリス美術館蔵
『浴女たち』 18世紀 ジャン=バティスト・パテル インディアナポリス美術館蔵

引用元:『浴女たち』

中央の女性がまるで神話画に出てくる女神様のよう。

左にある彫像のポーズが興味深いですね。

ヴァトーの哀愁感とか風情には欠けますが、「明るいヴァトー」風が好みならいいかもしれません。

私はパテルの作品も好きだな(^^)。

主な参考文献
  • 「スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」(2022).
  • 『グレート・アーティスト別冊 ロココの魅力』. 同朋舎.
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